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紙1枚にまとめるというシンプルな方法を実行している人、していない人

公開日時 2015/07/17 05:00

情熱的読書人間
榎戸 誠

 
【紙1枚】

 

トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(浅田すぐる著、サンマーク出版)に書かれている紙1枚にまとめる技術は、どの企業であれ、仕事ができると言われるほどの人なら実行しているシンプルな方法である。しかし、その企業でこの方法を活用しているのは、ごく一部の人に過ぎないだろう。これに対し、トヨタでは全員が日々実行することで、習慣のレヴェルにまで至っている。この「一部」と「全員」の差が大きいことは、トヨタが日本を代表する優良企業であり続けていることが証明している。

 

 

【トヨタのケース】

 

「トヨタには、業務上の書類はすべてA3またはA4サイズの紙1枚に収める、という習慣が企業全体の文化として根づいています。報告書、企画書、会議の資料や議事録、打ち合わせ時に使う書類、プレゼンテーション資料、スケジュール確認用のリスト、考課面談用の書類・・・どんな種類の書類も、そしてどんなに複雑な内容の書類も、原則『紙1枚』で作っていくのです」。

「考え抜いて作られた1枚の書類は、機能する1枚となるのです。仕事が円滑に進むようになるだけではなく、『紙1枚』にまとめる技術を駆使したことで、一時は年400時間を超えた残業時間も、ほぼゼロにすることができました。・・・会議の場では話し合いを効率よく進めることに役立ち、新入社員時代には『紙1枚』によって仕事の進め方を学びました。1枚の書類が、さまざまな仕事の場面において素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれたのです」。

「仕事ができる人というのは、仕事に関する型を、人より多く把握しています。型をつかんでいるから、仕事の先の見通しが立ちやすくなります。次に何をすればよいかがわかっているから、仕事もどんどん進む。また、型をつかんでいると、力の入れどころがわかるので、無駄なエネルギーを使うことなく、効率よく仕事の質を高められるのです」。

「トヨタの管理職には、係長、課長、室長、部長の4人がいて、大きな案件については、段階的にこの4人との打ち合わせが必要でした。そしてその打ち合わせごとに、『1枚』が用意されるのです。『この対策部分は、もっとこうしたほうがいいのでは?』『スケジュールが厳しいのでは?』などと、打ち合わせのたびに『1枚』の内容に修正がかけられ、仕事が前進していきました。このような打ち合わせに何度も同席し、先輩社員や上司たちが作った何枚もの『1枚』を見ていくうちに、そこに共通のテーマが掲げられていることに、私は気づきました。それは、次の5つです。①目的、②現状、③課題、④対策、⑤スケジュール。『そうか、少なくとも今自分がいる部署では、どの仕事もこの5つのテーマをクリアにしていけばいいのだ』と気づいたのです。『会議の議事録も企画書も報告書も、少なくともこの5つの観点から考えてまとめていけば問題はない。そして、5つがクリアになったら、あとは行動を起こしていくだけ。そうすれば仕事は進んでいく』と」。

 

 

【トヨタの工夫】

 

この紙1枚の方法をまだ実行していない人は言うまでもなく、既に実行中の人にも、本書は役に立つ。なぜなら、トヨタの紙1枚の技術には、絶妙な工夫が凝らされているからである。

その工夫とは何か。「一見何の変哲もない書類に感じるかもしれませんが、『トヨタの1枚』ならではの特徴があります。それは、①ひと目で全体が見える(一覧性)、②枠がある(フレーム)、③枠ごとにタイトルがついている(テーマ)という3点です」。

「決定的な違いは『ひと目でわかるかどうか』――トヨタでは通常、A3用紙を横にして使います。ふだんの業務ではA4サイズの用紙を使うことが大半でしたが、企画書やスケジュール管理などの複雑な案件に関しては、より一覧性にすぐれたA3サイズを用いました。『トヨタの1枚』の3つの特徴の1つである『一覧性』は、わかりやすく伝えるための非常に重要なポイントです。・・・『紙1枚に収める=一覧性を持たせる』だけで、何枚にもわたる書類より、ずっと伝わるものになるのです。さらに、A3用紙は、図表やグラフを入れるのにも十分、かつ見やすいサイズです。『百聞は一見にしかず』で、どんなに言葉を重ねるよりも、見せたほうが、すばやく正確に伝わる場合があります」。

「できあがった『1枚』がそのまま議事録になる――あらかじめフレームを書き込んだ『1枚』を用意しておけば、会議がダラダラと無駄に長引かないうえに、会議終了とともに議事録が仕上がるという、一石二鳥の効果が得られるわけです。会議の書類に、空白のフレームを入れる――。たったこれだけで、手元の書類が『機能する1枚』になります」。何と素晴らしいアイディアだろう。

 

 

【著者のMY1枚】

 

著者は独自のフォーマットである「MY1枚」を作成して、愛用している。「部署の仕事は基本的にどんなものでも、目的、現状、課題、対策、スケジュールの5つをクリアにしていけばいいのだと気づいた、と書きました。これをフォーマット化し、オリジナルの『1枚』を作ったのです」。具体的には、左上に提出先名、右上に作成年月日と作成者の所属と氏名を記載し、フォーマットの最上段にタイトルを記入する。タイトルの下に5つの空白のフレームが作られており、上から、「1.背景or前提or目的、2.現状or概要、3.課題、4.対策、5.スケジュール」と記されている。

著者の工夫は、独自のフォーマットに止まらない。「表現に含まれる『動詞』を、目に見える『動作』に変換することで、誰でも再現できるようにするのです。たとえば『挨拶する』は動詞です。これを動作に変えると、笑顔で『おはようございます』とはっきりした声で言う、頭は軽く下げる、などとなります、きちんと挨拶するということが、具体的にどういうことなのかわからない人には、このように動作を示してあげるとよいのです」。

「情報を整理するために、いったいどうすればよいのか? 私が提案する『紙1枚』にまとめる技術では、次の3つの素材を用意します。・テーマ、・3色(緑、青、赤)のペン、・1枚の紙」。「まず、ノートにフレームを書いていきます。通常は、A5またはB5サイズのノートをページが横長になる向きにして書いていきます。そこに、4個、8個、16個、32個、64個・・・という具合に、フレームを書いていきます。フレームの数はテーマに応じてどれをチョイスしてもらってもかまいません」。何と、この作業は、私が普段やっていることと同じではないか! 私の場合は、A3判の裏紙を使用して、枠を縦5×横6=30個作っているが。

この後、著者は3色のペンを使いこなしていく。①緑色のペンで上下、左右の真ん中にそれぞれ線を引く→②縦線をさらに2本引くと8つのフレームができる→③一番左上のフレームに「日付」と「テーマ」を書く→内容のボリュームに合わせてフレームの数を16フレーム、32フレームなどと増やしてもよい→④残りのフレームに青色のペンでテーマに対する答えをどんどん書いていく→⑤書き込んだ答えの一つ一つについて、赤色のペンで、不採用のものには×印をつけ、採用するものは○で囲む。これを基本編として、本書にはその応用編も紹介されている。

「『1枚』は仕事の時間節約にも劇的な効果を発揮します。しかも、自分の時間だけでなく、仕事相手の時間も節約する。『紙1枚』にまとめる習慣が、自分も周りもハッピーにしてくれるといえます」。

情報を整理し、考えをまとめ、他者に伝える方法として、この「紙1枚」を知っていると否とでは、大きな差が出てくることだろう。もちろん、知っただけでは意味がなく、ちゃんと実行に移した人に限っての話であるが。

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