サワイHD澤井会長 適切な市場形成阻むAGは26年度改定で「制度運用変更を」 不採算品再算定見直し訴え
公開日時 2025/10/27 05:30

サワイグループホールディングスの澤井光郎代表取締役会長兼社長は本誌取材に応じ、2026年度薬価制度改革を念頭に、AGを問題視し、「供給不足を解消するためにも、制度の運用を変更する時期に来ているのではないか」と訴えた。AGが特許切れ後のシェア80%を獲得する品目もあり、残ったシェアを後発品が分かち合った結果、少量多品目構造に陥っていると説明。「制度的な問題があるなかで、原因の対策なくして、少量多品目構造を解消するのは難しい」と指摘。バイオAGをめぐる課題も含めた早期対応を訴えた。このほか、人件費や原材料費が高騰するなかで、低薬価品というカテゴリーに合わせた不採算品再算定のあり方を検討する必要性も強調した。
Monthlyミクス11月号(11月1日発行予定)の巻頭特集ではジェネリック業界の再編をテーマに、製薬各社のトップにインタビューを行いました。澤井会長のインタビューの一問一答も掲載を予定しています。
◎「AGはジェネリックの将来を見えなくしている」 バイオAGの問題も
AGをめぐっては、が特許切れ後のシェアの50%、60%を占める成分が多く、シェア80%を獲得する品目も中にはあると説明。残ったシェアをジェネリックメーカー5社、10社が取り合えば、1社のシェアが1%を切ってしまうこともある。「少量生産にならざるを得ない状況を、AGが作り出している」と指摘。「制度的な問題があるなかで、原因の対策なくして、少量多品目構造を解消するのは難しい。原因を解消する対策が必要だ」と訴えた。今後の投資の方向性も踏まえて、「AG問題は、今後のジェネリックのあるべき姿を考える上でも、将来を見えなくしてしまっている」と危機感を露わにした。
バイオAGの問題も指摘。「バイオ製品では低分子以上に、AGが使われる可能性が高い。バイオシミラーの開発費は百億規模にのぼるが、売れなければ開発コストを回収できない。企業として経営が厳しい中で、そこまでのリスクは負えない。バイオAGの存在がバイオシミラーを上市しにくい状況を生んでいる」と述べた。
◎26年度薬価規定で後発品体制加算のカウント除外、即選定療養なども一考
そのうえで、26年度薬価制度改革での具体的な対応として、「例えば、後発医薬品使用体制加算や後発医薬品調剤体制加算で後発品にカウントしないことや、AGが収載された時点で該当する長期収載品に即、選定療養を適用することなども一考ではないか」と述べた。
◎不採算品再算定はカテゴリー別考慮も 流通経費「ジェネリックでは賄えない」
また、原材料費や人件費が高騰する中で、不採算品再算定を見直す必要性も指摘した。不採算品再算定は原価計算方式で算定され、平均流通経費6.9%という数字が用いられているが、「ジェネリックでは、医薬品卸の物流費が賄えない」と強調。「不採算品再算定は新薬を想定しており、低薬価品を想定したルールになっていない。26年度薬価制度改革でカテゴリー別の薬価制度が議論される中で、不採算品再算定もカテゴリー別の制度することを考えてもよいのではないか」と提案した。
澤井会長は、「薬価が20円以下の低薬価品では、採算を取るために流通経費は現行の3倍程度、原価の20 ~ 25%は必要ではないか」と指摘。「ジェネリックの方がコストを低減できるのではないかとの指摘もあるが、人件費や流通経費は新薬と大きな違いはない。制度の課題が見えてきているだけに、26年度改定にあわせて見直しを求めていきたい」と強調した。
一方で、最低薬価については、引上げにより「これから業界再編で退場していただくような企業も、安定供給に貢献する企業も等しく恩恵を受ける。そうではなく、安定供給に貢献する企業を評価するためには、最低薬価よりも不採算品再算定への対応をきちんとしていただきたい」と述べた。
◎供給不安に「個社でできるのは品目統合」 大量生産に舵切れなければ「30年後も薬を作るのは難しい」

供給不安に対して、「個社としてできることは、製造所の集約化をすすめ、品目統合をすること」との考えを示す。
実際、沢井製薬は日医工と9月10日、後発品の製造所集約と品目統合に向けた協業に合意した。日医工は867品目、沢井製薬には771品目あり、重複品目が389品目ある。「これだけ重複しているからバーターしやすい。収支がトントンの品目は経営には寄与しないが、製造所を集約化して生産量が増えれば、コストが下がり、利益品目になる」と説明。「両社ともに規模が大きく生産量も多いため、集約化の意義は大きいと考えている」と強調した。
また、「少量多品目構造の課題解決につながるだけでなく、片寄せされた品目では生産量が増え、大量生産に舵を切ることができる」と話す。「今後、労働人口が減少する中でも同様に薬を作らないといけない。できるだけ1ロットの生産数を増やし、大量生産を行い、試験を減らすというモデルへと転換しなければ、30年後も薬を作るのは難しい」と話し、ビジネスのサステナビリティの観点からも大量生産に転換する必要性を強調した。
◎生産能力増強へ新薬メーカーの工場の提携・買収も選択肢「投資ができる唯一の企業と自負」
生産能力増強に向けた我々の選択肢としては、「今後新たな工場を建設するか、新薬メーカーの工場を買収するか、ベトナムなど成長市場に新たに製造設備を建設するか、の3つだ」との考えを表明した。一方で、建屋も含めて大量生産ができない「中小規模の工場を有する企業との提携や買収する可能性は低い」と話す。
澤井会長は、「できるだけ経済安全保障上、国内製造をしたい。長期収載品を製造しているような新薬メーカーの工場などは、大量生産できる形になっているので、提携や買収は選択肢として考えられる」と「安定供給に向けて、自社の傘下に新薬メーカーの工場など、大量生産が可能な工場を手に入れるためには、企業が財務的にも健全である必要がある。そういう点では、ジェネリックメーカーの中で当社が一番財務的にはしっかりしており、投資ができる唯一の企業だと自負している」と語った。