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【AHA2013速報】ENGAGE AF-TIMI48 Xa阻害剤・エドキサバン 非弁膜症性心房細動患者への脳卒中発症抑制 ワルファリンへの非劣性示す

公開日時 2013/11/21 08:00

Robert P. Giugliano氏第Ⅹa因子阻害剤・エドキサバンの非弁膜症性心房細動患者における脳卒中発症抑制効果が、高用量、低用量ともにワルファリンへの非劣性を示すことが分かった。ただ、優越性については高用量で傾向を示すにとどまった。大出血は、エドキサバンの高用量、低用量ともにワルファリンへの優越性を示した。一方で、虚血性脳卒中の発生率は、エドキサバン低用量でワルファリン群を上回り、最適な用量をめぐる議論もみられた。日本人1010例を含む2万1105例を対象とした過去最大規模、最長期間の試験となった同剤の国際多施設共同臨床第3相試験「ENGAGE  AF-TIMI48(Effective aNticoaGulation with factor xA next Generation in Atrial Fibrillation)」の結果から示された。11月16日から米国・ダラスで開催されている米国心臓協会年次学術集会(AHA2013)で19日に開かれた「Late-breaking Clinical Trials:New Strategies for Atrial Fibrillation Patients:Rhythm and Thrombosis」で、Robert P. Giugliano氏が報告した。(米国・ダラス発 望月英梨)


試験は、心房細動患者におけるエドキサバンの脳卒中発生抑制効果を検討する目的で実施された。エドキサバンは1日1回投与、腎代謝の薬剤。

対象は、CHADS2スコアが2以上で、12か月以上の罹患歴がある心房細動患者2万1105例。日本の99施設1010例を含む、46か国1393施設から登録がなされた。登録期間は、2008年11月19日~10年11月22日。


①ワルファリン群(INR2~3に調整)7036例②エドキサバン60mg(高用量)群7035例③エドキサバン30mg(低用量)群7034例―の3群にランダムに割り付けた。


▽推定クレアチニンクリアランス(CrCL)が30~50mL/min▽体重60kg以下▽ベラパミルやキニジンなどのP-糖蛋白質阻害薬を併用――のいずれかに該当した症例では、エドキサバン半量(60mg群→30mg、30mg群→15mg)投与とした。


主要評価項目は、脳卒中(虚血性、出血性)+全身性塞栓症。ランダム化され、治療期間中に治験薬を1度以上服用したことがある集団(On-treatment集団)に対し、治療期間のイベント発生に対しワルファリンへの非劣性をModified intent-to-treat (mITT)解析で検討。非劣性を満たした場合は、全症例を対象にITT解析で優越性を検討した。追跡期間中央値は2.8年間。ワルファリン群の国際標準化比至適範囲内時間(TTR)中央値は68.4(56.5-77.4)%だった。


患者背景は、平均年齢が72(64-78)歳、女性が38%、発作性心房細動が25%、平均CHADS2スコアが2.8±1.0、CHADS2スコア3点以上が53%、4点以上が23%だった。うっ血性心不全(CHF)の既往が57%、脳卒中またはTIAの既往が28%、75歳以上が40%、合併症は高血圧が94%、糖尿病が36%だった。ランダム化時点での減量は25%、ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬の投与歴は59%、ランダム化時点でのアスピリン投与は29%、アミオダロン投与は12%だった。


同試験は、治験薬を投与された症例が99.6%、追跡終了まで完遂した症例が99.5%、追跡期間中の脱落が1例と、高い試験の質を保って実施された。


◎ 高用量 有効性ではワルファリンへの優越性の傾向示す


主要評価項目の年間発生率はワルファリン群の1.50%(232例)に対し、エドキサバン高用量群1.18%(182例)、低用量群1.61%(253例)で、低用量ではワルファリン群よりも増加したが、非劣性のマージンはいずれの用量でも満たした(高用量 ハザード比(HR)0.79、97.5%CI:0.63-0.99、非劣性p<0.001、優越性p=0.02、低用量 HR:1.07、0.87-1.31、非劣性p=0.005、優越性p=0.44)。


ワルファリンへの優越性をITT解析で解析したところ、高用量ではHRは0.87(97.5%CI:0.73-1.04、p=0.08)で優越性は示せなかったものの、良好な傾向を示した。一方、低用量はHR1.13(97.5%CI:0.97-1.31、p=0.12)でワルファリン群の方が良好な結果となった。


◎虚血性脳卒中 低用量群でワルファリンを有意に上回る発生率も


Keyとなる副次評価項目として設定した脳卒中+全身性塞栓症+心血管死の年間発生率は、ワルファリン群4.43%(831例)、高用量群3.85%、低用量群4.23%(796例)で、高用量では有意な低下がみられた(HR:0.87、97.5%CI:0.78-0.96、p=0.005)が、低用量はワルファリン群と有意差は認められなかった(HR:0.95、97.5%CI:0.86-1.05、p=0.32)。

副次評価項目では、出血性脳卒中の発生は、高用量、低用量ともにワルファリン群への有意な抑制を示した(高用量 HR:0.54、97.5%CI:0.38-0.77、p<0.001、低用量 HR:0.33、0.22-0.50、p<0.001)。


一方で、虚血性脳卒中の発生率は、ワルファリン群1.25%(235例)に対し、高用量群1.25%(236例)、低用量群1.77%(333例)で、高用量群では非劣性のマージンは満たしたが(HR:1.00、0.83-1.19、p=0.97)、低用量群ではHRが1.41で、有意にワルファリンを上回る発生率となった(97.5%CI:1.19-1.67、p<0.001)。
全死亡は、ワルファリン群4.35%(839例)、高用量群3.99%(773例)、低用量群3.80%(737例)で有意差はみられなかった(高用量 HR:0.92、97.5%CI:0.83-1.01、p=0.08、低用量 HR: 0.87、97.5%CI:0.79-0.96、p=0.06)。心血管死は、ワルファリン群3.17%(611例)、高用量群2.74%(530例)、低用量群2.71%(527例)で、両群ともに有意な抑制がみられた(p=0.013、0.08)。

