米市場進出を模索する中国製薬企業
公開日時 2011/11/08 04:00
大手多国籍製薬企業は、持続的成長の手がかりを新興国市場に求め、そのなかでも中国市場でのプレゼンス強化を図っているが、その一方で、中国は外資を受け入れる市場ばかりではないと一部の中国の製薬企業は世界No.1市場の米国進出を目指す動きに出ている。中国紙「China Daily」(米国英文版)が、中国製薬企業の最近の動向を報じた。
このほど、中国製薬企業の幹部、ジャーナリスト、投資機関幹部など約30名から構成される視察団が、ニューヨーク、ボストンなどを訪問、アムジェン、ファイザー、コンサルタント企業Ernst & Youngなどの幹部らと面会、米国事情などを聴取した。メンバーのなかには、すでにファイザーが売却に出しているサンドウィッチ工場(英国ケント)やアストラゼネカの今年末閉鎖が決まっている英国Loughborough(英国レスターシェア)を視察した者もおり、進出意欲の対象は米国ばかりでなく欧州にも及んでいるという。
視察団の1人、Buchang PharmaceuticalのZhao Chao CEOは、「我々は国際的医薬品企業家から学んでいるところだ。また今後の提携の可能性も探っている」と視察の目的を話した。同CEOは、中国製薬企業は世界に市場を拡大する力を持っており、中国の医薬品は西欧市場に参入できる製品だと説明、「問題は如何に参入するかだ」と参入方法を探っていることを明かした。
中国製薬企業が力をつけてきたことについて、中国の医薬専門誌「Healthcare Executive」のTan Yong編集長は、過去2年間で大規模な投資資金が医薬品産業に流入してきた結果、海外市場でも開発可能だという自信をつけてきたためだという。
中国国立統計局によると、医薬品産業における固定資産投資は今年6月末(6カ月)で対前年同期比38%増の1259億元(197億ドル)。中国政府のヘルスケア改革への関与で、今年下半期はさらに投資が見込まれるという。
中国医薬品企業の米国進出はまだ輸出が主だ。今年上半期には前年同期比48.2%増の38億2000万ドルの輸出規模となっている。
しかし、対米輸出の内容は、原薬(API)や医薬材料が主となっている。Yong編集長は、「中国が米国でのシェアを伸ばそうと考えるなら、原薬などではなく医療用医薬品の輸出をしなければならない」と指摘する。こういった観点は、多数の中国企業に米国の研究所での研究を後押しすることになる。
Chao CEOは、「西欧の医薬品と異なり、漢方は強い副作用がないので、米国の薬事承認を獲得すべく努力したい」と米国での漢方進出にも意欲を示している。Buchang Pharmaceuticalは、現在、心臓病薬(新薬)について、心血管治療を得意とするFuwai病院で2400人を対象とした臨床試験を行っており、同剤の米国での販売を計画している。
中国の医薬品企業は、欧米の医薬品に比べて薬価が安いことが、ヘルスケア改革の途上にある米国での販売上、利点になり、市場で勝利すると考えている。しかし、Ernst & Youngのコンサルタント、Dave DeMarco氏は、「全ての企業が、(参入の)機会を持っている。ヘルスケア改革に参画するには、米国でまず最初に事業を開始するかだ」と早期参入が勝利への道との考えを示している。