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安定狭心症、心筋梗塞患者対象にクロピドグレルの安全性示される

公開日時 2011/09/09 04:00

CLEAN試験の結果から 

 

 

 

待機的経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される安定狭心症および陳旧性心筋梗塞患者におけるクロピドグレルの安全性が、チクロピジンを有意に上回ることが、クロピドグレルの臨床第3相試験の「CLEAN(CLopidogrel trial in patients with Elective percutaneous coronary intervention for stable ANgina and old myocardial infarction)」試験の結果から示された。7月23日に開かれた「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで帝京大学医学部内科学教室・内科(循環器)教授の一色高明氏が報告した。

 

 

 

 

 

 

試験は、待機的PCIが適用される安定狭心症および陳旧性心筋梗塞患者を対象に、クロピドグレルの安全性と有効性を検証することを目的に実施された。
 

現在、クロピドグレルの国内での適応は、循環器領域では「PCIが適用される急性冠症候群(=ACS、不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)」にとどまっており、臨床現場では適応拡大が待ち望まれていた。また、適応取得時に、対照薬であるチクロピジンを1カ月間以上投与することに臨床現場から懸念が示されたために、臨床試験下で安全性の比較が十分になされなかったとして、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から本試験での十分な安全性の検討が求められていた。
 

対象は、負荷試験で心筋虚血が認められ、明らかな狭窄があり、PCIの施行が考慮されている安定狭心症および陳旧性心筋梗塞患者1003例。冠動脈バイパス術(CABG)が必須な患者や緊急PCIの適用がある症例や、3枝以上の病変がある冠動脈疾患、6カ所以上のステント留置例などは除外した。
 

①クロピドグレル投与群502例②チクロピジン投与群501例――の2群に分け、比較した。クロピドグレル群は、ランダム化から3日後にloading doseである300mgを投与し、その後75mg/日を52週まで投与した。一方、チクロピジン群はチクロピジン100mg1日2回をランダム化の当日から12週まで投与し、その後クロピドグレルに切り替えた。PCIは、ランダム化の4~8日後に施行した。
 

主要評価項目は、ランダム化から投与開始12週までの安全性に関するイベント(臨床上重大な出血+血液異常+肝機能値上昇+服薬の中止)が最初に発現するまでの時間。投与開始12週までの解析対象(mITT集団)は、クロピドグレル群466例、チクロピジン群465例。
 

患者背景は2群間に大きな差はみられず、ベアメタルステント(BMS)はクロピドグレル群で17.8%(83例)、チクロピジン群で15.7%(73例)、薬剤溶出性ステント(DES)はクロピドグレル群80.9%(377例)、チクロピジン群82.2%(382例)だった。

 

 

 

 


時間経過につれ安全性イベント発現に開き

 

 

図1その結果、主要評価項目の発生率は、クロピドグレル群で10.1%(47例)、チクロピジン群で34.2%(159例)となり、調整ハザード比は0.259(95%CI:0.187-0.359)で、有意にクロピドグレル群で低い結果となった(Log-rank test:p<0.0001、図1)。

臨床上重大な出血は、クロピドグレル群0.9%(4例)、チクロピジン群0.6%(3例)で差はみられなかったが、肝機能値上昇はクロピドグレル群5.8%(27例)、チクロピジン群29.2%(136例)で、クロピドグレル群で大きく下回った。

一色氏は「約2カ月で、安全性の差がはっきりすると言われているがその通りで、時間が経過するにつれ、イベントの発現率に差がついた」と説明した。

図2一方、有効性については、主要心血管、脳血管イベント(=MACCE、総死亡+急性心筋梗塞+再灌流+ステント血栓症+虚血性脳卒中)の発生率が、クロピドグレル群で9.2%(43例)、チクロピジン群で10.3%(48例)で、両群間に差はみられなかった(p=0.5611、図2)。調整ハザード比は、0.886(95%CI:0.587-1.337)。死亡やステント血栓症は、両群ともにみられなかった。

CURE出血基準による出血の発生頻度は1.3%(6例)、チクロピジン群で0.9%(4例)で、両群間に差はみられなかった(p=0.5292、調整ハザード比:1.497[0.422-5.306])。

 

 

 

 

 

チクロピジンからクロピドグレルへの切り替え 安全性示される

 

 

表1さらに、52週まで投与した患者を対象(LTE集団:クロピドグレル群158例、チクロピジン群143例)に、主要評価項目の発生率をみたところ、クロピドグレル群12.0%(19例)、チクロピジン群で37.8%(54例)だった。
 

チクロピジン群で、クロピドグレルに切り替えた後の12~52週の主要評価項目の発生率は、5.6%(8例)で、クロピドグレル群の7.6%(12例)と大きな差がみられず、切り替えが安全に行えることも示された。そのほか、MACCEの発生率、出血についても、大きな差はみられなかった。
 

プロトンポンプ阻害薬(PPI)との併用により、代謝酵素であるCYP2C19が阻害され、効果が減弱すると指摘されていたが、今回の試験では、各群の症例数は少ないものの、投与の有無によるイベントの発現率に差はみられなかったとした(表1)。
 

一色氏はこれらの結果から「クロピドグレルの安全性と有効性における、チクロピジンへの優位性が明確に示された。このデータをもって、待機的PCI症例に対するクロピドグレルの適応は取得できるのではないか」と結論付けた。
 

その上で、唯一適応が取得されていないST上昇型急性心筋梗塞(AMI)については、厚労省からの要請に応じ、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)が登録研究「本邦におけるST上昇型急性心筋梗塞治療の実態調査(J-AMI)」をスタートさせたことを説明。この登録研究で、今後見込まれる適応拡大により「クロピドグレルの適応はほぼ出揃って、文字通り安心して使える環境が整ったと言えるようになる」と見通した。

 

 

 


 

J-AMI試験

 

日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)は2011年5月から「本邦におけるST上昇型急性心筋梗塞治療の実態調査(J-AMI)」をスタートさせた。
 

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)は、発作から治療までの時間や治療内容が患者の転帰に大きな影響を及ぼすことが知られている。一方で、その実態は把握されていないのが現状だ。
 

調査は、PCIが適用されたSTEMI患者の治療内容を正確に把握することを目的に実施される。CVIT所属施設を対象に、STEMI患者の全症例を登録し、データベース化する。
 

患者背景やPCIの情報、病変情報、退院情報などに加え、抗血小板薬の使用状況、クロピドグレル使用の有無や投与量、投与例においては退院時までのイベントの有無などを登録する。登録期間は2011年5月1日~9月30日まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

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