国立がんセンター 膵がん早期発見へ、たんぱく質4種が特異的に増殖
公開日時 2006/10/02 23:00
国立がんセンター化学療法部の山田哲司部長は、少量の血液を用いた質量分析
による血漿プロテオーム解析により、膵がん患者の腫瘍マーカーを開発した。
研究成果は日本癌(がん)学会学術総会で発表され、がん検診に応用可能性が
あることが報告された。早期発見を可能にする新規血液診断法として期待され
る。
膵がんは5年生存率は10%にも満たず、死亡数はこの20年間で2.5倍に急速に
拡大。早期診断は難しいが、早期(ステージ1、2)で見つかれば5年生存率
は50~60%に上昇する。早期発見に役立つ診断用バイオマーカーの開発が求め
られている。
山田氏らの研究では、膵がん患者71例、これらの患者と年齢、性別が完全に一
致した健常人71例から少量の血液を採取し、両者のプロテオームの違いを調べ
た。その結果、膵がん患者に特異的に増殖する4種類のたんぱく質を発見。さ
らに142例以外に、78例に対するブラインド解析を加え、91%以上の高い精度
でがん患者と健常人を判別できることを確認した。患者の中には、12人のステ
ージ1、2期の患者が含まれ、12人のうち10人までがこの診断法で検出できる
など、早期症例を含め新規血漿腫瘍マーカーの開発に成功した。
既に第2段階の検証を終え、第3段階の研究として多施設共同研究を今年から
開始。福岡大学病院、大阪府立成人病センター、大阪医療センター、東京医科
大学病院、自治医科大学病院と共同研究を実施中で、「3年間で4桁の症例を
集めて研究していきたい」という。
がん検診への応用法としては、▽膵がんの早期発見率の向上(治療成績の向上)
▽精密検査を受ける人を絞る(検診の効率化による医療費の削減)▽どこの医
療機関でも採血できる(医療の全国均てん化)――などが期待できるという。