アステラス製薬・岡村社長 「iPSで再生医療は新たな段階に入った」社会実装へ産官学連携強化を 同社シンポ
公開日時 2026/03/30 04:50

アステラス製薬の岡村直樹代表取締役社長CEOは3月24日、同社が主催した再生医療分野のシンポジウムで、「日本初の多能性幹細胞由来の細胞医療を世界に先駆けて社会実装するために、産官学連携の一層の強化に努めたい」と意気込みを語った。同社は再生医療を重点領域に掲げ、社会実装に向けた取り組みを推進している。岡村社長は再生医療に関するイベント開催の意義について、「新たな出会いと活発な意見交換で、患者さん、再生医療の未来に向けた共創へつながることを願う」と語った。
アステラス製薬は未来医療推進機構と共同で、「Astellas Regenerative Medicine Symposium 2026 “Turn Innovative Science into VALUE for patients」を同日、大阪「中の島クロス」で開催した。同イベントは、再生医療の未来にフォーカスし、製薬企業やスタートアップに加え、医療事業者や政府・支援機関、さらには患者視点も含めた多様なステークホルダーが集い、再生医療の商業化の可能性や、「産業」として成立させるための視点や課題の共有などを目的に議論が行われた。
岡村社長はイベントの冒頭で、「iPS細胞に由来する2つの再生医療等製品に厚生労働省が世界で初めて製造販売を承認したことは、日本の再生医療が新たな段階に入ったことを示す大きな節目だ」と強調した。アステラス製薬は10年以上にわたり再生医療を研究開発戦略の中枢に据えており、その成果について岡村社長は、「臨床試験を通じて治療の安全性と有効性を確かめる重要な段階に差し掛かっている」と強調した。
一方で、細胞医療を安定供給にはなお多くの課題が残るとし、「一当事者が単独で解決することは不可能だ。私たちが10年かけて蓄積した知識や経験を共有し、イノベーションのさらなる加速を試みる」と述べ、産官学連携の重要性を訴えた。
◎製造の“死の谷”克服へ Maholo活用
セラファ・バイオサイエンスの山口秀人代表取締役社長は、細胞医療の製造について、「プロセスがプロダクトそのものである」と説明した。研究から製造に移行する過程では、プロトコルが再現できない場合にプロセスを改善しなければならず、「ループを繰り返して進まない、細胞薬品製造における“死の谷”がある」と山口社長は指摘する。「そのボトルネックを改善するにはどうしたらいいかが、会社をつくったモチベーションの一つだ」と語った。
アステラス製薬は汎用ヒト型ロボット「Maholo(まほろ)」を活用した再生医療等製品の製造プラットフォーム開発を手掛けている。Maholoの強みとして、片腕に7つの軸を備えていることで柔軟性が高く、人を擬態した動きが可能である点を挙げた。さらに、「熟練者のスキルをデジタル化して暗黙知を形式知に変える技術」を備えており、全ての動きを細かくパラメーターで設定できると強調。これにより、「研究と製造プロセス開発の融合」と「研究で使ったロボットを実際に製造に使うこと」を実現し、開発期間を少なくとも1年から3年短縮できる可能性があるとした。
同社は従来のCDMOではなく、PRDMO(Partnership・Research・Development・Manufacturing)型のビジネスモデルを目指している。山口氏は、「日本から世界へ再生医療製造の新基準をということを目標にして、ロボットをGMPで運用することも含め新しい基準を作っていく」と意欲を示した。
◎産業化へ 課題共有と意識改革を提言
パネルディスカッションでは、未来医療推進機構の澤芳樹理事長が登壇。自身が関わる大阪大学発ベンチャー「クオリプス」で進めるiPS細胞由来の心筋細胞シートについて、「(承認申請は)当たり前の通過点だと思っている」と次のステップへの意欲を示した。中の島クロスについては「僕らの会社が勝つためではなく、みんなが勝てるようにどうしたらいいかを一生懸命やっている。製造のところで大きなブレイクスルーをつくれるようにやっていくのが最大のポイントかもしれないが、すごく難しい」と率直な思いを述べた。
ビジョンケアの髙橋政代代表取締役社長は、「医療者がベンチャーの立ち上げまでやっているのに、そこを企業が受け取ってほしい」と語った。さらに、日本のビジネスの形態にも言及し、「100億の利益が出ないといけないところに集中するビジネスでは医療としてはだめだと思う。スモールビジネスにダウンしてそれをたくさんやるのが日本の勝ち筋で、そうすれば日本でしか治せないことがいっぱいできるはずだ」と述べた。
岡村社長も加わり、「やるべきことをやって、ダメだったらさっさと諦めて次に行こうというマインドセットを持たないと、日本ではスタートアップがちゃんとものを出していくというトレンドができてこないと思う」と指摘。「日本はせっかくいいシーズいっぱいあるので、みんなで石をひっくり返して、いいものが出なかったら捨てることを繰り返していく文化が、中の島クロスでできるといい」と締めくくった。