解説 中国市場:多国籍大手 一筋縄では行かない中小都市進出
公開日時 2012/02/06 04:00
バイエルヘルスケア、ファイザー、サノフィ、グラクソスミスクラインなど多国籍大手製薬企業は中国でのプレゼンスを確立、北京、上海など大都市でのビジネスから中小都市へのビジネス展開を図りつつあるが、一部中国や韓国のアナリストらは、中小都市では大都市と異なり障壁があり一筋縄では行かない、と指摘していることを中国の日刊紙「China Daily」英文版が報じている。
日刊紙「China Daily」英文版によると、中国は2020年までに国民皆保険実現を目指している。2009年に医療改革に着手、2011年中には何らかの形で国民の90%には医療供給が出来る体制となった。今後は、国民に安価な医療を保険カバーできるような完全な医療保険体制の構築を目指す。IMSヘルスによれば、医療改革と国民の医療アクセスの改善により、医薬品市場は2010年から2015年には年率平均20.1%で伸長、6940億元(1元=12円、8兆3280億円)に達すると見込まれている。
医療改革の改善により、北京、上海など巨大都市から次のクラス(人口で2番手・3番手)の大都市、中小都市での市場が伸びると見られ、多国籍大手企業が進出を展開しつつある。
しかし、中国や韓国の証券アナリストは、中小都市進出への困難さを指摘する。特に中小都市では、現地企業が地方政府や医療機関との関係を長い間構築してきただけに、そこに多国籍企業大手が参入するのは容易でないとの見方が一般的だ。中国の現地企業は、顧客の多様なニーズに応えるように製品をマッチさせ、成長のチャンスを窺っているが、多国籍企業にはそれが難しいという。
韓国のSamsung Economic Research InstituteのLydia Xu研究員は、「中国の現地企業は、完全な販売網を構築し、小規模市場での政府や病院とのい適正な関係を維持しているが、多国籍企業が短期間でそれを構築することは容易な仕事ではない」と指摘している。さらに、多国籍企業が頭を悩ませるのは、人材不足だという。中国の2番手、3番手都市での医薬品業界の需要は急増しているといわれ、2011年第1四半期の医薬品業界の求人状況をみると、天津では前年同期比30.5%増、甘粛省では同34.3%増、内モンゴル自治区では同38%増など目覚ましい伸びを示している。
しかし、某多国籍企業の人事担当者は、「教育があり医療業界での経験を持つ人材を地方で探すのは容易でない」と話し、「小都市で働きたいという人材を本社から派遣するのは現実的でない」と指摘する。その理由は、「このような地区では、文化的・社会的環境が大都市とは異なっているからだ」と説明している。
現地企業からMRが高い報酬と教育の機会を求め、転職しているが、多国籍企業にとっては、小都市で働ける人材のプールを作っているといえる。地方都市の病院の医師も地方で働くMRのいい候補だと言われている。多国籍企業が中国市場を地域的に深耕するにはきめ細かな戦略が必要だということのようだが、広大な面積と多様な文化を持つ国だけになかなか、従来の先進諸国でのビジネスモデルを持ち込むだけで済むとはいかず、一筋縄では行かないのが現実のようだ。