塩野義セミナー 高齢者の高血圧治療に日本初エビデンス
公開日時 2006/10/29 23:00
高齢者の高血圧治療に関する日本初の大規模臨床試験「JATOS」の結果、少な
くとも収縮期血圧(SBP)を140mmHg台か、それ以下に降圧することの重要性お
よび安全性が示された。従来のガイドラインが推奨する降圧目標を支持すると
ともに、不足していた新たなエビデンスを補足した。10月27日に塩野義製薬が
開いたセミナーで報告された。
日本高血圧学会の後援で日本臨床内科医会を中心に全国1028施設が参加。SBP1
60mmHg以上の高齢高血圧患者(65~85歳)4418人を対象に塩野義のCa拮抗薬ラ
ンデルによる長期効果(2年間)をA群(降圧目標:SBP140mmHg未満)とB群
(140mmHg以上160mmHg未満)で比較した。1次評価項目を脳血管・心臓血管・
腎障害とした。
それによると、両群で1次評価項目に有意差は出なかったものの、二層化解析
の結果から140mmHg未満にした方がリスクが減少することがわかった。2次評
価項目である有害事象に関しても両群に有意差はなく、140mmHg未満に降圧し
た際の安全性が確認された。
大阪大学大学院医学系研究科の荻原俊男内科学講座教授は「高齢者でもSBP140
mmHg未満に管理すべきことが推察されたが、75歳以上の患者に対しては明確に
言い切れない」と述べ、慎重な降圧治療の必要性を説くとともに、さらなる試
験が必要だとの認識を示した。
サブ解析結果からは、メタボリックシンドローム(MS)症例の75歳未満高齢者
に対する積極的な降圧の推奨が示唆された。また、ランデルの腎保護効果も確
認され、心腎連関を介した心血管系保護作用を示すことが期待されるとした。