中医協 アルコール依存症の治療補助アプリの保険適用を了承 実臨床での有効性の検証求める声も
公開日時 2025/07/17 05:29
中医協総会は7月16日、「CureApp AUD 飲酒量低減治療補助アプリ」の保険適用を了承した。アルコール依存症患者の飲酒量低減治療を補助するプログラム医療機器。保険償還価格は7010 円で、9月1日に収載予定。患者の行動を管理する健康アプリがすでにある中で、実臨床での効果を検証する必要性を指摘する声が診療・支払各側からあがった。
治療補助アプリの主な使用目的は、「アルコール依存症患者の飲酒量低減治療補助」。外来での心理社会的治療では行えない診療時間外の介入を、適切なタイミング、頻度、分量で患者ごとに個別化して行うとともに、診療時間外の患者の情報を集約して診察時に医師や医療従事者に提示することで診療を補助するとしている。区分はC2(新機能・新技術)。類似機能区分比較方式で評価し、険償還価格は7010 円。市場規模予測(ピーク時)は5年度目で、使用患者数は9819 人、予測販売金額は7.2 億円。ピーク時の市場規模予測が50 億円未満であることから、費用対効果評価には該当しない。
アルコール依存症について適切な研修を修了した医師がアルコール依存症に係る総合的な指導及び治療管理を行った場合に、初回の使用日の属する月から起算して6か月を限度として、初回を含めて月1回に限り算定できる。前回算定日から、平均して7日間のうち3日以上飲酒記録がアプリに入力されている場合にのみ算定できる。関連学会の策定するガイドライン及び適正使用指針に従って使用した場合に限り算定できることも明確化している。
◎診療側・江澤委員 市販後調査を参考に有効性検証する取組みを
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「プログラム医療機器については、まだ新しい分野で、保険適用後のデータを蓄積し、検討していく必要がある。薬剤の市販後調査を参考に保険適用後のデータを収集し、有効性を検証するための取り組みを要望したい」と述べた。これに対し、事務局は「市販後の調査などを行いながらということだが、現状制度上では、そういった調査を行うところはないので、今回のご意見を伺いながら、少し検討させていただきたい」と応じた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「飲酒を記録する一般の健康アプリがある中で、何をもってこの製品がプログラム医療機として、承認されたのか」と質した。これに対し、事務局はプログラムの医療機器該当性に関するガイドラインを引き合いに、プログラム医療機器は「疾病の診断、治療予防に寄与するなど、医療機器としての目的性を有しているということ、また意図した通りに機能しない場合に、患者または使用者の生命、および健康に影響を与える恐れがあるプログラムが該当する。一方で、単なる記録といったものに関しては、健康管理アプリとなる。疾病の診断等を目的としないようなものであるという点で、異なるものと認識している」と説明した。支払側の松本委員は、「製品そのものは、治療効果の改善に貢献するものと期待しているが、保険給付をする限りは健康アプリとの違いというのは、重要なポイントになる」と述べた。松本委員は、「ガイドラインや適正使用指針に沿った適切な指導、管理をいただくともに、患者自身も健康アプリとは違うことをしっかり認識した上では、使用することが重要だ」と指摘した。
支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)も、「飲酒日や量を管理できる健康アプリはもうすでにあろうかと思うので、このアプリにどれだけの有用性があるのか、が重要になると考えている」と表明。承認に至ったエビデンスとして12週、24週時点の有用性が示されていることに触れ、「実際の効果はどうか、今後も検証が必要ではないか」と指摘した。
◎アプリは9月1日発売予定 販売元は沢井製薬
CureAppは保険収載が予定される9月1日から販売を開始すると発表した。沢井製薬が販売ライセンスを有し、販売開始に向けた準備を進行しているとしている。