【ESCOリポート】SCAST post-hoc解析 脳梗塞急性期患者への重度の降圧 早期の有害事象を有意に増加
公開日時 2011/05/27 06:29
血圧上昇を伴う脳梗塞急性期患者において、投与開始から2日間で28.5mmHg以上の重度の降圧を行うと、脳卒中の再発をはじめとした早期の有害事象を有意に増加させることが分かった。一方で、降圧と機能転機との関連性は見いだせず、長期的なアウトカムには影響を与えない可能性が示された。「SCAST(Scandinavian Candesartan Acute Stroke Trial)」のpost-hoc解析の結果から分かった。5月24~28日の日程で、独・ハンブルグで開催されている第20回欧州脳卒中学会(ESCO:European Stroke Conference)で25日に開かれたセッション「Large clinical trials(RCTs)」で、SCAST study groupのE.C.Sandset氏が報告した。(5月25日 独・ハンブルグ発 望月英梨)
試験は、高血圧を合併する脳梗塞急性期患者を対象に、ARB・カンデサルタンを用いて注意深く降圧療法を行うことの有用性を検討した二重盲検下ランダム化比較試験。同剤の臨床第3相試験(P3)として実施された。
対象は、症状を発症してから30時間以内に治療を開始することが可能な高血圧(血圧値≧140mmHg)を合併した、18歳以上の脳梗塞急性期患者2029例。ARBを服薬中または禁忌の患者、明らかな降圧療法の適応がある患者は除外した。①カンデサルタン群(初期投与量4mg、投与開始3~7日後に16mgに増量)1017例②プラセボ群1012例――の2群に分け、治療効果を比較した。
すでに報告された本解析では、主要評価項目である、6カ月後の複合心血管イベント(心血管死+心筋梗塞+脳卒中)の発症率、重症度を示すmodified Rankin Scale(mRS)での機能転機いずれについても2群間に有意差はみられていない。
◎機能転機との関連性は見いだせず
今回行われたサブ解析は、脳梗塞急性期直後に過度の降圧を行った患者では、早期の有害事象の発生リスクが高く、長期的にも機能転機が悪いとの仮説に基づき行われた。
投与開始2日後の収縮期血圧値をベースライン時と比較し、降圧の程度により①軽度(0~15mmHg)242例②中等度(15~28.5mmHg)241例④重度(>28.5mmHg)248例④上昇または変化なし265例――の4群に分け、比較した。主要評価項目は、①ランダム化から7日以内の脳卒中の再発+脳卒中の進行+症候性高血圧の複合エンドポイント(早期の有害事象)②6カ月後のmodified Rankin Scale(mRS)による機能転機――の2項目。
4群間には収縮期血圧値(P値<0.001)だけでなく、拡張期血圧値(<0.001)、症状持続期間(P値<0.001)、神経症状の早期回復を図るSSSスコア(P値=0.001)に有意差がみられた。
主要評価項目の複合エンドポイントの発現頻度は、降圧重度群では有意に発現頻度が高い結果となった。また、降圧軽度群ではいずれも発現頻度は4群間で最も低い結果となった。一方で、6カ月後の機能転機と重度の降圧との関連性は見いだせなかった。
Sandset氏は、「同試験がランダム化されていないpost-hoc解析での比較であることから、解釈には慎重を要する」と指摘。その上で、「血圧上昇を伴う脳梗塞急性期患者に対する日常診療における降圧療法は、認められない」と述べた。
現在、ENOS、INTERACT2などの臨床試験が進行中であることも紹介。これらの試験結果により、降圧療法が適応となるサブグループがいることや、異なる血圧管理の有効性などが明確になることにも期待感を示した。