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卸連・宮田会長 仏の公定マージン制、持続可能な流通に「殆ど良いことない」 民間大手卸は1社に

公開日時 2026/04/24 04:50
日本医薬品卸売業連合会(卸連)は4月23日、「日仏の医薬品流通制度の比較と安定供給について」と題する調査レポートを公表した。フランスは国民皆保険を取り入れている一方、医薬品の取扱いでは卸の公定マージンや薬局への割引率を政府が厳格に定め、罰則もある。調査レポートでは、公定マージンやインフレによる人件費・車両関連費のコスト高騰により、卸の本業である物流による収益性は「著しく低下した」と指摘。民間大手卸は現在、実質1社(調査時点では2社だが、1社はTOB手続き中)だとした。このフランスの現状から「単なるマージンの公定化だけではインフレや安定供給への対応が不十分であることは明らか」と結論付けた。

国民皆保険のフランスと日本は様々な制度で比較されやすく、フランスの公定マージン制は医薬品流通や医薬品卸の収益を安定化させるとみる向きがある。これに卸連の宮田浩美会長(スズケン会長)は同日の定例会見で、「『公定マージン』という言葉だけが独り歩きしている。調査の結果、卸だけでなく薬局にとっても殆ど良いことはなかった」と強調した。フランスの医薬品卸の取引先薬局数は、厳格な割引制限やコスト増などにより、この数年で約2000軒減の2万500軒になった。卸連は、海外事例も参考に、日本の医療体制や医薬品卸の機能に即した持続可能な流通の仕組みを検討すべきとしている。

◎公定マージン6.93% マージンの「上限額」が逆ザヤを招く

調査レポートによると、医薬品卸の公定マージン率は製薬企業の出荷価格(PFHT)の6.93%。ただし、4.33ユーロ未満の低価格品には下限額(0.3ユーロ)がある一方、468.97ユーロ以上の高額品には上限額(32.5ユーロ)がある。

このマージン構造について卸連国際委員会の福神雄介理事(アルフレッサ社長)は、低価格品の下限額の設定は「流通が安定的になり非常にポジティブ」と評価する一方、高額で保冷などが必要な製品は上限額によりコスト高を吸収できず逆ザヤが生じる課題があると説明した。レポートでも、逆ザヤ製品は「(医薬品卸が)取り扱わないことがある」としている。

さらに現在の公定マージンは21年2月に設定されたもののため、「流通コストの上昇分を補うのに不十分であり、追加コストを卸売業者が負担している」と実態を報告している。

薬局への割引率も厳格に管理され、特許品はPFHT(製薬企業の出荷価格)の最大2.5%、後発品は最大40%(バイオシミラー 2.5%)と規定されている。売買取引において公定マージンや割引率を遵守しない場合は罰金、営業停止、公的命令などの罰則があり、報道機関にも伝えられる。

◎厳しい義務と利益制限 民間自律運営の大手卸は1社に

フランスでは卸売業ライセンスを取得するため、▽フランスで販売される医薬品の銘柄の少なくとも90%を在庫する、▽最低2週間分、通常3週間程度の在庫を保有する、▽注文から24時間以内にあらゆる医薬品を配達する――などの要件を満たす必要がある。利益を厳しく制限される一方、急配参加などを義務化している。

こういった国による統制に伴う利益率の低下により、22年に7社あった主要卸(卸経由市場シェア:7社合計で約97%)は合併などで23年に5社(同5社合計で約96%)に集約された。この5社のうち2社は民間企業、3社は薬剤師の協同組合だという。民間企業2社のうち1社はTOBの手続き中のため、事実上、自律的に運営できる民間大手卸はPhoenix OCPの1社のみだ。

レポートでは、「フランスの医薬品流通に係る極度に統制が効いた制度において、医薬品卸売事業単体では事業継続に支障をきたしかねないことが明らかになった」としている。

◎ドイツなど高薬価市場へ並行輸出する「ショートライン卸」 国内の安定供給を阻害

さらに、割当品(医薬品不足を管理し、地域間で公平に分配するための製薬企業申告する品目)の増加や、フランス国内で仕入れた医薬品をドイツなど高価格市場へ並行輸出する「ショートライン卸」の存在も問題視されている。製薬企業はショートライン卸を含むすべてのライセンス卸と取引する義務があるため、輸出目的の卸にも医薬品が渡り、フランス国内の供給不足及び安定供給を阻害する悪循環に陥っているという。ショートライン卸はフランス医薬品市場(卸経由市場)の5%程度を占め、企業数は増加傾向にある。

◎福神氏 現地卸も日本への公定マージン導入に「反対」

フランスで現地調査を行った福神理事は会見で、現地の医薬品卸との情報交換で、日本への公定マージン導入の是非を聞いた際、明確に「反対する」と言われたエピソードを紹介した。さらに、「公定マージンはマージン率が分かっているため予見性は高い。しかし、それは悪い業績の見通しだ」との現地での皮肉なやり取りも明かした。

◎島氏 公定マージンは「魔法の杖ではない」 国民の不利益招く恐れ

国際委員会の島宏幸担当理事(鍋林社長)は、公定マージンが「卸産業や流通コストを安定させる魔法の杖」のように期待されがちである点に警鐘を鳴らした。「実態は、非常に難しい調整に追い込まれて流通が滞り、並行輸出による医薬品不足まで起こっている」と指摘。こうした制度の歪みが最終的に「フランス国民の不利益につながっている」との見方を示した。

そして、公定マージンは持続可能な流通を築くための「魔法の杖ではない」と改めて断じ、今回の調査レポートが日本における医薬品の安定供給や、流通の質の確保に関する議論を活性化させる一助になることに期待を寄せた。
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