10月に全米一斉にスタートしたState Exchange：オンライン医療保険登録サイト。無保険者数の低減効果はもちろんだが、ポジティブなサイドイフェクトのひとつは転職や起業の増加による労働市場の流動化だ。相次いで発表されている調査レポートによれば、オバマケア施行で、これまで医療保険を失うことを怖れて仕事を辞められない、いわゆるジョブロックが大幅に緩むとみられているからだ。レポートは労働市場の流動化気運はすでに高まっており、経済にも好影響を与えるだろうと予測している。（医療ジャーナリスト　西村由美子）

確かに周囲にも生きた実例が複数いる。カリフォルニア州でソーシャルワーカーとして働いてきた筆者の知人のジェニーは、数年前から独立して「アルコール依存症のクリニック」を開設したいと考えていた。ニーズはあり、成功する自信もあったが、仕事を辞められない事情があって、あきらめてきた。息子の喘息だ。彼女が勤務先の医療保険をなくしたら、息子は2度と保険に加入できない怖れがあったからだ。だが、オバマケアで状況は一変。息子は、”Covered California”で個人加入の医療保険に加入でき、ジェニーは独立の準備を始めた。

同様のエピソードがニュークタイムズにも紹介されている。コンサルタントのためのジョブ・マッチング・サービス”Skillbridge”のファウンダーの1人ラジーブは、３週間前にニューヨーク州のオンライン・サイトで医療保険への加入を果たした。起業してからずっと無保険だった。「歯科もカバーされる！」と嬉しそうに記者に語ったラジーブは、さらに「これで自転車にも乗れるし、フィットネスクラブにも行ける」。もしも怪我をしたらと考えると、怖くて運動もできず、自転車にも乗れなかったというのである。