新薬5成分11品目 10月22日収載へ ボルズィ、ヨビパスはピーク時100億円以上予想 中医協総会
公開日時 2025/10/16 04:50
中医協総会は10月15日、新薬5成分11品目の薬価収載を了承した。収載日は10月22日。大正製薬の不眠症治療薬・ボルズィ錠(一般名:ボルノレキサント水和物)、帝人ファーマの副甲状腺機能低下症治療薬・ヨビパス皮下注(一般名:パロペグテリパラチド)はそれぞれピーク時売上が100億円以上と予想された。ヨビパスは、副甲状腺機能低下症を効能・効果とする初の医薬品で、腎機能障害を合併する患者にも投与できることが評価されて有用性加算(II)(A=5%)と市場性加算(I)(A=10%)の補正加算が付いたが、いずれも原価開示度50%未満ということで加算ゼロとなった。
また、今回の収載品目には、国内初の経鼻投与型の抗けいれん薬・スピジア点鼻液(一般名:ジアゼパム)も含まれる。スピジアは新投与経路医薬品として承認され、成人では初の医療機関外で投与可能なレスキュー薬となる。補正加算として有用性加算(II)(A=10%)と市場性加算(I)(A=15%)が付いた。
10月22日付で収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)。投与経路・薬効分類順。
▽ボルズィ錠2.5mg、同錠5mg、同錠10mg(ボルノレキサント水和物、大正製薬)
薬効分類:119 その他の中枢神経系用薬(内用薬)
効能・効果:不眠症
薬価:
2.5mg1錠 47.80円
5mg1錠 71.30円(1日薬価:71.30円)
10mg1錠 106.40円
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数708千人、販売金額119億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当しない
費用対効果評価:該当しない
オレキシン受容体(OX1およびOX2受容体)拮抗薬。用法・用量は「通常、成人には1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えないこととする」。
不眠症に対するオレキシン受容体拮抗薬としては、ベルソムラ錠、デエビゴ錠、クービビック錠に続く4剤目となる。
▽マグミット錠100mg(酸化マグネシウム、マグミット製薬)
薬効分類:234 制酸剤(内用薬)、235 下剤・浣腸剤(内用薬)
効能・効果:○下記疾患における制酸作用と症状の改善:胃・十二指腸潰瘍、胃炎(急・慢性胃炎、薬剤性胃炎を含む)、上部消化管機能異常(神経性食思不振、いわゆる胃下垂症、胃酸過多症を含む)、○便秘症、○尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防
薬価:100mg1錠12.70円(1日薬価:66.80円)
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数6.5千人、販売金額0.44億円
加算:小児加算(A=5%):「本剤は小児に係る用法・用量が明示されていること等から、加算の要件に該当する。酸化マグネシウムは臨床現場で既に小児に対して使用されている薬剤であること、小児適応を有する便秘症治療薬である既収載品が複数存在していること等を踏まえ、加算率は5%が妥当である」
新薬創出等加算:該当する(主な理由:小児加算適用)
費用対効果評価:該当しない
小児用量が追加された。100mg錠は新剤形となる。小児の用法・用量は、緩下剤として使用する場合として、「通常、1歳以上の小児には酸化マグネシウムとして、1日20~80mg/kgを食後の2回に分割経口投与する」。
▽ヨビパス皮下注168 µgペン、同皮下注294 µgペン、同皮下注420µgペン(パロペグテリパラチド、帝人ファーマ)
薬効分類:243 甲状腺、副甲状腺ホルモン剤(注射薬)
効能・効果:副甲状腺機能低下症
薬価:
168μg0.56mL1キット 57万1509円
294μg0.98mL1キット 58万4139円
420μg1.4mL1キット 59万6310円
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数1.2千人、販売金額129億円
加算:
