【AHAリポート】EMPHASIS-HF エプレレノン投与で収縮期心不全患者の死亡、入院リスクともに減少
公開日時 2010/11/15 09:00
収縮期心不全患者を対象に、アルドステロン拮抗薬・エプレレノンを投与したところ、心血管死亡と心不全による入院の発生を37%抑制したことが、同剤のフェーズⅢB試験「EMPHASIS-HF」の結果から分かった。EMPHASIS-HF Study GroupのFairez Zannad氏が米国心臓協会(AHA)2010年学術集会で11月14日に開かれた「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで報告した。
試験は、軽症の収縮期心不全患者に対し、エビデンスに基づいた標準療法にエプレレノンを追加投与することで、臨床転帰を改善するか検討することを目的に、日本を除く世界29カ国272施設で実施された。中間解析の結果、エプレレノン投与群で、有意に主要評価項目の発生率を低下させていることが示されたことから、独立安全性データ監視委員会により、2010年5月25日、試験は早期中止された。試験期間は、2006年3月30日~5月25日。
対象は、①NYHA心機能分類でⅡ度(心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの)②左室駆出率(EF)<30%(EFが30~35%であればQRS>130msec)③推奨量または最大用量のACE阻害薬、ARB、β遮断薬で治療されている④心臓疾患により6カ月以上入院している――55歳以上の収縮期心不全患者2737例。
①エプレレノン25~50mg投与群1364例②プラセボ投与群1373例――の2群に分け、治療効果を比較した。エプレレノン群では、25mg1日1回から投与をスタートし、試験開始4週時点で50mg1日1回投与に増量することを可能とした。主要評価項目は、心血管死亡+心不全による最初の入院の複合エンドポイント。追跡期間(中央値)は21カ月。
◎心血管死亡+心不全による入院を37%抑制
その結果、主要評価項目の発生率は、プラセボ群の25.9%に対し、エプレレノン群では18.3%で、エプレレノン群で有意に37%発生を抑制した(ハザード比:0.63、95%CI:0.54~0.74、P値<0.001)。
総死亡は、プラセボ群の15.5%に対し、エプレレノン群では12.5%で、エプレレノン群で有意に24%抑制した(ハザード比:0.76、95%CI:0.62~0.93、P値=0.0081)。
入院についても、エプレレノンの投与により、あらゆる理由による入院を23%、心不全による入院を42%有意に抑制し、死亡と入院、いずれのリスクも減少させることが分かった。この結果はサブグループ解析でも同様の傾向を示した。
一方、安全性については、有害事象の発生率はエプレレノン群で72%(979例)、プラセボ群で73.6%(1007例)で、有意差はみられなかった(P値=0.37)。ただし、高カリウム血症は、エプレレノン群で8%(109例)報告されたのに対し、プラセボ群では3.7%(50例)報告され、エプレレノン群で有意に高い結果となった(P値<0.001)。高カリウム血症による入院は両群間に有意差はみられなかった(P値=0.85)。
そのほか、同じクラスの薬剤であるスピロノラクトンでは腎機能の悪化が報告され、腎機能への影響も懸念されたが、腎不全や腎不全による入院も、エプレレノン群とプラセボ群で大きな差はみられなかった。
◎Zannad氏「治療を変える説得力のあるエビデンス」
結果を報告したZannad氏は、軽症収縮期心不全患者に対し、標準療法にエプレレノンを追加投与することは、「高い認容性で、生存率を向上し、入院を予防する」と説明。同じクラスの薬剤であるスピロノラクトンを追加投与により死亡率低下が示された「RALES」試験と今回の試験結果から、「治療を変える説得力のあるエビデンスが提供できたと信じている」と述べた。
なお、同試験は同日付の「The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE」に掲載された。