ネクサバール 因果関係否定できない死亡12例 厚労省は注意喚起指示
公開日時 2009/11/20 04:01
厚生労働省は11月18日、腎細胞がん、肝細胞がん治療薬ネクサバール(一般名ソラフェニブトシル酸)投与後に副作用と疑われる死亡例を含む肝不全、肝性脳症が発症したことを受け、販売するバイエル薬品に対し、使用上の注意を改訂するよう指示した。
同省によると、同剤を投与した肝細胞がん患者で肝不全および肝性脳症が36例、うち死亡例が12例が報告された。中には発症から数日以内で死亡に至った例もあったことから、使用上の注意が記載されている添付文書の改訂が必要と判断した。同社によると、現時点では薬剤と死亡例との因果関係が不明であるとしながらも、今回の指導を機に「医療現場で慎重に使用していただければと思う」としている。
同剤は発売から今年10月末までの約1年7カ月で約3500例の腎細胞がん患者、約2000例の肝細胞患者に投与された。その間、肝不全7例、肝性脳症(肝性昏睡、脳症、代謝性脳症を含む)28例、肝不全・肝性脳症の併発1例(計36例)の報告があった。そのうち、肝不全6例、肝性脳症5例、肝不全・肝性脳症の併発1例(計12例)が死亡している。
肝性脳症28例、肝不全・肝性脳症の併発1例(計29例)のうち、6割強(18例)は投与開始から2週間以内と比較的早期に発現していた。中でも肝不全・肝性脳症ついては、同剤投与開始前に肝機能の障害が軽度な「Child-Pugh分類A」の患者(ネクサバールの投与推奨患者)でも、発現から数日以内で死亡に至った例もあったという。
そのため、添付文書の「重要な基本的注意」の欄に「肝不全」を追加さし、「主に肝細胞癌又は肝硬変のある患者において肝性脳症が報告されているので、これらの患者に投与する際は、血中アンモニア値等の検査を行うとともに、意識障害等の臨床症状を十分に観察すること」と追記。さらに、「重大な副作用」の欄に「肝不全(頻度不明)、肝性脳症(頻度不明)」を新たに盛り込んだ。