外資系投資銀行で働き、若くして富を築いたKさん。彼女の人生計画とは…。

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外資系投資銀行は、高給ではあるが、24時間、絶え間なくストレスが掛かると言われるほど厳しい職場も。その為、『一生働く場所ではない』と、割りきって働いている社員がほとんど多いとも言われる。
若くして相当の額の資産を築いているせいか、あるいは金融という数字を扱う仕事のせいか、彼らのなかには、明確な人生計画がしっかりあって、それに沿って動いているという人もいる。なかには
「預金の残高が予定金額に達したので、今の会社を辞めることにしました。32歳までに結婚。実家近くにマイホームを買って、子供は40歳までに三人3人。55歳までは働くつもりですが、その後は早期退職して、趣味の楽器演奏を楽しみながら、悠々自適に暮らすつもりです」
などと、30年後までの人生プランを細かく語る、すごい人もいるほどだ。

外資系金融企業を辞め、事業会社への転職を希望して我々のところにやってきたKさん（30歳）は、どこかアッケラカンとした雰囲気のある女性だった。
「始めからから長く働くつもりはなかったのですが、あまりの忙しさに転職できることすら忘れていました」
Kさんは働きながら転職先を探すのは、時間的に難しかったと退職の理由を述べ、
「この5年は仕事一辺倒の生活をしてきたので、これからはプライベートを大切にしたいと思っています。気がついたらもう30歳、人生は短い。楽しまないと」
と、これからの抱負を口にした。

「転職の条件は何かありますか？」
「蓄えはありますので、年収や会社の規模は気にしません。時間の余裕が持てて、楽しく働ける会社なら、どこへでも。ただ、私は思ったことをズバズバ言うタイプなので、堅苦しい雰囲気は苦手です。それから、有給休暇がとりやすい雰囲気の会社であること。それが転職先の条件です」
話し合いの末、IT企業・残業の少ないメーカー、これから上場を目指すという成長企業をターゲットに転職活動をしてくことに。優秀なキャリアに飾らない人柄、条件面も融通が効くというので、Kさんの転職は大きな困難はないだろうと思われたが、面談から数日後、念のため、追加応募の候補として新しく入った求人の資料を送ると、送信からわずか数分後に彼女から電話がかかってきた。

「このA社って、芸能関係の企画プロモーションをしている会社ですよね？」
「そうです」
「男性アイドルグループ、○○◯の？」
「ええ、彼らのプロモーションを全面的に任されている会社ですね。他の求人と比べると事業内容が…」
「私、A社に応募します。すぐに履歴書を送ってください」
我々の言葉を遮って、Kさんは大きな声をあげた。面談の時の穏やかなKさんとは別人のようになっている。
「す、すみません。後から教えていただいた求人なので、応募が遅れてはいけないと思って…」
「いえ、良いんですよ。では、すぐに手続きを取りますね」
こうして応募することになったA社だが、Kさんはこの案件に対して、明らかにただならぬ意欲をみせていた。求人背景を事細かく我々に確認し、彼女自身の人脈からも情報を収集して、A社の状況を調べていた。

選考は、ごく一般的な質疑による面接で進められていくはずだったが、Kさんは、A社の経営陣を前に
「僭越ながら、事業計画書を作成してきました。どうぞ御覧ご覧ください」
と、用意してきたプレゼン資料を配布。これからの事業展開や成長戦略などを語って、自分をアピールする作戦に出たのだった。

面接終了後、A社から我々のところに連絡があった
「たいへん意欲の高い方で驚きました。経営企画として、財務面だけでなく、事業への関わりも持ちたいという気持ちは伝わりましたが、弊社が求めている方向とは少し違いましたし、先に面接した方の方が適任に思えます」
こうして、Kさんの努力は空回りになってしまったのだった。

「…ということで、残念ながら、A社は他の方で決まりそうです」
「分かりました。仕方ありません」
「Kさんは、○○◯のファンだったんですね？」
少し間があったが、そこで気持ちを切り替えたのか、Kさんの声は元気を取り戻していた。
「ええ、A社に入る頃から夢中で、ずっとCD聴いています。私、おっかけ気質があって、高校・大学時代は別のバンドにのめり込んでいたんですよ」
「Kさんが？それは少し意外ですね」
「でも、おっかけって、結構お金が掛かるんです。だから、短期間にできるだけ稼いで、それから自分の好きなアーティストのライブに行きまくろうと思っていたんです」
「な、なるほど。前社に入る前からの計画だったわけですね？」
「ですから、面接に落ちて良かったのかもしれません。ライブは、ファンとして接する方が楽しいですからね。これからはツアー全公演制覇を目指して、頑張ります！」

Kさんはキャラクターからして、将来を細かく決めてしまうタイプではないと思っていたのだが、我々が考えていたのとは別方向で、明確な人生計画があったようだ。