【緊急寄稿 米ミシガン発現地レポート】新型コロナ パンデミック 病院やヘルスケア施設で医療用品、圧倒的に不足
公開日時 2020/03/25 04:51
米国在住 ヘルスケアビジネスコンサルタント
MRG Associates, Inc. 代表取締役社長
森永 知美
◎州知事が外出禁止令を発動
窓の外は静かに雪降るなか、とうとう、ここミシガン州でも本日(3月23日現在)、州知事により外出禁止令が発動された。今夜半から最低でも3週間、4月13日まで施行される。この週末で一気にCOVID-19の感染者数が倍増したためである。長年在住したカリフォルニア州では、数日前に一足早くその措置が取られ、ニューヨーク州やイリノイ州、ネバダ州もそれに続いていたため、いつかはこうなると思っていた。
◎ミシガン州の感染者は1328人、死者15人 先週末から倍増
現在のミシガン州の感染者数は1328人、死者は15人。3月20日時点の感染者数は549人だったので、この土日で倍以上に増えている。同州で最初の感染者が報告されたのは、他州と比べると遅く3月10日だった。同日に州政府は緊急事態宣言を出し、11日に小、中、高校の休校を通達、その前後に殆どの主要大学は自主的にキャンパスでの授業をキャンセルし、出来る限りオンライン授業に切り替えた。そしてやっと13日トランプ大統領が国家非常事態を宣言し、会合などの集まりを10人未満に制限するガイドラインを発表した。ミシガン州は平行して、テイクアウトとデリバリー以外の飲食サービスやジムなどの一時閉鎖を要請した。これに伴い、ビジネスオフィスも続々と在宅勤務に移行し、18日には米国3大自動車メーカー(ビッグ3)が全米の全工場の一時閉鎖を発表した。
◎大統領選挙でカギ握る「ラストベルト」地帯 忍び寄る新型コロナの脅威
ミシガン州が一体どんな所なのかご存知ない方も多いと思うので少しご紹介すると、最も大きな都市は、ビッグ3の本拠地があるデトロイトと言えば少しイメージが湧いてくるのではないか。ここは、今年の大統領選挙でもカギを握る「ラストベルト」地帯の中にある。五大湖のうち4つの湖に面しており、東側にはカナダ国境がある。冬は厳しく長いが、春夏秋は緑が美しく自然豊かで、アウトドアのアクティビティーが盛んだ。
州人口は約1000万人で、全米の人口ランキングでは10位、1位のカリフォルニア州の約4分の1でしかなく、アウトブレイクが現在深刻なニューヨーク市の人口より僅か130万人ほど多いだけだ。人口の大部分がデトロイトとその周辺地域、および州南部に集中している。筆者が在住する地域は、デトロイト中心部から車で30~40分ほどに位置し、自動車関連ビジネスが盛んで人口も多いが、昨年ロサンゼルス(LA)から引っ越してきて受けた印象は、「なんて人が少ないんだろう・・・」だった。完全なる車社会だが、LAの高速道路が24/7渋滞しているのに対し、こちらの渋滞は通勤時間が過ぎればあっという間に解消される。スーパーやレストラン、カフェ、バー、ショッピングモール、量販店などの商業施設に集まっている人の数も、波はあるものの総じてLAと比べれば少ない。通常は、人と人との距離は保たれている。
◎州知事「推定で人口の70%が感染、うち100万人が入院」 医療体制が崩壊する!
州知事のグレッチェン・ウィットマー氏は今日の記者会見で、このままの状態でいけば推定で人口の70%(700万人)が感染し、そのうち100万人が入院することになるが、救急用ベッドはミシガン全体で2万5千床しかなく、事態を深刻に受け止め迅速に大々的な対策を取らなければならないと警告した。
感染拡大が深刻な州はいずれも、ウイルス検査をはじめ、医療用マスクや手袋、人工呼吸器などの医療用品が圧倒的に不足しており、連邦政府からの支援が必要になっている。同氏は一例として、National Strategic Stockpile(公衆衛生の緊急事態に州や市などの要請に対して医療用品を供給する連邦政府組織)から、先週ある医療施設が受け取ったマスクや手袋、ガウンなどの医療用品が、1回のシフト分でしかなかったと窮状を訴えた。
◎州同士で医療用品の取り合いも
ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏は、「もはや州同士で医療用品の取り合いになっている」とコメントしている。
ドライブスルーの検査場をはじめ、ウイルス検査のシステム拡大が進められているが、検査を受けられるのは咳や発熱などの症状を呈する患者だけである。会見に同席したミシガン州保健社会福祉局Chief Medical ExecutiveのDr. Joneigh Khaldunによると、現在の検査状況は一日あたり約1000例であり、検査キットと検査体制の確保が間に合っていないことを認めている。ちなみに筆者の夫の同僚は家族に感染者が出たが、その同僚は症状が出ていないということで、まだ検査を受けることができていない。
感染拡大が刻々と進むなか、州政府や連邦政府がいつ何時新たな指針を発表するか分からないため、CNNとTwitterから目が離せない。次々と発表される症例報告や医療システムに関する論文を、くまなく読む毎日が続いている。