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川崎市立多摩病院

公開日時 2007/09/30 00:00

増原 慶壮 薬剤部長

病院data

・病床数 376床
・1日患者数 
  初診 151人
  再来 471人
  入院 301人
・院外処方率 88.4%
・採用品目数 1287品
 うち後発品採用率
  品目ベース 4.3%
  金額ベース ――
・平均在院日数 12.8日
・紹介率 21.8%

聖マリ本院との連携で
臨床薬剤師を育成

 

●聖マリのノウハウを導入

 川崎市立多摩病院薬剤部は部長を含めて16人体制。臨床に精通する薬剤師によるファーマ・シューティカルケアの実践を標榜していることもあり、すべて正規職員によるスタッフ構成を重視している。同施設は川崎市が設営主体だが、聖マリアンナ医科大学が同施設の指定管理者となって施設運営を担う。
 「施設などのハードは市が提供しているものの、スタッフを含めた運営は聖マリアンナ医科大学が受け持っている」といい、重症緊急症例や緊急手術の発生などの想定外の症例に対して、同大学のバックアップを受けられることから、その地域医療を担う機能が格段に向上している。同大学薬剤部の増原慶壮部長が、同施設薬剤部部長を兼任するが、普段は坂下裕子課長が部長の代行を務める形だ。
 チーム構成は部内の垣根をなくして、すべてのスタッフがお互いの業務を補完できる、マルチスタッフの育成を目指しているため、縦割りのチーム色をできる限り出さないように配慮している。例えば、6病棟に各1人の専任を配置するが、その他のスタッフも臨機応変にバックアップする仕組みだ。
 「367床規模の施設を16人で担当するにはチーム制よりも、お互いが足りない部分を補っていくようにした方がこの規模では適切で効率的な行動をしやすい」
 月平均の服薬指導件数は530件、目標は700件に置いている。循環器科、呼吸器科、消化器・肝臓内科、腎臓・高血圧内科、代謝・内分泌内科などで件数が多くなっている。電子カルテシステムにSOPシステムも含まれることから、同システムを活用して標準化した指導ができる。また、SOPやTDMに関しては、同大学附属病院と共同で研修会も開催し、スタッフのスキルアップを図っている。
 「附属病院薬剤部に勉強会研修委員会があり、そこで新人やスタッフ向けの教育計画を策定しています。研修会では、症例をあげてディスカッションをしながら、臨床現場での薬物治療法を習得しています」
 研修会のディスカッションで提示される課題は、「初面談で患者の不安に対応するシーン」などがある。例えば患者から寄せられる相談の想定は次のようなものだ。
 「乳がんと診断されてからなんか眠れなくなりました。これまで眠れないことはなかったのですけれども。先生にお伝えしたら薬(マイスリー5mg)を飲んでみたら? と処方していただいたので飲み始めました」。
 これに対して、化学療法施行日のSOAPを、乳がんの治療までの流れを大まかにつかみ、化学療法施行にあたってのチェック項目、副作用対策、患者指導のポイントをまとめて記述することを課題にしたり、同施設採用の睡眠薬について、薬剤の特徴をまとめて、ディスカッションをして理解を深めるようにしている。
 「米国で実施されている臨床薬剤師を育成する方式を模倣し、薬物治療の基本的な考え方を身につけることができるようにしている」
 同様にTDMについても、同大学病院と共同の研修会を開催し、全員がTDM業務を担当できるように、薬物治療のパートナーとしての人材の育成に注力している。

 

●半期未処方薬は削除

 採用数は開院当初は1400品目程度だったものを、100品目以上削減し、現在では1287品目にまで減少させた。1増・1減が基本であるものの、薬事委員会の規定に半期の間に処方がなかった薬剤については削除する方針が明記されていることから、同規定に抵触する薬剤は削除している。そのため、薬剤の絞り込みは順調に進展している。
 新規採用方針としては、医療上必要と認められる薬剤は基本的に採用するが、上市後6ヵ月間を経過しないと薬事委員会への申請はできない。ただし、画期性や有用性加算などが認められた新薬の場合は、上市直後でも申請が可能。その他については市販直後調査終了後に受け付ける。
 採用プロセスは①薬剤部長への申込②薬剤部によるヒアリング③宣伝許可④MRの院内での宣伝活動⑤薬事委員会での審議―の手順を踏まえる。薬事委員会は年6回、奇数月に開催し、構成メンバーはドクターに看護部や事務部門の担当者を加えて、総勢20人。同委員会へは診療部長承認の下に申請する。②の薬剤部によるヒアリングは、MRから薬の基本情報を収集し、施設にとって必要な薬剤かを事前に判断するもの。その実施については「つきあい上の採用など、医療上の目的以外の採用をしないため」と説明する。
 昨年1年間に採用した薬剤は、ザイボックス(ファイザー)、クレストール(アストラゼネカ)、プラビックス(サノフィ・アベンティス)、ユリーフ(キッセイ)、ベシケア(アステラス)など39品目。削除はベイスン0.3mg(武田/2規格存在)、ムコソルバンDS(帝人ファーマ/シロップとオーダー間違い)、ハルシオン(ファイザー/供給不備)、ロイコボリン(ワイス/供給不備)など76品目。この結果、採用数は37品目減となった。
 一方、GEはマグセント(東亜薬品)、トリアゾラム(サンノーバ)、生食シリンジ(大洋薬品)などで、現在57品目。注射剤から導入を進め、品目ベースで10~15%を目指す。地域の患者意識も変化の兆しが表われているという。
 「川崎市が実施したあるアンケート調査によると患者の70%はGEでも構わないと思っているそうです。当施設でも患者さんからGEへの切り替えの要望が時々あります」
 同施設においてもGEについての電話での問い合わせが寄せられるなど、患者の関心は高まりつつあるようだ。

 

●MR増員は医療コスト上昇を招く

 増原部長は日本のMR数について多いという。それは次の理由からだ。「当然MRを維持するのに必要なコストは企業が負担し、それらは薬剤価格のなかに含まれます。結局、国民や患者が負担しているとの結論になります。国民経済から見れば、MR数が増えれば増えるほど薬剤価格の上昇を招き、国民医療費を逼迫させるという悪循環を招きます。純粋な情報提供をベースにするならば、5万人以上のMRが本当に必要なのか、疑問を抱かずにはいられません。EBMに基づいた情報提供が大切であり、これを基本に据えれば、多くのMRを抱える製薬大手でさえも700人程度で情報提供活動はできると思います」
 訪問規制は、薬剤部が完全アポイント制、医局はアポイント制であったが、現在は訪問許可時間を設けて、自由に面会できるようになっている。
 製薬業界に対しては、次のような要望を寄せる。「JANコード、YJコードの変更内容の案内が不統一であることから、業界統一の規格での告知してほしいと思います」。
 納入卸は広域大手卸のスズケン、クラヤ三星堂、アルフレッサ、東邦薬品の4社。多頻度配送を活用するため、在庫は5~7日程度。在庫金額は庫内医薬品の実消化分のみを計上する「バルブ方式」を採用するため、ゼロとなる。

 

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