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久里浜医療センター・樋口院長 2014年にもアルコール依存症治療GL作成へ

公開日時 2013/10/08 03:52

国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長は10月7日、日本新薬主催のアルコール依存症治療に関するプレスセミナーで講演した中で、厚生労働科学研究の一環として2014年にアルコール依存症の治療ガイドライン(GL)を作成する予定と説明した。治療GLには今年5月に発売されたアルコール依存症治療薬として30年ぶりの新薬レグテクト(一般名:アカンプロサートカルシウム)も盛り込まれる。既存薬が肝臓に作用して飲酒すると強い吐き気などの不快症状を引き起こす「抗酒薬」なのに対して、レグテクトは脳に作用して飲酒欲求を下げる「断酒補助薬」との新たなカテゴリーの薬剤となる。

同医療センターはWHOから国内唯一のアルコール関連問題施設に指定されている。日本のアルコール依存症治療と研究の中心的な専門医療機関で、樋口院長はこの日、「アルコール依存症の治療最前線」と題して講演した。

アルコール依存症は常習飲酒の結果、自らお酒の飲み方をコントロールできなくなった病態のこと。自身の病気や外傷の原因になるほか、家庭崩壊や事故、犯罪といった社会問題を引き起こす可能性がある。アルコール依存症の推計患者数は約80万人だが、治療を受けている患者数は約4万人にとどまる。樋口院長は講演で、「アルコール依存症の治療が必要な患者の5%しか治療を受けていない。残りの人たちに対して治療をすすめる施策が必要」と指摘した。

とはいえ、アルコール依存症の治療を受けていても、断酒を継続できる患者は多くないという。アルコール依存症の治療は、カウンセリングや自助グループへの参加といった「心理社会的治療」を基本に薬物療法を併用するが、樋口院長はこれまでの治験や研究結果などから、「アルコール依存症は難治で、専門治療を続けても6か月断酒を続けられる患者は約40%、1年間では約30%といわれている」と述べ、再びお酒を飲み始めれば程なくコントロールできない状態に戻ってしまうという治療の難しい疾患と説明した。

このような中でレグテクトの国内フェーズ3試験では、プラセボとの比較で、主要評価項目とした投与24週間(6か月)の完全断酒率がレグテクト群(163例)が47.2%、プラセボ群(164例)が36.0%で、レグテクト群で有意に高い効果が認められた。樋口院長はこの結果について、「6か月断酒率が約40%といわれるなかで、レグテクトの47.2%という治験結果は妥当性を示している」とコメント。その上で、「治験が日常診療にそのまま当てはまるかどうかについては少しギャップもあるところだが、6か月断酒率を(プラセボと比較して)11%上げるとすれば、我々としては大変なこと」「(レグテクトは)画期的な治療薬である」と評価した。

レグテクトの安全性に関しては、下痢が高頻度に発現するが、投与4週間以内に多く、程度も軽度か中等度と確認されている。樋口院長は、「無処置または整腸剤などの投与で回復し、レグテクトの投与継続は可能」と解説した。

また、樋口院長はレグテクトについて、「今後、より有効かつ安全性の高い使用方法に関する臨床データを我々が蓄積して、(レグテクトの)使い方のマニュアルを作っていかなければいけないと考えている」と述べるとともに、今年と来年の厚生労働科学研究に言及した。具体的には、今年は飲酒量低減のためのGLを、来年は治療GLを作成する方向という。レグテクトの登場で、将来、一般のクリニックでもアルコール依存症治療ができるようになる可能性もありそうだ。

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