中医協 27年度薬価改定実施「前提」で議論開始 安川発言念頭に江澤委員がクギ「見識の高さ」求める
公開日時 2026/07/09 04:54
中医協は7月8日、2027年度薬価改定について実施を「前提」として議論を開始した。改定の対象品目の範囲やルールの在り方が議論の焦点となる。次回の中医協で業界の意見陳述を行い、その内容を踏まえて議論を深める方針。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は同日の薬価専門部会で、日本製薬団体連合会(日薬連)の安川健司会長(アステラス製薬会長)を念頭に「前回のヒアリングでは、中医協の議論としてふさわしくないと見受けられるご発言もあった。今後のヒアリングにおいては、この場にふさわしい見識の高いヒアリングとなるようお願いしたい」とキツイ一言を投げかけた。
2026年度薬価制度改革をめぐり、25年12月の中医協薬価専門部会で、意見陳述に臨んだ日薬連の安川会長は、「我々は営利団体で、慈善のボランティアではない」として、投資家目線で「ROE5%を稼げるような薬価」の必要性を強調。国民皆保険の維持を問われ、社会的なセーフティーネットは「2列後ろの(席に座っている)厚労の方が考えるアジェンダだ」と突っぱねた。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は「第三者的なのは非常に残念だ」と応酬。業界内外に波紋を呼ぶ一幕となった。
◎次回の業界ヒアリングを見据え「建設的な主張並びに公的役割に関する考え」求める
診療側の江澤委員は、次回の薬価専門部会での製薬業界団体からのヒアリングを見据え、「ヒアリングでは、業界としての具体的、建設的な主張並びに公的役割に関する考えをしっかりお聞かせいただいて、有意義なものになるようにすることを要請したい」と述べた。
◎診療側から“逆ザヤ”への懸念の声あがる 不採算品再算定、一社流通めぐる課題も
この日の薬価専門部会では、診療側委員から“逆ザヤ”品目についての意見が出た。診療側の渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、業界の意見陳述に向けて、不採算品再算定について言及。流通改善ガイドラインを引き合いに、「不採算品再算定を申請する際は、メーカーと卸がしっかり連携し、流通経費などの実情をしっかり踏まえていただきたい。それにより発生している逆ザヤの状況という実態もしっかりご紹介していただきたい」と述べた。また、不採算品再算定の適用を受けた品目の増産状況についても報告を求めた。
診療側の江澤委員は、「医薬品流通に関して一社流通などの課題は以前から指摘されている。病院の経営状況が悪化している現状において、適切な価格交渉ができる環境を確保することも重要であると指摘させていただく」と述べた。そのうえで、「こうした課題に対応しない場合、近い将来、物価高騰などの外部環境を理由に、逆ざや品目が多発してしまう懸念がある」と牽制した。
◎26年度薬価制度改革骨子が27年度薬価改定めぐる議論のベースに
27年度薬価改定をめぐっては、25年末に上野厚労相・片山財務相の大臣折衝で、「27年度の薬価改定を着実に実施する」ことが明記されており、実施は決定的。一方、対象範囲やルールの在り方については、26年度薬価制度改革骨子で、「創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請についてバランス良く対応するとの基本的な考え方を踏まえて検討すること」とされている。
◎対象範囲 安定供給の観点から、「医療機関・薬局の状況、品目ごとの供給状況」を勘案
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、27年度薬価改定は「16年の4大臣合意に基づき、価格乖離の大きな品目について価格調整することが基本的な役割と認識している」と説明。価格乖離については、「実額あるいは比率によってあらかじめ基準を決めるというよりも、その時々の経済状況、財政状況、医療機関・薬局の経営状況等を勘案しながら、幅広い視点で対応していくことが重要だ」との認識を示した。対象範囲については、安定供給の観点から、「医療機関・薬局の状況に加え、具体的な品目ごとの供給状況を勘案するべきかどうか検討が必要だ」と述べた。
診療側の渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、「現場では安定供給が改善されていない中で薬価改定が行われることにより、更なる懸念があることにご配慮いただきたい」と要望。対象範囲については、「あくまで薬価乖離の大きな品目のみを対象とし、基本的には実勢価改定と連動しないルールは中間年改定では対象にすべきでない」との見解を示した。
◎支払側・佐竹委員「改定の対象品目を広くし、適用されるルールは、全て議論の俎上に」
支払側の佐竹陽一委員(健康保険組合連合会理事)は、「公的医療保険制度の持続可能性を前提として、改定の対象範囲を狭くする、あるいは一律の対応にすることになると、イノベーションの推進や安定供給の確保に充てる財源が限定的になる可能性がある」と指摘。「改定の対象品目を広くし、適用されるルールは、全て議論の俎上に乗せましてメリハリのある対応をする必要性がある」との認識を示した。
支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「対象品目や算定ルールは、基本的には限定せずに実施すべき」と表明。「実勢価改定と連動しないルールも実施していくべきで、少なくとも25年度に適用したルールを今回も適用することは最低限行われるものと考えている」と話した。対象範囲については、「もし一定限定が必要であるのであれば25年度同様にカテゴリー別の対象範囲の設定は、医薬品の特性を踏まえた考え方であり、一定合理性があると考えている」と述べた。