AZ MR8人が集団提訴 東京地裁に 不当な降格・減給と主張

公開日時 2017/07/07 03:52
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アストラゼネカ(AZ)の現役MR8人は7月6日、降格や減給の基準や内容を定めた就業規則が存在しないにもかかわらず、一方的に降格・減給をさせられたとして、地位確認と減給分の差額支払いを求めて東京地裁に集団提訴した。これまでに退職勧奨もあったとしている。8人の中には、1年もたたないうちに、副所長から新人レベルの職務等級にまで降格となった人もいる。

8人は現在44歳~57歳のMR。MR歴は全員20年以上で、最上位かそれに次ぐ職務等級にあった。しかし、全員が十分な説明がないままに成績下位者に適用されるPIP(=業務改善計画)の対象となり、不当な課題が設定され、合格基準も不透明な中で、全員がPIPに不合格。16年4月に一方的に導入されたMRの新たな職務等級制度(=評価制度)もあいまって、職務等級は最低か、そのひとつ上の等級に降格となり、減給を受けた。減給額は、月収ベースで約10%減額された人が多く、年収ベースにすると減収率はさらに大きくなる。

現役社員で組織する労働組合「アストラゼネカユニオン」(以下、AZユニオン)と、その上部組織の東京管理職ユニオンは、「PIPの濫用、恣意的な評価制度の運用により、比較的基本給の高い中高年がターゲットにされ、達成不可能な目標を与えられ、未達成を理由とした降格・減給、それを元に脅迫し退職に追い込むものだ」と会社側の“手口”を批判している。

集団提訴したMRのAさんは本誌取材に、「納得感の持てる真っ当なルールのもとで働ける、働きがいのある会社になってほしい」とし、「訴訟によって会社の行動が正しいかどうかが公になる。多くのAZ従業員にも見てもらい、正常な労使の姿になってほしい」と語った。

■中高年MRを中心にPIP実施か

5月に、いわゆる“追い出し部屋”に配置転換させられたと訴えた元ベテランMR3人による労働審判の申し立て(記事は、こちら)に続き、AZでは再び労働問題が表面化したことになる。

AZユニオンと東京管理職ユニオンは、今回の現役MR8人による集団提訴、元MR3人による労働審判の申し立てのいずれも、PIPと、16年4月に一方的かつ詳細な説明がないままに導入された職務等級制度「MRキャリアレベル」の合わせ技で降格・減給が行われていると指摘している。

東京管理職ユニオンによると、PIPは年間評価で下位10%が対象となるが、会社側がその評価根拠を開示しないという。さらに、今回集団提訴したBさんのケースでは、全MRの評価で下位10%に入っていないことからPIPの対象外だったにもかかわらず、後日、「若手MRを除いたら、BさんはPIP対象に入りました」との説明を受けたといい、中高年MRをターゲットにしている姿が浮かぶ。

PIPでは6カ月間の課題と目標がいくつか出される。例えば、▽説明会・勉強会の回数▽医師訪問率▽医師の講演会招聘率▽売上やシェア――について、全国平均以上の数字や結果が求められる。ただ、Bさんの場合、目標設定時に、「どうなれば合格となるのか」と上長に確認したところ、「分からないからとりあえず開始する」との説明を受けたとのこと。結局、合格基準となる目標が先に示されないでPIPが始まった。

■地方に異動直後に全国平均以上の“数字”求め

東京管理職ユニオンは、「PIPの件で、ユニオンへの相談までたどり着ける社員は決して多くない。PIPで不合格とされ、退職勧奨を受けた多くの社員が、心が折れて自ら辞めてしまっている」とも指摘する。

目標達成が困難な環境におかれたり、不透明な合格基準に「心が折れて」しまうようだ。例えば、地方に異動させた直後の不慣れな環境や、厳しい訪問規制をとる施設担当といった環境下でPIPが適用されて全国平均以上の数字を求められ、結果はPIPに不合格。また、医師に質問して治療方針や患者の状況などを確認する“効果的なWhy”と呼ぶ課題もあるが、「合格基準が極めて抽象的で、これで引っかけて不合格とするケースも多い」(東京管理職ユニオン)。

