英NICE Tecentriqを尿路上皮がんの適応で推奨
公開日時 2021/10/07 04:48
英国立医療技術評価機構(NICE)は9月30日、ロシュ社の抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体製剤Tecentriq(アテゾリズマブ)について、局所進行もしくは転移尿路上皮がんの適応でNHS(国民保健サービス)における通常使用を推奨する最終ガイダンス案を発表した。
NICEは、同剤を推奨する症例を、がん細胞上におけるPD-L1発現が5%以上でプラチナ製剤を含む化学療法が不適な場合とした。
同剤はすでにNHSにおける抗がん剤基金(CDF)のもとで使用可だが、プラチナ製剤を含む化学療法よりも最大8か月延命した可能性を示すデータが収集され、当該企業から同データが追加提出されたため推奨することになった。
NICEのMeindert Boysen医療技術評価センター長は、「私は、この種の尿路上皮がん患者にこの延命療法を推奨できることを喜んでいる。NICEの独立評価委員会は、臨床専門医や患者からこの種のがん患者にアンメットメディカルニーズがあることを聴いた。彼らは、患者が、延命という観点からばかりでなくQOL(生活の質)を向上させるという観点からも前向きの影響を持つ新たな治療選択肢に価値を置いていることを承知している」と話した。さらに、この決定がCDFでの使用におけるエビデンス収集後になされたことに言及、「私は、我々が、この種の尿路上皮がん患者に(CDFでの)一時的な薬剤のアクセスを保障するばかりでなく、いまやNHSでの通常使用を推奨できることに喜んでいる」とコメントした。
尿路上皮がんは、膀胱における最もありふれたがんで、膀胱がんの90%を占める。英国では2013年には1万300例が膀胱がんと診断された。毎年、30例の新規がん診断のうち膀胱がんは1例を占める。
なお、米国では、FDA(食品医薬品局)が2016年に同剤について、ロシュ社に対して市販後のフェーズIII試験IMvigor211の解析結果提出を条件として、転移性尿路上皮がんの適応でフェーズII試験IMvigor210の結果に基づき迅速承認していた。ロシュ社は、2021年3月8日、IMvigor211試験で全生存期間の有意な延長が示されなかったことを理由にFDAと協議の結果、転移性尿路上皮がんの承認を撤回すると発表した。現段階では、尿路上皮がんの適応については、英米で評価が分かれた格好となっている。