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【AHAリポート】スタチンを用いた強化脂質低下療法 標準療法に比べ腎障害の増加認められず

公開日時 2013/12/20 07:00

急性冠症候群(ACS)発症患者に対する、スタチンを用いた強化脂質低下療法は、標準脂質低下療法に比べ、懸念されていた血清クレアチニン(sCr)値の上昇や腎障害の増加はみられないことが示された。「PROVE IT-TIMI22」、「A-to-Z」の2試験を対象に行った事後解析から分かった。米国・ダラスで11月16~20日の日程で開催された米国心臓協会年次集会(AHA2013)で11月20日に開かれたセッション「Clinical Science Special Report」で、米国Brigham and Women’s HospitalのAmy Sarma氏が報告した。


高用量スタチンの投与は、2013年米国心臓病学会(ACC)/AHA合同ガイドライン(GL)で▽75歳未満の心血管疾患を有する患者、▽40~75歳で10年間の心血管疾患発症リスクが7.5%以上の患者に対する一次予防、▽LDLコレステロール(LDL-C)値≧190mg/dLの患者―に対して推奨されている。多面的な効果(プレイオトロピック・エフェクト)として、内皮機能改善と酸化ストレスの減少による、腎保護効果も期待されている。一方で最近、大規模観察研究で、高用量スタチンが、腎障害発生のリスクを上昇させる可能性が示唆され、議論となっている。


Sarma氏らは、高用量スタチン投与例が、観察研究では低用量スタチン投与例と比べ、健康状態が不良である可能性があることを指摘。ACS後の患者を対象に実施した「PROVE IT-TIMI22」、「A-to-Z」の2つの大規模臨床試験について、積極的脂質療法を実施する群と標準的な脂質療法を実施する群にランダムに割り付けられた群において、血清クレアチニン(sCr)値と推定糸球体濾過率(eGFR)値から腎障害の頻度を検討した。


PROVE IT-TIMI 22は、ACS患者4162例を発症後10日以内にプラバスタチン40mg(標準療法)2063例、アトルバスタチン80mg(強化療法)2099例の2群に無作為に割り付け、追跡した。追跡期間は平均2年間。


A-to-Zは、ACS患者4497例を発症後5日以内に①プラセボ4か月間投与後、シンバスタチン20mg投与2232例②シンバスタチン40mg1カ月投与後、シンバスタチン80mg投与2265例―の2群に無作為に割り付けた。追跡期間は、中央値2年間。解析は実際に治療が行われた患者に限定して実施した。


患者背景は、平均年齢がPROVE IT-TIMI22の標準療法群58.3歳、強化療法群58.1歳、A-to-Zの標準療法群60.6歳、強化療法群60.2歳だった。糖尿病患者は18%、18%、24%、23%。sCr値は、1.04mg/dL、1.03mg/dL、1.14mg/dL、1.14mg/dL、eGFR値は79.0ml/min/1.73㎡、80.0ml/min/1.73㎡、 60.1ml/min/1.73㎡、60.3ml/min/1.73㎡で、糖尿病患者がA-to-Zで多い傾向を受け、sCr値やeGFRにも2試験の間で違いがみられた。


eGFRの値の分布をみると、eGFR≧90ml/min/1.73㎡はPROVE IT-TIMI22で28%、A-to-Zでは9%にとどまり、一方でeGFRが30~59ml/min/1.73㎡が14%、59%だった。ただし、eGFRが15~29ml/min/1.73㎡の患者はPROVE IT-TIMI22では登録されておらず、A-to-Zでは2%にとどまった。



◎sCr値の有意な増加 いずれの解析でも認められず


sCrについては、PROVE IT-TIMI22では、強化療法群、標準療法群ともに、投与開始1か月後まで上昇がみられたが、その後減少に転じ、16か月まで継続的に低下した。16か月時点でのベースライン時からの変化率は標準療法群-3.85%、強化療法群-5.83%で、強化療法群でいずれのポイントでも低下の度合いは大きかったものの、有意差は認められなかった(p=0.67)。

A-to-Zでも30日後まで上昇後、減少に転じたが、24か月時点でベースライン時点に戻るにとどまり、改善までは示せなかった。24か月時点での変化率は標準療法群-0.87%、強化療法群-0.88%で有意差は認められなかった(p=0.87)。

腎障害の発生として規定したsCr値1.5倍以上の上昇が認められた割合は、PROVE IT-TIMI22で標準療法群2.45%、強化療法群2.84%(オッズ比(OR):1.16、95%CI:0.60-1.38、p=0.46)、sCr値2倍以上の上昇は0.33%、0.33%(OR:0.98、95%CI:0.32-3.03、p=0.98)、sCr値3倍以上の上昇は両群ともにみられなかった。


