メルクバイオファーマ・グロサス社長「患者主導のアプローチを重視」 SDMで治療満足度向上にも期待
公開日時 2025/09/24 04:50

メルクバイオファーマのジェレミー・グロサス代表取締役社長は9月18日に開催したセミナーで、がんや不妊治療を重点領域に据えるなか、「事業を拡大するうえで、常に患者主導のアプローチを心に留めている」と強調した。同日発表したがん患者・患者家族2000人、医師200人を対象に実施した調査結果を引き合いに、治療満足度の高い層ではSDM(協働意思決定)の実施スコアが高いことを説明した。一方で、患者や患者家族にとってSDMの認知度は低いことを指摘。「医療従事者への情報提供に力を入れたい。SDMのトレンドを見ながら患者向けの資材も用意していきたい」と述べ、医療従事者への情報提供に力を入れる考えを示した。
◎「日本を重視したビジネスを展開したい」 日本ローカルのパートナーシップでラグ・ロス解消にも一役
「世界市場において日本市場を重視したビジネスを展開したい」-。グロサス社長はこう強調する。実際、日本ではオンコロジー領域において3ブランドで6適応症を開発・販売。テプミトコが先駆け審査指定制度(現・先駆的医薬品指定制度)の指定を受けた実績があるとして、「これは我々が新たな治療選択肢をより迅速に日本の患者に提供できることを示している。我々は日本の患者に強いコミットメントを示している」と強調した。
今年4月には、日本独自でスペインのバイオ医薬品企業・PharmaMar 社と、抗がん剤・lurbinectedin (ルルビネクテジン)の日本における独占的ライセンス、開発、商業化に関する契約を締結したことを紹介。小細胞肺がんに対する新たな治療選択肢を提供することになることから、「ドラッグ・ラグ/ロスが懸念されているが、解消に向けて我々は他社とのパートナーシップを行っている」と説明。「世界市場において日本を重視したビジネスを展開したいと考えている。メルクバイオファーマはそういった意味で選択肢となるバイオテック企業であり、(ドラッグ・ラグ/ロスを解消する)良い製品を日本に導入したい」と強調した。
◎患者主導の医療実現に3段階 患者の声聞く取組みも社内で実施
同社ががんや不妊治療の事業展開に向けた意思決定で重視するのが“患者主導”の考え方だ。実現に向けて、①患者やその家族の「声を聞く」、②グローバルで治験やヘルスケアの優先事項に取り組む「行動を起こす」、③患者へ恩恵をもたらす「インパクトをもたらす」ための取り組みを推進する―の3段階があると説明した。
実際に、社内で、患者・患者家族を招き、声を聞き理解を深める取組みを行っているという。
そこで得られたインサイトに基づいた医薬品の開発やサポートを実施。これにより、「患者・患者家族の(治療満足度や治療の)質にも直接結びつくような形で提供したい」と意欲をみせた。
◎医師とのコミュニケーション満足度が高い患者ほどSDMを実施
同日は、がん患者・患者家族2000人と医師200人を対象にしたSDMの意識・実態調査を発表した。調査は、患者主導のプロセスの一環として、SDMの認知度を広める目的でインターネットを通じて実施した。対象は過去1年間にがん治療を受けた患者1000人(ステージ1・2:各300人、ステージ3・4:各200人)、親族が過去1年間にがん治療を受けたことがあるがん患者の家族1000人(ステージ1・2:各300人、ステージ3・4:各200人)、がん治療にかかわる医師200人。調査期間は、2025年7月11~22日(医師)、7月17~22日(患者・患者家族)。
患者を対象にした調査結果によると、SDMを「知らない」と回答したのは79.0%(790人)にのぼった。一方で、「意味を含めて知っている」と回答したのは5.4%(54人)だった。早期がん患者では治療満足度が高い患者(498人)のSDM実施スコアが73.4ポイント、満足度が低い患者(102人)では54.3ポイント。進行がん患者で治療満足度が高い患者(310人)は71.4ポイント、治療満足度が低い患者(90人)では53.1ポイントで、早期・進行がん患者ともに、治療満足度が高い患者ではSDM実施スコアが高い傾向が見られた。治療に当たって大切にしたいと思ったことを大切にできた患者・患者家族や、医師とのコミュニケーション満足度が高い患者・患者家族ほど、SDM実施スコアが高い傾向が示されている。