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資産があるから

公開日時 2010/07/06 04:00

 昨年退職したSさんは、再就職を急ごうとしなかった。その理由は…。

 

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営業職Sさん(25歳)は昨年暮れに会社を辞め、2ヶ月前から我々のところで転職活動をしている。離職して半年以上になるのだが、Sさんはなぜか、のんびりマイペースのままだった。

 

「先日送っていただいた、求人のリストですが、受けてみたいのは『オススメ』になっていた1社だけですね。あとは見送りにしようと思います」
「どれも希望のメーカーばかりですよ。もう、あまり採用している会社も残っていませんし、積極的に応募していかないと、再就職は厳しくなるばかりですよ」
我々はSさんを何度もせっついているのだが、彼には何を言っても響かず、2週間に1回で応募するかどうかというペースが続いていた。

 

「Sさん、そろそろ離職して半年。キャリアのブランクを長くしても、何の得もありませんよ」
「はい。でも焦って失敗したくないですし…」
「もちろん、焦る必要はありません。でも、もっと行動的にならないと。色々な会社を実際に見て、そのなかで選びましょう」
「はぁ」
「Sさんはひとり暮らしでしたよね。経済的にもそろそろ厳しくなってくるんじゃありませんか?」

 

我々がそう言ったとき、電話の向こうのSさんは少しタメをつくり、それから「お話しするつもりはなかったんですけど」と前置きして、「経済的にはまったく困っていないんです」と話をはじめた。

 

Sさんは大学時代、個人の金融取引(いわゆるデイトレード)にはまり、かなりの儲けを出していた。金融危機が起きたのは、就職して仕事が忙しくなりデイトレードを卒業したあと。幸運に恵まれ、損害を最小限に抑えたSさんの手元には、数千万円の預金が残っていた。
「ですから、すぐに困ることはないですし、良い会社があれば就職しようという気持ちなんです」
Sさんは余裕綽々(しゃくしゃく)の声でそう言った。

 

なるほど、Sさんが焦燥感とは無縁でいられるのは、この資産のお陰だったか。我々は少し納得がいったのだが、これでSさんへのアドバイスを止めるわけにはいかなかった。

 

Sさんのように財産がある人だけでなく、実家にパラサイトしている離職者にも「ゆっくり、じっくり再就職」という人は多い。だが、当面の破綻がないだけで、「キャリア」という観点で考えると、これは危険な兆候。
キャリアのブランク(離職期間)が半年を越えるようになると、若気の至りでは済まされなくなってくる。再就職先はどんどん限定的にならざるを得ない。数千万円という金額は確かに大きいが、キャリアの長期ブランクは、生涯年収で考えれば、その差を簡単に埋めかねないほどのハンデなのだ。

 

カネだけではない。仕事は人生を豊かにしてくれるもの。むしろ、経済的心配がないなら、野心的なベンチャー企業にチャレンジしてみるといった気概があっても良いはずなのに、Sさんは大手志向一辺倒だ。
多額の預金があるからこそ、Sさんは金銭面を気にせずやりたいことができるはず。「やりがいのある仕事こそ、人生の資産」といったら青臭すぎるかもしれないが、Sさんに気づいて欲しいのは、正にそのことなのだ。
Sさんのような人がいる一方で、やりたいことがあるのに金銭面や家族の事情であきらめなければならない人がいる。何とかこんな不条理を変えられないかと思う我々なのであった。
 


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