A-to-Zでは、sCr値1.5倍以上の上昇が標準療法群2.28%、強化療法群2.08%、(OR:0.91、 95%CI:0.60-1.38、p=0.66)、2倍以上の上昇が0.34%、0.43%、(OR:1.25、95%CI 0.47-3.38、p=0.65)、3倍以上の上昇が0.1%、0.28%(OR:2.93、95%CI 0.59-14.54、p=0.29)で、いずれも有意差は認められなかった。


Sarma氏らは、A-to-Z試験は、標準療法群で試験開始から4か月間プラセボが投与されていることを指摘。この期間をプラセボ対照試験としてみた上で、再解析を行った。その結果、sCrが1.5倍以上上昇は標準治療群1.31%、強化療法群1.09%(OR:0.83、95%CI:0.47-1.45、p=0.51)、sCrが2倍以上上昇は0.1%、0.33%(OR:3.42、95%CI:0.71-16.48、p=0.18)で、sCr2倍以上でやや強化療法群の方が高率だったものの、いずれも有意差は認められなかった。


◎腎障害ハイリスク症例でも有意差認められず


ベースラインのeGFR値<60ml/min/1.73㎡の腎疾患ハイリスク患者を対象に行った解析でも、sCr値が1.5倍以上上昇した症例は、PROVE IT-TIMI22の標準療法群1.93%、強化療法群3.42%(OR:1.79、 95%CI 0.59-5.56、p=0.29)、sCrが2倍以上上昇は0.39%、1.14%(OR:2.94、95%CI 0.31-33.3、p=0.62)だった。


一方、A-to-Zでも、sCr値が1.5倍以上上昇した症例は標準療法群1.97%、強化療法群1.25%(OR:0.63, 95%CI:0.33-1.18、p=0.15)、sCr値が2倍以上上昇は0.24%、0.31%(OR:1.32, 95%CI: 0.30-5.92、p=1.00)で、いずれも有意差は認められなかった。


2試験を合わせて腎関連の有害事象、重度の有害事象発生頻度を検討したところ、最初の4か月は、標準療法群0.42%、強化療法群0.48%(OR:1.15、95%CI: 0.61-2.16、p=0.67)、追跡期間を通じた場合は0.86%、0.92%(OR:1.06 、 95%CI:0.68-1.67、p=0.78)で、いずれも標準療法群と強化療法群で有意差は認められなかった。


試験の限界として、Sarma氏は、sCr測定は事前に規定された時点に行われ、測定と測定の間の変化は明かではないことや、2試験ともに、除外基準としてsCr≧2mg/dLと規定されており、eGFR<30ml/min/1.73㎡の患者はほとんどいなかったことを挙げた。その上で、有害事象データベースをもとにした研究者報告の腎疾患イベントには一貫性があったとした。


Sarma氏は、「2つの大規模試験において、スタチン強化療法は、sCr値を上昇させることも、腎疾患のリスクを上げることもなかった」と説明。「最近改訂された脂質管理GLで推奨されている高用量スタチンが、腎関連の有害事象を増加させず、安心して投与できることを示唆する知見であり、意義がある」と結論づけた。


◎Discussant・Chang氏「個々の患者でリスクベネフィット勘案を」


Discussantとして登壇したStanford UniversityのTara I. Chang 氏は、本研究について、タイムリーな問題について行われた試験と評価した上で、試験の限界を指摘。①一般的な急性心筋梗塞患者と比べ、腎疾患のリスク因子である高齢者、女性、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)の割合が低率②重度の腎関連有害事象が非常に少なく、信頼区間が大きい③高用量、強化療法の定義が試験によって異なる―などを挙げた。


一方で、カナダで200万人を対象に実施されたDormuthらの報告(OR:1.11)、米国の270万人を対象にしたLaytonらの報告(OR:1.12、スタチン非投与患者との比較)など腎障害の有意な発生を指摘した臨床試験と同じ傾向を示しているとの見解も示した。


その上で、今回の結果に対し「必ずしも異論を唱えるものではないが、慎重に投与する必要はある」と自身の考えを表明。個々の患者について、「心血管ベネフィットと、腎あるいは他の有害事象のリスクを考慮する必要がある」と指摘した。さらにGLで推奨されたことで、より多くの患者が高用量スタチンを投与されることになるとした上で、「急性腎障害(AKI)高リスクの患者を診療する機会が増える可能性を念頭におく」ことの必要性も付け加えた。

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