さらに、6カ月間のPIP の実施期間中にもかかわらず、不合格を言い渡され、退職勧奨を受けるケースも散見されるという。

AZユニオン執行委員長で同社現役MRの遠藤維大氏は本誌取材に、「仮にローパフォーマーなのであれば、それを改善できなかった上長の責任も問われてしかるべきなのに、そのようなことは見受けられない。そもそもローパフォーマーにしてしまった責任もあるはず」と指摘した上で、「あたかも退職者を作るノルマを与えられていて、それをこなしているのではと疑ってしまう。PIPを悪用し、中高年の社員を減らすために使っているとしか思えない」と述べた。

■数か月で副所長から最下位のグレードに

PIP未達成・不合格になると、MRキャリアレベルに基づいて降格・減給される。

16年4月に導入されたMRキャリアレベルは、▽大学病院など全国レベルの重点施設を含むテリトリー(M4)▽地域の基幹病院が中心のテリトリー(M3)▽地域の病院、開業医を含むテリトリー(M2)▽開業医が多いテリトリー(M1)――の4つのテリトリーに、一定期間のパフォーマンス、リーダーシップ、スキル、知識の各評価軸でMRを振り分けるというもの。M4にいくほどパフォーマンスなどの評価ハードルが上がり、給与レンジも高まる。

東京管理職ユニオンは、「大学病院クラスを上のレベル、開業医担当は一番下のレベルとされ、(MRは)4つに分けられた。当然ながら大学病院クラスの施設数は限られており、開業医の数は多いので、いままで上のレベルにいた多くの社員が降格させられた」としている。また、医療者を施設規模で差別する問題のある制度とも指摘している。

東京管理職ユニオンに、より詳細に話を聞くと、中高年の給与水準の高いMRほど、十分な説明がないままM2にされるケースが多いという。MRキャリアレベルに基づけば事実上の降格となるが、月給は、16年3月までの旧職務等級制度からMRキャリアレベルへの移行にあたっての等級変更に関しては、給与水準を据え置く運用がなされた。しかし、MRキャリアレベルの運用後の等級変更(降格)では、給与が下がる。

そこで、M2でのパフォーマンスなどが不十分との評価が下され、PIPが適用→PIPに不合格→M1に降格/退職勧奨――となり、降格・減給に至る。

今回集団提訴したMRのCさんの場合は、16年3月までの旧制度で「D4」というMRでほぼ最上位のグレードで、さらに試験に合格して副所長の職務を兼任していたが、PIPとMRキャリアレベルによって、17年1月には最低ランクのM1まで職務等級が下がった。1年も経たないうちに、最上位から最下位に降格したことになる。東京管理職ユニオンは、今まで何年もかけて積み上げたキャリアを十分な説明なく白紙化された理不尽さを訴えている。

東京管理職ユニオンによると、会社側はMRキャリアレベルの導入当初、M1レベルの給与水準まで年10%を上限に毎年給与を下げると説明していたが、17年に入ってから、「基本的に10%以上は下げない」との運用に切り替えたという。同ユニオンは、「これは訴訟リスクを踏まえた措置であり、違法性を認識している証左」とも話している。

■AZ広報部 「真の成果主義文化の醸成に取り組む」

今回の集団訴訟に対し、AZ広報部は本誌取材に、「係争中の案件については回答を控える」とした上で、「当社は建設的な対話を通じ解決に向けて真摯に対応するとともに、全ての社員が公平かつ十分な敬意をもって評価される真の成果主義文化の醸成に向け取り組んでいく」とのコメントを寄せた。

コメントでは、社員は「最も重要な財産」で、「社員が必要とするスキルや能力の開発が確実に行えるよう、積極的な投資を継続していく」としている。

また、日本では2021年までに8つの新製品を上市予定とした上で、「その実現に向けて社員が果たす役割は大変重要」との考えも示している。同社は、がん、呼吸器疾患、循環器・代謝疾患――の各主要領域でリーディングカンパニーとして認識されることを目指している。

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