東京地裁 AZベテランMRの解雇無効、社会通念上認められない AZは即日控訴

公開日時 2017/10/30 03:52
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アストラゼネカ(AZ)のベテランMRが営業活動の虚偽報告などを理由に2015年に懲戒解雇されたことは不当だとして、地位確認と未払い賃金の支払いを求めた判決が10月27日、東京地裁(石川真紀子裁判官)であり、解雇は無効との判決を言い渡した。虚偽報告などには、「相応の懲戒処分を受けてしかるべき」とされたが、個別の注意や指導の機会もなかったことなどから、懲戒解雇とするには「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることができず、懲戒権を濫用したもの」だと指摘した。

解雇無効の判決によってAZとの間で雇用契約があるということになり、AZに対して、これまでの未払い賃金の支払いも命じた。このベテランMRは山口浩治さん(54歳、写真右から3番目)で、判決後に厚労省内で開いた記者会見では、「判決文をよく読んで反省するところは反省し、(MRとして)復職させていただければと思っている」と述べた。

一方、AZは本誌取材に、判決について、「当社としては、一定の理解は得られたものの、最終的には主張が認めらなかったことを不服とし、すみやかに東京高裁に控訴する手続きを行った」とコメントし、即日控訴したと説明した。

AZでは労働問題が相次いでいる。現在、訴訟にまで至っているのは、今回の山口さんの懲戒解雇事案のほかに、元ベテランMRの社員3人が“追い出し部屋”に配置転換されたとする事案(記事は、こちら)、現役MR8人が不当に降格・減給されたとする事案(記事は、こちら)の3件。AZの一連の労働問題では、今回が初の判決となる。

■営業活動報告システム「Veeva」 デタラメ入力は「重大な過失」、懲戒事由に


判決文などによると、今回の懲戒解雇事案は、AZの前身のアイ・シー・アイファーマ社に88年に入社し、MR一筋で勤続27年の山口さんが4つの懲戒事由によって15年11月末に懲戒解雇されたというもの。なお、山口さんは部下持ち管理職を務めていたこともあり、解雇されるまでに懲戒歴は一度もない。

山口さんは15年4月に規定に基づかない一方的な降格、基本給10%減額を受けた。そして、同年6月頃にパワハラを指摘するメールを社内の関係各所に出したあたりから会社により目を付けられ、“粗探し”が始まったという。

結果、▽営業活動の虚偽報告▽新薬のTVシンポジウム参加者の虚偽報告▽虚偽内容のメールや必要ないメールの発信行為▽ホテル代などの二重経費精算――の4つの懲戒事由により、解雇された。

判決では、これらのうち二重経費精算は、新たな精算システムの導入によって他の社員でも二重精算が「珍しくないといえる程度」にあり、勘違いや操作ミスが考えられるとして故意ではないと認定、懲戒事由には当たらないとした。しかし、ほかの3つは懲戒事由にあたるとされた。

営業活動の虚偽報告では、営業車のETCカード、駐車場利用履歴、各施設間の距離、各施設の訪問規制の有無――と、山口さんが営業活動報告システム「Veeva」に入力した内容を照合したところ、会社側は15年4月~6月の活動報告の中で、営業日数55日中13日で虚偽報告があると指摘した。山口さんはその一部についての報告ミスは認めていたが、判決では、山口さん側の主張は記憶に基づくものだとして、全13日が虚偽報告と認定された。

判決では、調査対象の営業日数の2割程度が虚偽だったほか、この虚偽の活動内容が、訪問規制時間やETCカードの履歴などの客観的資料と照らして、不可能であったり、著しく困難なものだった。このため、「何らかの誤認混同により(入力を)誤ったというよりは、出鱈目に入力したのではないかと疑われる内容」であり、「原告(=山口さん)の主張する通り、営業活動の虚偽報告を故意に行っていたものではないにしろ、原告の重大な過失によるものと認められる」とされ、“虚偽報告”などの懲戒処分に当たるとされた。

原告の代理人弁護士の梅田和尊氏(写真右から2番目)は会見後、本誌取材に、デタラメ入力が懲戒事由になることについて、「特段に新しい判断ではないと思う」とし、「意図的なウソでないとしても、真面目に注意して正しく入力すれば済むことであり、適当に入力していたとなれば、勤怠不良・虚偽報告になると言われる」と解説した。

■営業日当の詐取は「早計」

また、この裁判を通じて会社側は、「営業活動の虚偽報告は営業日当の詐取と同じ」とし、回数などから諭旨解雇相当と判断した旨を主張していた。この点について判決では、「営業活動報告に虚偽を含む日に営業活動をしていないものではなく、営業活動の虚偽報告を営業日当の詐取と同じであるとするのは早計」との判断を示した。山口さんがVeevaの誤入力を指摘されたのが今回が初めてであったことからも、「今後、入力を正確にすると期待することができる」とも指摘した。

このほか、TVシンポ参加者の虚偽報告では、本来、シンポ開催前に作成が許されない参加者の芳名帳に医師と薬剤師各1人の名前を記載し、結果、不参加だった。判決では、山口さんも芳名帳を事前に作成することが許されないことを認識していたとし、虚偽報告などの懲戒事由にあたるとした。

虚偽内容などのメールの発信行為に関しては、判決では、パワハラを受けたり、コンプライアンス違反の疑惑を持った際に社内のコンプライアンス担当者にメールを送信することは「理解しうる」とされた。ただ、同担当者以外に広くメールを送る行為は、かえって不安をあおったり、業務指示系統を乱すなどとして、風紀違反や風説流布に該当するとされた。

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