有用性加算(II)(A=5%):「本剤は、副甲状腺機能低下症の効能・効果を有する初めての医薬品であり、既存の活性型ビタミンD3製剤及びカルシウム製剤による治療では腎機能障害のリスクが課題となっているのに対し、承認審査において、腎機能障害を合併する副甲状腺機能低下症患者に対して本剤の投与は可能と評価されていることから、有用性加算(II)(A=5%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=10%):「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
なお、製造原価開示度50%未満のため、加算係数はゼロ。
新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当する(H1)
副甲状腺ホルモン(PTH)の徐放性プロドラッグ。用法・用量は「通常、成人には、PTH(1-34)として1回18μgを開始用量とし、1日1回、皮下注射する。以後、患者の血清カルシウム濃度の十分な管理のもとに、1日1回6~60μgの範囲で適宜用量を調整して皮下投与するが、増量又は減量は3μgずつ行うこと」。
1日1回皮下投与で、24時間にわたり血中PTH濃度を生理学的範囲に維持できる国内初の薬剤となり、根本的な治療薬として期待されている。対象疾患とする副甲状腺機能低下症は、体内のカルシウムとリン酸のバランスを調整するPTHの不足によって引き起こされる内分泌疾患。
デンマークのアセンディス・ファーマ社からの導入品。海外において、2023年11月に欧州で承認されて以降、25年5月現在、米国及び英国を含む31カ国で承認されている。
▽スピジア点鼻液5mg、同7.5mg、同10mg(ジアゼパム、アキュリスファーマ)
薬効分類:113 抗てんかん剤(外用薬)
効能・効果:てんかん重積状態
薬価:
5mg0.1mL1瓶 8336.50円
7.5mg0.1mL1瓶 9337.60円
10mg0.1mL1瓶 1万120.00円(1日薬価:1万120.00円)
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数7.0千人、販売金額5.3億円
加算:
有用性加算(II)(A=10%):「本剤は、てんかん重積状態に対する病院前治療(薬物療法)及び静脈ルートが確保できない場合の新たな治療選択肢の一つという臨床的位置づけであり、18歳以上の患者においては、てんかん重積状態に対する静脈ルートが確保できない場合や医療機関外で投与できる初の治療選択肢となること、添加剤による製剤工夫により、ジアゼパム注射剤より投与時の侵襲性が著しく軽減されることから、有用性加算(II)(A=10%)を適用することが適当と判断した」
市場性加算(I)(A=15%):「本剤は希少疾病用医薬品に指定されていることから、加算の要件を満たす。病院前治療を想定した本剤は開発が難しいところ、各被験者の介助者(保護者)により治験薬が投与される小児を対象とした国内試験を実施したことから、加算率は15%が妥当と判断した」
新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用医薬品として指定)
費用対効果評価:該当しない
ベンゾジアゼピン系薬剤。有効成分のジアゼパムは注射剤などの剤形でてんかん発作時の治療薬として日本の医療現場で約60年使用され、坐剤は医療機関外においても患者や介護者などにより使用されてきた。今回、国内初の経鼻投与型抗けいれん薬となり、また成人では初の医療機関外で投与可能なレスキュー薬となる。
用法・用量は「通常、成人及び2歳以上の小児には、患者の年齢及び体重を考慮し、5~20mgを1回鼻腔内に投与する。効果不十分な場合には4時間以上あけて2回目の投与ができる。ただし、6歳未満の小児の1回了は15mgを超えないこと」。
▽セタネオ点眼液0.002%(セペタプロスト、参天製薬)
薬効分類:131 眼科用剤(外用薬)
効能・効果:緑内障、高眼圧症
薬価:0.002%1mL 800.00円(1日薬価:40.00円)
市場予測(10年後):投与患者数148千人、販売金額36億円
加算:なし
新薬創出等加算:該当しない
費用対効果評価:該当しない
FP受容体作動作用に加え、EP3受容体作動作用を有する新規メカニズムのプロスタグランジン系治療薬。セペタプロストはプロドラッグであり、点眼後は主に角膜中で速やかに加水分解され、FP受容体及びEP3受容体に対して結合、刺激することで房水流出を促進し、眼圧下降作用を示すと考えられている。既存のFP受容体作動薬を上回る眼圧下降作用を期待して開発された。用法・用量は「1回1滴、1日1回点眼する」。