そのほか、心筋梗塞は、ワルファリン群0.75%(141例)、高用量群0.70%(133例)、低用量群0.89%(169例)で、低用量群でワルファリン群よりも増加する傾向がみられた(HR:0.94、97.5%CI:0.74-1.19、p=0.60、低用量 HR:1.19、97.5%CI:0.95-1.49、p=0.13)。


◎大出血は高用量、低用量ともに有意な抑制示す 高用量で胃腸出血有意な増加も


安全性は、ISTH基準による大出血がワルファリン群3.43%(524例)、高用量群2.75%(418例)、低用量群で1.61%(254例)で、いずれもワルファリン群に比べて有意な発生抑制がみられた(高用量群 HR:0.80、97.5%CI:0.71-0.91、p<0.001、低用量群 HR:0.47、97.5%CI:0.41-0.55、p<0.001)。


致死的出血はワルファリン群0.38%(59例)、高用量群0.21%(32例)、低用量群0.13%(21例)で、いずれも有意な抑制を示した(HR:0.55、0.35、p=0.006、<0.001)。
頭蓋内出血も、ワルファリン群0.85%(132例)、高用量群0.39%(61例)で、いずれも有意な抑制を示した(HR:0.47、0.30、いずれもp<0.001)。


胃腸出血はワルファリン群1.23%(190例)に対し、高用量群1.51%(232例)でハザード比は1.23で有意な上昇をみせた(95%CI:1.02-1.50、p=0.03)一方で、低用量は有意な抑制がみられた(HR:0.67、0.53-0.83、p<0.001)。


ネットクリニカルベネフィット(全死亡、脳卒中、全身性塞栓症の発生抑制-大出血)は、ワルファリン群8.11%(1462例)に対し、高用量群7.26%(1323例)、低用量群6.79%(1248例)で、いずれの用量もワルファリンに対して有意に良好な結果を示した(HR:0.89、0.83、p=0.003、<0.001)。

重篤な有害事象は、ワルファリン群18.4%(1290例)、高用量群17.3%(1212例)、低用量群18.3%(1282例)で有意な差は認められなかった。肝機能値上昇についても、有意差は認められなかった。そのほか、試験終了後はINR値に応じてワルファリン、または新規抗凝固薬に移行する期間が30日間あったが、その間に発生した主要評価項目は、ワルファリン群0.16%(7例)、高用量群0.15%(7例)、低用量群0.15%(7例)で、有意差はみられず、投与期間終了後の影響はみられなかった。


◎Hylek氏「低用量は虚血性脳卒中発生抑制の有効性を欠く」Elaine M.Hylek氏


Discussantとして登壇したBoston University School of MedicineのElaine M.Hylek氏は、他の新規抗凝固薬の臨床第3相試験「RE-LY」(ダビガトラン)、「ROCKET AF」(リバーロキサバン)、「ARISTOTLE」(アピキサバン)の結果を引き合いに同試験の特徴を説明した。
登録患者の脳卒中、全身性塞栓症の発生リスクについては、CHADS2スコアが2以上の中等度~高リスクであると説明。これは、RE-LYやARISTOTLEに比べ高リスクである一方、リバーロキサバンのROCKET AFと比べると低リスクであるとした。そのほか、TTRは、これまでの試験すべてを上回る高率だったとし、同試験の質の高さも説明した。

その上で、エドキサバン低用量(30mg群)では虚血性脳卒中の発生がワルファリン群に比べ、約40%多いことを指摘し、「エドキサバン30mgは、虚血性脳卒中の発生抑制効果を欠く」と指摘。一般的に抗凝固薬は、有効性が高いと出血リスクが高くなるなど、天秤のようにバランスをとることが重要視されている。Hackey氏は、この結果から逆に大出血の発生率がワルファリンに比べて大きく下回ったことが説明できるとの見解も示した。


ディスカッションでは、低用量の有用性をめぐる議論がみられた。Giuglianoは、低用量で虚血性脳卒中の発生率が増加したことを認めた上で、出血性脳卒中が減少したことや、死亡例が少なかったことを引き合いに、「出血リスクが高い患者に対しては、低用量も選択肢となる」との考えを示した。その上で、「私は60mgが好きだ」と述べ、高用量の有効性を強調した。

  

◎第一三共 2013年中の承認申請予定 


同剤を開発する第一三共は同試験の結果に加え、症候性静脈血栓塞栓症(VTE)患者の再発予防効果を検討した「HOKUSAI VTE」のデータに基づき、日・米・欧において2013年度中に承認申請する予定。同社のグローバル研究開発責任者の専務執行役員グレン ゴームリー氏は弊誌の取材に対し、抗凝固薬は有効性と安全性のバランスの上で成り立っていると説明。60mgについては、有効性と安全性のバランスが取れているとした一方で、30mgでは安全性が高いために、有効性が比較的低くなったとの見解を示した。ただし、対照薬であるワルファリンは脳卒中の発生をプラセボに比べ60%以上抑制することから、脳卒中の発生率が有意に高まったが、同剤も十分に脳卒中発生抑制効果をもつとの見解を示した。その上で、高用量群で低体重などの原因で減量した症例では一貫した有効性を示したことも強調した。


承認用量については、直接トロンビン阻害剤・ダビガトランでは日米欧では承認用量が異なることも引き合いに出し、同様に承認用量が地域によって異なる可能性を視野に入れている姿勢も示した。
 

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