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原発事故の短期的および長期的な健康上のリスク

公開日時 2011/06/24 22:59

3月11日の東日本大震災により引き起こされた福島第1原発事故の短期的および長期的な健康への影響を検討してみたい。福島第1原発の事故はまだ流動的だが、放射線放出および健康への影響の観点から1979年の米国ペンシルバニア州のスリーマイル島原発事故と1986年のウクライナのチェルノブイリ原発事故の中間程度に位置づけられると考えられる。


原子炉事故の結果としてのヒトの放射線被ばくは一般的に、①放射線源に近接した結果の身体全身あるいは部分の被ばく、②外部被ばく、③内部被ばく―の3つに分類される。分子レベルでは、放射線被ばくの一次的な影響はDNAの損傷だ。この損傷は、十分に回復するか、無害か、あるいは機能不全、発がん、細胞死をもたらす。放射線被ばくの臨床的効果は、被ばくの形態(身体全身か部分か、内部被ばくか外部被ばくか)、被ばくした組織の特質(放射線に敏感な組織か、敏感でない組織か)、放射線の種類(γ線かβ線かなど)、体内での放射線の透過率(低エネルギーか高エネルギーか)、吸収量、吸収時間などによって変わってくる。


短期的な健康への影響については、チェルノブイリ原発事故で急性放射線疾患と確認された134人は、原発の作業員と緊急事態派遣隊のメンバーだった。一方、スリーマイル島事故では、作業員にも一般住民にも急性放射線疾患はいなかった。チェルノブイリでは、134人全員が骨髄抑制、そのうち19人が広範囲な放射線皮膚炎、15人が重篤な消化管合併症だった。


長期的な健康への影響については、チェルノブイリ周辺では500万人がヨウ素131とセシウム同位体に被ばくしたと言われている。原子炉からの放射性降下物は急性疾患を発症させないが、長期的な発がんリスクを増大させる可能性がある。チェルノブイリ近辺では、ヨウ素131を摂取した小児の間で続発性甲状腺がんの発症率が増加したことを示す強いエビデンスがある。


原子炉事故はまれにしかないので、放射線被ばくした患者を実際に診た医師はほとんどいない。原発に近接しているか、あるいはヘルスケアシステムのなかで役割を持つ組織は適切な(事故)対応プランを策定し、定期的に訓練をしなければならない。個々の患者の治療、地域社会との連携との観点から、その対応の重要な要素は、急性放射線疾患および長期的な発がんリスクについて国民に広く理解させるように被ばくレベルやそれに対応したリスクについて明確なコミュニケーションを行うことだ。John P. Christodouleas (ペンシルバニア大学放射線腫瘍学・放射線安全学部)ほかが報告した。

  NEJM   364:24  June 16、2011

 

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