日本リリー ヤングケアラーの勉強会に行政、企業ら500人が参加 社会全体で考えるきっかけに
公開日時 2025/10/06 04:50

日本イーライリリーは9月26日、ヤングケアラーに関する社内勉強会を開催し、同社社員に加え行政・民間企業などから500人以上が参加した。講演した子ども家庭庁支援局虐待防止課の古藤雄一氏は、「ヤングケアラーという言葉から、我々大人や社会が子どもにしっかりと目を向けられているか振り返るきっかけとしてほしい。家族の中に存在する、あるいは家庭に必要になってくるケアについて、社会全体で自分のこととして一緒に考えていただきたい」と呼びかけた。
勉強会は、同社の取り組むヤングケアラーを取り巻く環境改善に向けた活動の一環。ヤングケアラーへの知識を深めるとともに、国の動向や課題について学び、認知啓発を広げる目的で実施された。子ども家庭庁や支援団体、民間企業などからも20人以上が参加し、講演や意見交換などを行った。
◎勉強や部活動の時間確保できず「就職先を選べない、収入を自分以外のために使う」ことも
古藤氏はヤングケアラーの抱える状況について、「家族のケアによって自分の時間を持てず、勉強や部活動などに参加する時間を確保できない」と説明。その結果として、「年齢が進むと自分で就職先を選べない、収入を自分以外のために使わないといけないということも起こってくる」と指摘した。また、共働き世帯や高齢者数の増加などにより、「社会や環境が変化した結果として、子どもや若者に負担が生じやすくなっている」と現状を分析した。
そのうえで、「実際に家庭に介入し、状況を把握するというのは本当に難しい。ヤングケアラーに気づくことに関して、教育現場や学校との関わりはできてきつつあるが、医療と福祉の連携や関わりを接続させていくことがこの先重要だと感じている。少しでも子どもを守れる大人の仲間を増やしていきたい」と呼びかけ、支援の輪を広げていく必要性を述べた。
◎疾患抱える子どもの兄弟にも目を 子どもに日々声かけで打ち明けるきっかけに
日本イーライリリー研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部の坂口佐知チーフメディカルオフィサーは、自身の小児科医としての経験を踏まえ、「小児科にくるお子さんが重い病気で診断された時に、必ず兄弟はいらっしゃいますかと聞く」と明かした。さらに、退院後に疾患を抱える子どもの兄弟が心理的にも負担を抱える状況に置かれることにも心を配る必要性を指摘した。
ヤングケアラーの支援を行うNPO法人・ふうせんの会事務局長代理の西川ゆかり氏は、「ヤングケアラーという言葉は浸透してきているが、心ない言葉をかけられてしまって、傷ついた経験があるという子どもたちもまだ少なくない。周囲の大人への周知も必要だ」と語った。支援への第一歩としては、「“元気にしている?”、“何かあったらいつでも言って”など、声をかけることで、子どもたちも気持ちを打ち明けてくれるかもしれない。コミュニケーションを日々取っていくことは、困っているヤングケアラーを見つけるポイントだと思う」と、普段からの声かけの重要性を訴えた。

同社では2022年からヤングケアラーへの取り組みを行っており、今年で4年目となる。シモーネ・トムセン代表取締役社長が9月22日に関西学院高等部へ図書の寄贈に訪れるなど、継続的な取り組みを行っている。