線虫が、がんの検査・診断・治療・予後を根本的に変えてしまう時代がやって来る
公開日時 2020/01/22 05:00
情熱的読書人間榎戸誠線虫の嗅覚の発見者『がん検診は、線虫のしごと――精度は9割「生物診断」が命を救う』(広津崇亮著、光文社新書)は、そう遠くない未来に、線虫ががんの検査・診断・治療・予後を根本的に変えてしまうと、高らかに宣言している。線虫の驚くべき嗅覚を発見・証明した研究者・広津崇亮の手になるだけに、本書は圧倒的な説得力を有している。線虫はがんの匂いが好き「2013年7月。私は大学の研究室で、来る日も来る日も実験を行ない、小さな白い生物がシャーレの中央から端へと動いていく様子を見つめていました。小さな白い生物の正体は、『C.elegans(シー・エレガンス)』という名前の線虫。体長わずか1ミリ。目がないかわりに、鋭敏な嗅覚を持つこの線虫が、がん患者の尿には近寄っていき、健常者の尿からは遠ざか...