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【AHAリポート】HOOPS 左室収縮機能障害患者への薬剤師介入で薬物療法適正化も 臨床成績改善には至らず

公開日時 2011/11/22 12:30

 左室収縮機能障害患者への薬剤師の介入で、心不全の発生抑制に向けて推奨されるACE阻害薬やARB、β遮断薬の新規処方や推奨用量の投与が推進されることが分かった。一方で、全死亡や心不全による入院などの臨床成績への効果はみられなかった。前向きクラスターランダム化比較試験「HOOPS(Heart failure Optimal Outcomes from Pharmacy Study)」の結果から示された。11月12~16日に開かれた米国心臓協会年次学術集会(AHA)2011で、11月14日に開かれたLate-Breaking Clinical Trialsセッションで、HOOPS Investigatorsを代表して、R Lowrie氏が報告した。(望月英梨)


心不全患者のプライマリケアにおいて、疾患の自然経過を変えることが報告されているACE阻害薬とβ遮断薬は、十分な投与がなされておらず、用量も十分でないと指摘されている。一方で、薬剤師が、薬物療法の患者評価を行い、患者とかかりつけ医の合意に薬物療法の変更を勧め、成立した“協力的な薬歴調査”を行う。すでに小規模の臨床試験をメタ解析した結果では、この薬剤師の介入により、臨床成績が向上することが示されている。
試験は、左室収縮機能障害がある患者を対象に、薬剤師の介入によって最適な薬物療法を行うことで、臨床転機が改善するとの仮説を証明する目的で証明された。


対象は、画像診断により、左室収縮機能障害があり、心不全の症状や徴候がない。英国・スコットランドの220施設のうち、174施設が参加した。このうち、2004年10月~07年9月までにインフォームド・コンセントが得られた2169例を登録した。


施設ごとに、①通常治療群(87施設、1074例)②薬剤師介入群(87施設、1090例)――の2群に分け、治療効果を比較した。薬剤師の介入は、GLに沿った最適な薬物療法を目指すことを目的に、Face to Faceで30分間の面談を行う。選択薬や用量の変更について合意がなされた場合は、追加で3~4回の面談を持つこととした。介入に携わった薬剤師は、3~16年間の経験を持つ27人で、左室収縮機能障害のEBMに基づいた治療や心不全の徴候、症状などについてトレーニングを受けた。主要評価項目は、全死亡+心不全の悪化による入院。追跡期間(中央値)は、4.7年間。NHSの電子記録により、追跡した。


患者背景は、70歳以上が55%、既往歴としては呼吸器疾患の既往が30%などで、両群間に有意差はなかった。また、左室収縮期障害は虚血性心疾患が80%含まれており、軽症(通常群:39%、介入群:42%)、中等度(通常群:44%、介入群:41%)が多く含まれていた。


ACE阻害薬/ARBの投与は通常群で85%(919例)、介入群で86%(944例)だった。ACE阻害薬投与例のうち、推奨用量以上の投与は、通常群で62%(472例)、介入群で59%(483例)にされていた。ARBでは、通常群で19%(35例)、介入群で23%(34例)だった。β遮断薬の投与は、通常群で62%(664例)、介入群で62%(674例)。推奨用量以上は、通常群で20%(128例)、介入群で22%(146例)だった。


◎ACE阻害薬/ARBの新規投与、増量は2.3倍 β遮断薬は1.7倍に


その結果、最初の1年間で、ACE阻害薬/ARBの新規投与または増量は、通常群で18.5%(95例/514例)だったのに対し、介入群では33.1%(168例/507例)で、オッズ比は2.26で、有意に介入群で多い結果となった(OR:2.26[1.64-3.10]、p<0.001)。推奨用量以上の投与は、通常群の11%(40例/365例)に対し、介入群では23%(86例/376例)で、有意に介入群で高い結果となった(OR:2.46 [1.51-3.99]、p<0.001)。
一方、β遮断薬の新規投与または増量は、通常群の11.1%(95例/855例)に対し、介入群では17.9%(153例/854例)で、有意に介入群で高い結果となった(OR:1.76 [1.31-2.35]、p<0.001)。推奨用量以上の投与となったのは、通常群で5%(22例/467例)に対し、介入群で8%(38例/466例)だった(OR:1.75 [0.99-3.09]、p=0.05)。この傾向は2年後も同様にみられた。


主要評価項目の発生率は、通常群の35.4%(380例)に対し、介入群で35.8%(390例)で、両群間に有意差はみられなかった(ハザード比:0.97 [0.83-1.14]、p=0.72)。これは、すべてのサブグループ解析でも同様の結果となった。そのほか、全死亡+冠動脈疾患による入院(HR:0.96 [0.80-1.16]、p=0.68)、心不全による入院、全死亡などに有意差はみられなかった。


これらの結果から、Lowrie氏は、「プライマリケアでの軽度の薬剤師による協力的な介入は、疾患の自然経過を変える処方をじょじょに改善させたが、ベースラインからよく治療されていた治療群では臨床成績を向上させることができなかった」と結論付けた。


その上で、英国は出来高払い制のため、かかりつけ医でのACE阻害薬やARBの処方が高率であった結果、「ACE阻害薬やARBの新規投与や増量の余地が少なかった」との見方を示した。一方で、β遮断薬については改善の余地がよりあったにもかかわらず、「薬剤師は、β遮断薬の新規処方に失敗し、増量も限られた成功にとどまった」と述べ、疑問を投げかけた。
また、「心不全による入院の発生頻度が低いことや、非冠動脈疾患死が治療効果を減少させて示している」との見方も示した。


◎Jessup氏「入院率は妥当な指標でない可能性」


Discussantとして登壇したUniversity of PennsylvaniaのMariell Jessup氏は、すでによく治療されている群が登録されている、38%の患者が軽症患者である、介入群が1群しかない、などの試験の限界を指摘した。その上で、「このような短い介入を行うことで、心不全のような慢性疾患で、長期的な成功を収めるのは、現実的ではないかもしれない」との見方を表明するとともに、有効性の指標とした、「入院率は、妥当な指標ではないかもしれない」と述べた。

 

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