骨粗鬆症薬・イベニティに「適正使用のお願い」 重篤な脳・心血管系事象発現 死亡例も
公開日時 2019/07/25 03:52
アステラス・アムジェン・バイオファーマ(AABP)とアステラス製薬は7月24日、骨粗鬆症治療薬・イベニティ皮下注(一般名:ロモソズマブ(遺伝子組換え)の投与後に、重篤な脳・心血管系事象が相次いだことを受け、「適正使用のお願い」を発出し、注意喚起を行った。2019年3月の発売から3か月間で、重篤な脳・心血管疾患は11例報告された。同剤との関連が否定できない死亡のうち、心血管事象によるものが1例含まれていた。両社は、虚血性心疾患、脳血管障害の高リスク患者への投与に際し、「有益性と危険性を考慮して、慎重に判断」するよう呼びかけた。胸の痛みや突然の意識低下などがみられた場合には速やかな受診を患者に指導することも求めた。
両社が市販直後調査をもとにまとめた市販後国内副作用発現状況一覧によると、3月4日の発売から6月3日までに、重篤な心血管系事象が11例。男性4例、女性7例で、70歳から93歳、投与開始のその日から4日の間に発現している症例が多い。この中で71の歳男性は、投与開始から1日で発現して死亡し、イベニティとの関連が否定できないと判断した。
◎他施設で心血管疾患治療中の患者にも注意を
この状況を受け、医療従事者向けサイトとPMDAのサイトに「適正使用のお願い」の文書を掲載するとともに、MRが医療機関に説明し、医療従事者に安全対策への協力依頼を開始した。
具体的には▽虚血性心疾患、脳血管障害のリスクが高い患者への投与には、有益性と危険性を考慮して慎重に判断する、▽特に、他の医療機関で虚血性心疾患、脳血管障害の治療中または、虚血性心疾患、脳血管障害の発現リスクが高い疾患の治療中である場合には、互いに連携し、処方の必要性を慎重に判断する――ことを呼びかけた。さらに、患者には▽心疾患などで他施設を受診する際は、予め作成してある患者カードを携行、提示する▽胸の痛みや突然の意識低下などがみられた場合には速やかに受診する--ことを指導するよう依頼した。
同剤の添付文書では、海外で実施されたアレンドロン酸ナトリウムを対照とした比較試験において、心血管系事象(虚血性心疾患又は脳血管障害)の発現割合がイベニティの投与群で高い傾向があることなどの注意記載がされている。
同剤の製造販売元はAABPで、販売元はアステラス製薬。効能・効果は「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」。