
日本製薬工業協会(製薬協)は7月23日の医療用医薬品の流通改善に関する懇談会に一社流通等における情報提供に向け、ひな形を作成するなど取組みを進めていることを報告した。一社流通についての情報提供が不十分との川下側の委員からの指摘を踏まえたもの。一方で、この日の流改懇でも、川下当事者が求める一社流通の理由の明確化や納得感のある説明には程遠く、「上意下達」との指摘もあがった。原靖明構成員(日本保険薬局協会 医薬品流通検討委員会副委員長)は「医師会や病院ばかりでなくて、薬局の意見も聞いていただきたい」と製薬協の構成員に指摘する場面もあった。製薬協側も薬局への情報提供が行き届いていないことを認めており、薬局に対する情報提供不足も浮き彫りとなる場面もあった。
製薬協は日本医薬品卸売業連合会(卸連)と協力し、情報提供を実施していると説明。具体的には、製薬協加盟社に一社流通について丁寧な情報提供を求めるよう文書を通じて周知。
ひな形として、一社流通とする理由や販路情報、どの卸で販売するかを明記することを求めた。一社流通とする理由については、「“社の方針”等ではなく、医療上の必要性を具体的に記載することが望ましい」とした。また、卸連とメーカー・卸間において、販路情報や一社流通とする理由など、情報共有を行う上で、確認する項目の整備を進めていることも紹介した。
◎小山構成員 一社流通説明の前に「理由」が必要 ルール化を求める
小山信彌構成員(日本私立医科大学協会参与)は、「上意下達」とバッサリ。「こういうふうにしますからやりますよ、というだけ。その前に、なぜ一社流通にならなければいけないのか。ルールみたいなものをある程度決めてほしい」と要望。「一社流通は、当然の権利でいいんだというような雰囲気が、今回の製薬協の提案に関しては感じる」、「こういうことでやりますって言われたことに納得できないところに反論できる場所があるのか。一切反論できない、受け取るしかないというとこにも、やっぱり大きな問題がある」と指摘した。「一社流通にするのはそれなりの理由がないとできないということが前段階にあることをメーカーは理解すべき。そこが全く抜けていて、説明したらいいというところから始まっているから、(医療機関・薬局から)クレームが出ていると思う」と述べた。
一社流通については、「何かあった時に一社流通では患者に届かないことが一番大きな部分だが、病院経営の立場では価格競争できないのも問題だ」と改めて問題意識を示した。
◎武岡構成員 一社流通やめることが「逆に安定供給を阻害することも」
磯崎哲男構成員(日本医師会常任理事)は、一社流通の理由として「医療上の必要性」を記載することに対し、製薬企業が医療上の必要性を判断することを疑問視した。武岡紀子構成員(日本製薬工業協会流通適正化委員会常任運営委員)は「供給上の必要性というのが我々の言いたいこと。安定供給のためにという考えで一社流通を実施されているメーカーもいることも事実。一概に安定供給できていないから一社流通はやめるべきというのも、逆に安定供給を阻害することになってしまうこともある」との見方を示した。
◎製薬協 病院には卸と情報提供も「調剤薬局への情報提供は抜け落ちている」と認識
保険薬局への一社流通の情報提供不足も焦点が当たった。荒井健一構成員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長)は「病院の先生の方のところには、卸さんと一緒にやっていただいているが、どうしても調剤薬局さんのところの情報が少し抜け落ちてしまうと認識している。メーカー、卸が共に対応を考え、今後より患者さんの医薬品アクセス向上のためにも配慮するよう取り組んでまいりたい」と話した。
◎原構成員「本当に説明に来るのか」 口座のない卸の情報提供に疑問符も
原靖明構成員(日本保険薬局協会 医薬品流通検討委員会副委員長)は新薬創出等加算(現・革新的新薬薬価維持制度(PMP))の制度がスタートした段階でも、「メーカーさん、卸さんが説明に来ると言いながら、実際に来なかったことは覚えている。今回も本当に来るんだろうかと思っている」と指摘。「一社流通がどこで決まるかわからないが、製造承認を取った段階で決まっているのであれば、その時点で動き始めるべき。医療機関や薬局に入った後に説明しにくるのであれば、どうなんだろうという想いがある。例えて言うなら、道を歩いていて“落とし穴注意”と書いてあったら避けるが、落とし穴に落ちた後に注意と書かれても意味がない。ぜひ事前にお知らせいただきたい」とチクリ。
