アレクシオン・濱村社長 希少疾患のリーディングカンパニー確立へ 万博で希少疾患・難病患者イベント
公開日時 2025/04/17 04:51

アレクシオンファーマの濱村美砂子社長は4月16日のメディアセミナーで、希少疾患のリーディングカンパニーへの地位確立に強い意欲を示した。この日はトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の治療薬として3月27日付で製造販売承認を取得した「ビヨントラ錠」(アコラミジス塩酸塩)をめぐり2人の臨床医から、同疾患の診断上の課題や同剤の臨床試験の結果などが報告された。特に診断については、手のしびれなど初期症状で患者が整形外科を受診するケースもあり、診断が遅れると心不全を発症し、重症化することから、循環器内科と整形外科、神経内科の診療科連携の必要性が指摘された。これを受け濱村社長は、希少疾患の啓発活動の重要性を指摘。MRを通じた情報提供活動に加えて、5月の「難病の日」に実施する予定の大阪・関西万博のプログラムなどを活用して疾患啓発に努めたいと述べた。
「私は前職で希少疾患事業部長をしていたが、その経験を経て考えても、アレクシオンファーマにおけるサイエンスは非常に強いものがある」-。濱村社長はメディアセミナーの冒頭でこう強調した。その上で、希少疾患のリーディングカンパニーとして確固たる地位確立のための成⾧戦略に触れ、患者のアンメットニーズに応える医薬品をいち早く届けていくと決意を示した。
日本市場の評価について濱村社長は、「売上げ規模もアメリカに次ぐ世界第2位。2024年4月に上市した発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)治療薬ボイデヤ(ダニコパン)は、日本が世界に先駆けて上市した新薬」と力を込め、前・笠茂公弘社長時代に達成した平均事業成長率20%超に触れながら、「今後も2桁成長を達成し続けたい」と強調した。
◎心アミロイドーシス 診療科連携の重要性に言及

セミナーでは同社のトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬・ビヨントラ錠(一般名:アコラミジス塩酸塩)について、疾患の現状と治療法の解説が行われた。高知大学医学部老年病・循環器内科学の北岡裕章教授は、近年、診断技術が大きく進展していることに触れ、「専門家が判断すれば97%の確率で診断することができる感度の優れた体に負担のない検査」と説明した。一方で、同疾患が手根管症候群や脊柱管狭窄症、虚血性心疾患などさまざまな症状の引き金になりえることから、患者の早期発見には診療科間の連携が重要と指摘。「各地で整形外科と循環器内科、脳神経内科と循環器内科といったコラボレーションが診療科間の連携で行われている」とし、横断的な医療連携の必要性を述べた。

久留米大学病院循環器病センターの田原宣広教授は、アコラミジスを用いた「ATTRibute-CM試験(海外第3相、検証試験)の結果を紹介。同試験は、症候性の野生型または変異型トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者632例をアコラミジス群と偽薬群に無作為に割り付け、30か月時点までの全死因死亡割合、心血管症状に関連する入院の累積頻度、心臓への負担(NT-proBNP)の変化量、6分間歩行試験の変化量による階層的複合エンドポイントを主要評価項目として検証的解析を行った。
その結果、偽薬群(211例)に対し、アコラミジス群(421例)は主要評価項目を1.8倍改善。副次評価項目の心血管症状関連の入院頻度も50.4%低下させた。主な有害事象(いずれかの群で発現割合20%以上)は、アコラミジス群、偽薬群それぞれについて、心不全が24.0%、39.3%、心房細動が16.6%、21.8%、COVID-19が21.1%、14.2%だったと報告した。
◎5月23日「難病の日」 大阪・関西万博で希少疾患・難病患者の課題で理解深めるプログラム開催
質疑では、北岡教授、田原教授それぞれから、同疾患の認知度や知識レベルの向上が求められ、正しい診断がなるべく早く行われるための診療連携の必要性が強調された。特に、連携すべき診療科については、両医師とも、整形外科や神経内科と循環器専門医との連携の必要性を指摘した。これを受けて濱村社長は、「メディアセミナーを通じてエキスパートから詳しい説明をいただくことも疾患啓発の一環として重要な取り組み」と強調。また、「MR活動を通じ、診断率に関してもいろいろな活動をやっていけるかなと考えている」と述べ、5月23日の「難病の日」に合わせて大阪・関西万博で希少疾患・難病患者の課題について理解を深めるプログラムを開催する予定であることも紹介しながら、疾患啓発に取り組んでいきたいと意欲を示した。