共和クリティケアの受託製造品で相次ぐ自主回収 エーザイ、ケミファ、第一三共エスファ等複数社に拡大
公開日時 2020/07/29 04:53
共和クリティケアが受託製造するソフトバッグ製剤に環境モニタリング試験の不備が相次いで発覚し、製造販売メーカーが当該製品を自主回収する動きが拡がっている。7月27日に自主回収を開始した沢井製薬、東和薬品に続き(
本誌既報)、翌28日にはエーザイ、日本ケミファ、第一三共エスファ、
日新製薬、マイラン製薬、陽進堂、キョーリンリメディオ、大興製薬、富士薬品が自主回収(クラスⅡ)を決定。製造元の共和クリティケアも当該自社品を自主回収すると発表する事態となった。ミクス編集部の取材では、「20社超、60品目近く」が該当するとみられ、自主回収に踏み切る企業や製品が続くとみられる。前代未聞の事態に医薬品の安定供給を懸念する声が広まっている。
◎「試験は特定の製品に行うものでない」広範な製品への波及を示唆
今回の相次ぐ自主回収は、製造委託された共和クリティケアの厚木工場(神奈川県)が発端とされる。2017年1月以降、同工場のソフトバッグ製剤の薬液充填エリアなどで環境モニタリング試験(浮遊微粒子、付着菌・浮遊菌・落下菌)に不備がある事が社内調査で判明した。本誌取材に対し同社は、自主回収は製造販売元の判断で行われ、秘密保持契約を締結していることなどを理由に明言を避けながらも、試験は特定の製品に行うものではないことから、広範な製品へと波及する可能性は否定しなかった。ただ、同社は「データに不備はあったが、全てのロットで製品試験(無菌試験、不溶性微粒子試験を含む)に適合しており、また、薬液充填後に最終滅菌を実施していることから、重篤な健康被害が発生する可能性はないと考えている。これまで本件に起因する健康被害の報告はない」としている。
◎7月13日に判明 発覚以降、製造・出荷を停止
同社によると、今回の問題は、新任の生産管理部門の責任者が現場確認を進めるなかで7月13日に判明。発覚以降の「製造、出荷は止めている」(同社広報部)という。神奈川県庁とは対応について協議を進めていると説明。市場に大きな製品があることから供給再開に向けての調整を進めているという。特に、沢井製薬と東和薬品が26日から回収を開始した脳保護薬・エダラボンはこの日、陽進堂、キョーリンリメディオ、第一三共エスファ、日新製薬、日本ケミファが自主回収を開始しており、現段階で7社が自主回収を行っており、市場への影響が懸念される。
◎ソフトバッグ製剤問題から浮かび上がる課題 委託製造や共同開発が混在する実態
この問題から、ソフトバッグ製剤をめぐる国内の安定供給の課題が透けて見える。本誌の取材によると、エダラボンの製造は、共和クリティケアのほかニプロなど、少数の企業に集中している。後発品の参入により薬価は引き下がる一方で、ソフトバッグ製剤の設備投資はかさむ。さらに、細かい特許が残る部分があり、企業が単独で製造するハードルを指摘する声もある。委託製造や共同開発などが混在していることも、複数企業の複数製品に波及する要因となり、問題をより複雑化しているようにも見える。
なお、共和クリティケアは2019年8月に当時の親会社である共和薬品から発行済株式の100%をネオファーマグループの傘下にあるneo ALA社に譲渡する契約を交わしていた。
【訂正】下線部の企業名の記載に誤りがありました。訂正します(30日12時 訂正済み)