ARBバルサルタン投与で発がんリスク上昇せず 4試験のメタ解析より
公開日時 2010/06/30 04:00
ARBのバルサルタンの有効性・安全性を検討した4本の臨床試験を対象にメタ解析を行った結果、ARBのバルサルタンと発がんリスクとの間に関連性がみられないことが分かった。第70回米国糖尿病学会議(ADA)で6月28日に開かれたシンポジウム「Implications of the NAVIGATOR Trial for Prevention of Diabetes and Cardiovascular Disease in Subjects with Impaired Glucose Tolerance」で、Steve M.Haggner氏が報告した。(6月28日 米国・オーランド発 望月 英梨)
ARBと発がんリスクとの関連性をめぐっては「Lancet Oncology」に関連性を指摘する論文が掲載された。それによると、大規模臨床試験に登録され、ARBを投与された3万5015例を対象にメタ解析を行ったところ、悪性腫瘍の発症、肺がんの発症リスク、がんによる死亡などのリスクがARB投与群で上昇することが分かったという。
今回の解析はこの指摘を受け、Haggner氏らは、バルサルタンの大規模臨床試験である「Valiant」「VALUE」「Val-Heft」「NAVIGATOR」の4本の臨床試験でARBを投与された2万4455人を対象にメタ解析を行った。解析は、Mantel-Haenszel解析を用いた。
その結果、悪性腫瘍や詳細不明な腫瘍の発生率は、バルサルタン群で5.95%(1454例/2万4455例)、非バルサルタン投与群で7.63%(1493例/1万9570例)だった(P値=0.020、ハザード比:0.92[95%CI:0.86~0.99])。
肺がんの発生率については、バルサルタン群で0.61%(149例/2万4455例)、非バルサルタン群では0.97%(189例/1万9570例)だった(P値=0.003、ハザード比:0.72[95%CI:0.58~0.90])。
がんによる死亡は、バルサルタン群で1.58%(386例/2万4455例)、非バルサルタン群で1.82%(357例/1万9570例)だった。(P値=0.333、ハザード比:0.93[95%CI:0.81~1.08])
いずれの解析もバルサルタン群で少ない傾向を示したことから、Haggner氏は「バルサルタンと、がんの発生やがんによる死亡との関連性を示すエビデンスはない」と結論づけた。