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【解説】ダビガトラン登場で抗凝固療法は変わるか?

公開日時 2010/09/21 04:05

 「(新規抗凝固療法の)足音が聞こえてくる…トツ、トツ、トツ…」――。9月19日に東京国際フォーラムで開かれた日本心臓病学会学術集会の中で講演した心臓血管研究所の山下武志氏は、2011年にもダビガトラン エテキシラート(以下、ダビガトラン)の国内承認が見込まれるとした上で、同剤が臨床現場に登場することの期待感をこう表現した。(望月英梨)


ダビガトランは、経口直接トロンビン阻害剤と言われる新規作用機序の薬剤だ。血液凝固カスケードの下流にあるトロンビンを可逆的に阻害する。トロンビンは、血栓形成を促進することから、これにより、抗凝固作用を示す。現在、開発が進められているファクターⅩa阻害剤よりも下流に作用部位がある。治療域が広く、血中モニタリングの必要性がないことや、肝臓の薬物代謝酵素の影響を受けづらいこと、早期の効果発現などが期待されている。


現在、臨床現場用いられている抗凝固薬がワルファリンだ。昨年発刊された「脳卒中治療ガイドライン2009」でも、心房細動を原因とした脳梗塞が含まれる心原性脳塞栓症については、その効果の高さからワルファリンが第一選択薬として推奨されている。


抗血小板薬と抗凝固薬は、脳卒中の発症要因により、使い分けられている。脳卒中の発症は、心房細動など「心原性」と「非心原性」の2つに大別される。非心原性にはアスピリンやクロピドグレル、シロスタゾールなど抗血小板薬が、心原性には抗凝固薬の投与が求められている。これは、心原性脳塞栓症については、「ACTIVE-W」などの大規模臨床試験の結果から、抗血小板療法の効果が抗凝固療法の効果を上回ることができないことが分かってきたためだ。


しかし、現在のところ、ワルファリンの投与は半数にとどまり、多くの患者に抗血小板薬が投与されているのが現状という。この原因となるのが、ワルファリンの使いづらさだ。出血リスクがあることから、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)をモニタリングしながら、効果と安全性のバランスが取れた至適用量を定めることが求められる。ただ、年齢など個人差も多く、この至適用量の決定が難しいとされている。加えて、出血リスクが高まることから、手術や抜歯時の対応が難しいとの声もあり、専門医でなければ十分なコントロールが難しいとの声もある。


また、納豆、クロレラ、青汁、抹茶などの食物や、薬物の影響を受けることなどから、患者のコンプライアンスを維持することも難しいとされている。このような中で、安全性の高い薬剤の臨床現場への登場が待たれているのだ。


◎「RE-LY」試験がもたらすインパクト


ダビガトランの臨床第3相試験である「RE-LY」試験は、日本人約300人を含む1万8113人の弁膜症性心房細動患者を対象に実施された。▽ダビガトラン110mg×2/日投与群(以下、低用量)6015人▽ダビガトラン150mg×2/日投与群(以下、高用量)6076人▽ワルファリン(INR:2.0~3.0、日本人70歳以上では2.0~2.6)投与群6022人――の3群に分け、治療効果を比較。主要評価項目は、有効性を脳卒中(出血性を含む)と全身性塞栓症の発症率。安全性を出血イベント、肝機能、その他の有害事象とした。


試験結果では、主要評価項目(有効性)の発症率は、ダビガトラン低用量群で1.53%/年、高用量群で1.11%/年、ワルファリン群では1.69%/年で、ダビガトラン高用量群ではワルファリン群に比べ34%のリスク減少効果を認めた。


一方で、抗凝固作用の強さと出血リスクとの関連性が指摘される中で、出血リスクの増加が懸念される。だが、臨床第3相試験では、重大な出血は低用量群で2.71%/年、高用量群で3.11%/年でワルファリンの3.36%をいずれも下回った。また懸念された頭蓋内出血の発症率もワルファリンを下回る結果となった。


また、2010年3月に米国・シカゴで開催された米国心臓病学会(ACC)で報告されたデータによると、「CHADS2スコア」に依存しない効果も示されている。CHADS2スコアは、C(心不全、1点)、H(高血圧、1点)、A(75歳以上、1点)、D(糖尿病、1点)、S(脳梗塞、2点)からなり、心房細動患者の塞栓症のリスクを評価するツールとして世界的に用いられている。つまり、塞栓症の発症リスクによらず、一定の効果が得られるということだ。


ファクターXa阻害剤には、CHADS2スコアが0~1点の比較的塞栓症の発症リスクが低い患者のデータが現在のところないとされている。


◎抗凝固療法は間もなく夜明けを迎える


2010年8月にスウェーデン・ストックホルムで開催された欧州心臓病学会では、日本人は含まれていないが、アピキサバンの臨床第3相試験「AVERROES」が公表された。11月に米国・シカゴで開かれる米国心臓協会(AHA)ではリバロキサバンの臨床第3相試験「ROCKET-AF」が公表される。いずれも日本人は含まれていないが、世界的にも抗凝固療法は大きく変わろうとしている。


ファクターXa阻害剤かプロトロンビン阻害剤か、それとも従来通りワルファリンを用いるべきか――。作用機序が異なる上に、特に日本人は出血リスクが高いと言われるだけに、今後は日本人を対象とした臨床現場でのエビデンス構築が重要になる。いずれにしても、抗凝固療法は間もなく夜明けを迎える。今後のエビデンス集積、治療方針の確立が、患者に大きな福音を与えることに期待したい。

 

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