さらに、口座のない卸が一社流通を担う場合の情報提供も問題視。「口座がないところまでその卸さんは説明しに行くのか。卸が卸にお願いするのか、メーカーさん自ら説明してくれるのか。その辺のところをしっかり考えないと、いくら業界内で通知してお願いしても、実際には(製薬業界の掲げた“丁寧な情報提供”には)ならないと思っている。具体的なところをぜひ教えていただきたい」、「口座がない病院や薬局が対応できない。ゼロ社流通になってしまうという事実がある。一社流通を決める時に、丁寧な説明を事前にするのかどうか、その辺についても教えていただきたい」と述べた。
直後に発言した武岡構成員が質問に回答せず、医療機関側の回答に終始したことから、原構成員は「どのように情報提供していくかという質問に関してはまるで回答になっていない。医師会や病院ばかりでなく、薬局の意見も聞いていただきたい」とクギを刺した。
武岡構成員は、「メーカーによっては他の卸にも伝わるようにというのも実施し始めているとうかがっている。それが形として見えるか、見えていないか。個別の伝わってないよという問題が出てきたら、ぜひ事例として共有いただければ、製薬協内でも検討させていただきたい」と述べた。
原構成員は、「薬機法改正でメーカーさんは安定供給の責任を持たなければならない。薬は、患者さんに渡って初めて薬で、最終ユーザーは患者さんだ。患者さんに行き渡ることができてない状況で、“ドラッグロスだ、ドラッグラグだ”と言っても、実際もう常識的なものがそうなってるではないかと世間に笑われることが起きる。個社の問題と言われると困るが、ちゃんとしていただきたい」と強調。卸の絞り込みにより、製薬企業の経費が削減されていることも指摘し、「薬価の中には、供給に対する分も入っている。卸さんにも適正なフィーを払えているのかどうかと非常に疑問に思っている」とも述べた。
折本健次構成員(日本医薬品卸売業連合会参与)は、「卸連からも製薬協さんに色々文句をだいぶ言い、卸として責任を果たせていないという反省からも、今回のひな形にようやくたどり着いたことはよかった」と述べたうえで、「わかりやすい一社流通とトレーサビリティも含めてきちんとした対応をしないと、メーカーさんのお考えがストレートに伝わらない。メーカーさんと一緒に、もう一度基本に戻って進めていきたいなという実感を持っている」と述べた。
◎眞鍋構成員 独禁法上の「“再販価格の維持行為”という疑念も上がらざるを得ない」
一社流通をめぐり、製薬協側が“独禁法上問題ない”ことを盾にしているとの指摘も相次いだ。
厚労省は「医薬品メーカーがどの医薬品卸と取引するかは、基本的には医薬品メーカーの取引先選択の自由の問題」として、「独占禁止法上違法な行為の実効を確保するための手段として取引を拒絶する場合などを除いて、基本的には独占禁止法上問題となるものではない」と整理している。
原構成員は医療保険の中でビジネスをするのであれば製薬企業も保険上のルールを守る必要性があると指摘。「薬価収載されたのであれば、全国に行き渡るような流通をやらなければならない。一社流通で本当完結できているのか。一社で完結できないものを一社流通にしているのであれば、何か不自然な流通が行われているはずで、そこについては一つ問題があると思っている」と述べた。
武岡構成員(製薬協)は、「独禁法上問題がないので、製薬協ととして各メーカーに“これはダメです、あれはダメです”ということが言えていないということ。一社流通は自由に各社が決められるという意味で、製品特性や各社の判断で決めているので、一律にこうだというふうに決められない」と説明した。
眞鍋雅信構成員(日本医薬品卸売業連合会)は、「製薬協にその意図がなくても、“再販価格の維持行為”ではないかという疑念も上がってこざるを得ない。独禁法について一切問題がないという認識ではなく、この部分についても不断に意識をしながら、一社流通について進めていただきたい」とクギを刺した。