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メルクバイオファーマ・グロサス社長 数年内に神経・免疫領域参入「SLE/CLEはアンメットニーズ高い」

公開日時 2024/06/17 04:52
メルクバイオファーマのジェレミー・グロサス代表取締役社長は本誌取材に応じ、数年以内に神経・免疫疾患領域に参入することを目指すと表明した。全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚エリテマトーデス(CLE)に対してファースト・イン・クラスの可能性がある免疫調節剤のTLR7/8阻害剤・enpatoranが日本を含むグローバルで第2相段階にあると紹介。「SLE/CLEは日本でも、世界でもアンメットニーズの高い疾患」だと指摘し、「グローバルに当社グループが持っている神経・免疫疾患に対する価値を日本の患者さんに届けたい」と述べた。このほか社員の生産性向上に向け、AIの全社的な活用を推進しているほか、社内にAIチームを立ち上げてAIツールの開発及び継続的な改善を行っていることも明らかにした。

◎神経・免疫領域 がんや不妊治療に続く事業の柱に グローバルからの国内導入も模索

メルクバイオファーマは、350年の歴史を持つ独メルクのバイオ医薬品事業部門。グローバルでは▽がん、▽心血管疾患、代謝・内分泌疾患、▽神経・免疫疾患、▽不妊治療――の4つを重点領域とし、不妊治療ではグローバルリーダーとして知られている。日本法人は現在、がんと不妊治療の2領域にしぼって事業展開している。

なぜ2領域にしぼっているのかについてグロサス社長は、「日本においてこの2領域はアンメットニーズが特に高い分野であり、我々のイノベーションで解決策を提供できると判断したため」だと説明した。メルクバイオファーマは「大きくも小さくもない適正規模のバイオ企業」とも指摘し、メガファーマが持つ創薬ケイパビリティとバイオテックが持つ俊敏さを併せ持ち、焦点を絞った事業展開を強みとしていることも、参入領域の決定要素のひとつだとした。

ただ、「当社グループの基本的な戦略は、アンメットニーズに対して我々が提供できる価値がどこにあるのかを考えること。その判断に基づき(参入領域を)決めている」とも強調。世界的にアンメットニーズの高いSLE/CLEに対するenpatoranの国内開発が進展していることもあり、まずenpatoranで日本の神経・免疫疾患市場に参入する計画を披露した。

さらに、「当社グループはグローバルに免疫系フランチャイズを持っており、グローバル戦略に基づき、国内導入も模索していく」と述べ、神経・免疫を、がんや不妊治療に続く3つ目の事業の柱と位置付けて取り組む考えを示した。神経・免疫領域担当MRを組織するかについては、「その話をするには時期尚早」と明言を避けた。

enpatoranは、エリテマトーデスに関連する疾患の原因となるプロセスを選択的に阻害することで、感染症に対する免疫を維持しながら有効性を高めることが期待される経口治療薬。エリテマトーデスにおいてToll様受容体(TLR)7及びTLR8の活性化が知られており、enpatoranは、この活性化を特異的に遮断する。SLEと、皮膚にだけ症状が出るCLEを対象疾患に22年上半期から第2相試験が行われている。

◎新規頭頸部がん治療薬・キセビナパント 国内申請は「できるだけ早く」

グロサス社長は、がん及び不妊治療それぞれの事業戦略も示した。

がん領域の取扱製品は現在、大腸がんと頭頸部がんを適応とする抗EGFR抗体・アービタックス、尿路上皮がんなどを適応とする抗PD-L1抗体・バベンチオ、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がん治療薬・テプミトコ――の3製品。「パフォーマンスがとても堅調。アンメットニーズをしっかり捉えられている」との認識を示した。

日本を含むグローバルで第3相試験段階に、頭頸部がんを対象疾患とするIAP(アポトーシス阻害タンパク質)阻害剤・キセビナパントがある。現時点でファースト・イン・クラスとなる可能性がある。キセビナパントの第2相試験では、切除不能な局所進行頭頸部扁平上皮がん患者の5年生存率が、キセビナパントと化学放射線療法(CRT)の併用投与群は標準治療群と比較して約2倍(53%対28%)に延長したデータが得られた。

グロサス社長はこのデータを引き合いに、「ここ20年間、頭頸部がん治療は限定的な進捗しかなかったが、5年生存率が倍増するという素晴らしい結果が得られた」とし、「キセビナパントを日本でも上市できれば、日本の患者さんに本当に大きなメリットを提供できる」と強調した。アービタックスなどで培った頭頸部がん市場をリードするメルクグループの専門知識がキセビナパントの開発に活かされているとの認識も示しつつ、国内申請は「できるだけ早くできることを希望している」と述べた。

◎不妊治療 企業内で啓発プログラムの実施を ノウハウ開示に前向き

不妊治療では22年4月から人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」が保険適用され、患者アクセスが改善された。それでもグロサス社長は、「まだアンメットニーズがある」と強調し、不妊治療に対する認知度(情報不足)、心理的ケア、費用負担などに課題があるとの見方を示した。

これらの課題の解決策のひとつとして、企業内における不妊治療の啓発プログラムの実施を提案。「不妊治療のグローバルリーダーとして培ったノウハウや教育プログラムを、希望する企業にオープンにしていく」と述べ、メルクバイオファーマで現在実施している従業員向けサポートプログラム「Yellow Sphere Project(略称:YSP)」を希望する企業に公開する取り組みを強化していく構えを見せた。

◎AI活用の能力、全社員に 社内AIチームがツールを開発、継続的に改善

このほか、社員の生産性向上に向け、全社員を対象にAI活用の能力を身につける取り組みを進めていることを明らかにした。情報漏洩対策を施した社内向け生成AI「MyGPT@Merck」が23年にグローバルに導入された。日本の社員も「AIツールに触れ、働き方が大きく変わってきているということを認識してもらう」(グロサス社長)ため、業務に積極的に使うよう促しているという。

社内にはデータサイエンティストやエンジニアらで構成するAIチームを立ち上げた。AIを用いた営業支援ツールなどを開発しているほか、AIツールを継続的かつ迅速に改善できる環境を整えた。グロサス社長は、「AIツールを内製化し、数週間ごとに新しい改善を行い、数カ月かけて評価し、また改善している」と紹介し、「AI分野の技術革新は速く、当社で全て把握できているとまでは言えないが、全社員で使い始めている強みはある」と述べた。
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