PMDA オンデキサの周術期投与で注意喚起 ヘパリン抵抗性で人工心肺装置の使用困難例「多数報告」
公開日時 2025/07/23 04:51
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は7月22日、日本心臓血管麻酔学会など4学会が6月30日にまとめたオンデキサ静注用(一般名:アンデキサネット アルファ)の周術期投与に関する提言を、PMDAホームページなどを通じて周知した。オンデキサはアストラゼネカが製造販売するXa阻害薬の中和剤。提言では、同剤投与によって「高度なヘパリン抵抗性を惹起する可能性がある」とし、ヘパリン抵抗性によって人工心肺装置の使用が困難になる症例が「多数報告されている」と指摘した。そして、Xa阻害薬内服中の患者に対する緊急処置において同剤を「安易に第一選択薬とせず」、緊急手術を含む治療全体の方針を多面的かつ総合的に検討した上で、「その適応を慎重に判断することを強く推奨する」とした。
オンデキサをめぐっては、海外で緊急手術前に同剤が使用され手術中のヘパリン抵抗性を示した症例が報告されていたことを受け、国内承認時より注意喚起されている。しかし、国内の市販後において、周術期に同剤を使用し手術中のヘパリン抵抗性を示した症例が報告され、その一部には人工心肺回路が閉塞し対応に難渋した症例も認められた。このため日本心臓血管麻酔学会は23年9月、ヘパリン抵抗性を示した症例の集積を踏まえた注意喚起を発出した。
4学会(日本心臓血管麻酔学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本体外循環技術医学会)が今年6月にまとめた提言によると、23年9月の日本心臓血管麻酔学会による注意喚起後も「類似の症例が継続して報告されている」。このような状況を踏まえ4学会は、同剤投与により生じうるヘパリン抵抗性について医療現場への一層の周知が必要との認識で一致し、提言の発出に至った。
◎人工心肺中の投与を避け、人工心肺離脱後の止血困難に対する投与判断も慎重な検討を
提言では、▽アンデキサネット アルファの投与は高度なヘパリン抵抗性を惹起する可能性がある、▽アンデキサネット アルファの使用に際しては、多職種による協議を経て適応を決定することが望ましい、▽アンデキサネット アルファを人工心肺中に投与することは避け、人工心肺離脱後の止血困難に対する投与判断も慎重な検討を要する、▽アンデキサネット アルファによって惹起されるヘパリン抵抗性への対応法は確立されていない、▽本提言は、各医療機関内での共有と体制整備を通じて活用されるべき――としている。
なお、提言の中で同剤投与によるヘパリン抵抗性への対応法について、「ヘパリンの追加投与のみでは活性化凝固時間(ACT)の延長を認められないことが多い」とし、「現時点では、アンチトロンビンの単独投与またはヘパリンの併用、あるいはナファモスタットの投与が、ACT延長に一定の効果を示す可能性がある」としている。