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塩崎元厚労相 プログラム医療機器活用で“患者起点”の医療実現を 実用化の迅速化に向け議論・SaMDフォーラム

公開日時 2022/02/07 04:51
塩崎恭久元厚労相(前衆院議員)は2月4日に開かれたSaMDフォーラム2022で挨拶し、「デジタルを使って、これからの医療を進めるときに個人に合わせることが大事だ。まさにプログラム医療機器はその個人に最善の診断や治療を提供する」と述べ、患者起点の医療の実現に期待感を示した。プログラム医療機器をめぐっては、実用化の迅速化に向け、研究開発支援や承認審査、医療保険上の評価などで、厚労省、経産省がタッグを組み、環境整備を進める。2022年度保険医療材料制度改革では、プログラム医療機器の評価について考え方も整理されている。この日のシンポジウムは、厚労省と経産省が共催して初めて開かれ、産官学が一堂に集い、議論がなされた。

◎日本の医療政策は「サプライサイド視点で国民や患者とかそういう視点から見ていない」

塩崎元厚労相は、データヘルス改革に注力してきた。そのきっかけとなった電子カルテの標準化がなかなか進まない現状をあげた。複数の医療機関を受診する患者も多いなかで、「トータルとして個人の患者、一人の人間としてみることができていないのがいまの日本の現状だということを知って愕然とした」と振り返った。

「患者が移動するということを前提にしない」として、「日本の医療政策はサプライサイドの視点から物を見ていて、国民や患者の視点から見ていないのではないかとつくづく感じた」と指摘した。英国のゲノミクス・イングランド(Genomics England)を引き合いに、患者を起点とした個別化医療が進展している実状を指摘し、プログラム医療機器の普及による個別化医療の進展に期待をみせた。

そのうえで、「ITはどんどん進化する。それに追いついていくだけの審査の体制、承認の体制というものを組めるかどうかが大事だ」と指摘。さらに、規制当局のあり方についても、製薬企業など民間企業での経験を有する人を登用する世界的な流れを紹介し、「民間の最前線のことを知っている人が公的当局にいることが、その分野にとってもメリットが大きい。公務員制度改革を日本でもやっていかないと世界のスタンダードセッターとなることはなかなかできない」とも述べた。

◎医療保険上の評価に多くの声

この日のシンポジウムでは、特に医療保険上の評価に対する声が多く出た。2022年度保険医療材料制度改革では、プログラム医療機器の考え方も整理された。製品の特性に応じて、▽技術料に平均的に包括、▽特定の技術料に加算、▽特定の技術料に一体として包括して、▽特定保険医療材料として-評価されるものに大別した。また、医師の働き方改革の観点を念頭に置きつつ、製品特性を踏まえて施設基準などへの反映も含めて評価するとしされている。具体的には、X線画像の読影補助を行うプログラムでは、既存技術よりも明らかに病変を検出する能力が高ければ加算として評価し得るという。また、専門医と同等の造影ができれば、専門医を要件とする施設基準を緩和し得るという。実際、アルムの医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」が上市されたことで、2016年度診療報酬改定で、脳卒中ケアユニット入院医療管理料について医師の配置要件が緩和されている。

◎塩野義製薬・小林部長 DTxに特化した診療報酬の枠組み新設も一考

塩野義製薬のDX推進本部デジタルインテリジェンス部の小林博幸部長は、治療用医療機器プログラム(DTx)の分野で日本は欧米に比べて後れを取っている現状を指摘した。「欧米のベンチャー1社が持っているパイプライン数と国内で開発されているものがほぼ同数」とし、「製薬企業だけでなく、ベンチャーが参入できるような環境を作っていかないといけない」と述べた。そのためには、「しっかりとビジネスとして成立するところでの投資判断ができるようなシステムが必要だ」との見解を示した。

現在のところ、治療用アプリで保険収載されているのはCureApp社の禁煙治療向けの治療用アプリ「CureApp SC」のみで、技術料として評価されていることから、「技術料というところで本当にそこに入っていいのかと慎重に考えている製薬企業やベンチャーもいる」として、「付加価値のつくような保険償還法も検討していく必要があるのではないか」と述べた。そのうえで、医師の処方の下で患者の関与が多いことから、「医薬品、医療機器ではない第3の枠を作っていく必要があるのではないか」と述べ、DTxに特化した診療報酬の枠組みを新設することを提案した。

ドイツでは申請後3か月以内に仮の保険償還価格を決め、その後にリアルワールド・エビデンス(RWE)で評価し、保険償還していることも紹介し、アウトカムを踏まえて保険点数を見直すなどの制度設計の必要性も指摘した。このほか、DTxは侵襲性がないことから、安全性の観点をも踏まえ、DTxに適した臨床評価基準や承認要件の新設など、迅速な承認や収載に向けて検討する必要性を指摘した。

CureApp社の緒方剛薬事部長は、IT技術の進歩を踏まえ、日常的に稼働させるためには、治療用アプリについて継続的な開発が必要と指摘。「安定供給・治療公開時のための継続開発に対し、何らかの診療報酬所の手当が必要」との見方を示した。

◎昭和大・三澤講師 浸透に病院側が初期投資するメリットの必要性指摘

アカデミアの立場で講演し、薬事承認を得たAIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」の開発に取り組んだ、昭和大横浜市北部病院消化器センター講師の三澤将史氏は、「診断支援のAIは機器として病院もある程度投資しないといけない。使って検査をしても経済的な利益が病院側に入ってこない。初期の投資として病院側の経営層が認めてくれないという課題がある」との課題認識を示し、「SaMDの普及には、診療報酬加算が必要ではないかと強く感じている」と述べた。

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