高市早苗首相は10月24日、衆参本会議で所信表明演説を行い、社会保障制度の給付と負担のあり方を巡って、有識者も交えた超党派の国民会議を設置して税と社会保障の一体改革について議論する考えを表明した。また、内閣の最優先課題として物価高対策に取り組む考えを明言。「赤字に苦しむ医療機関や介護施設への対応は待ったなし」と強調し、次期診療報酬改定については、「賃上げ・物価高を適切に反映させていく」と述べながらも、「改定時期を待たず、経営改善および従業者の処遇改善につながる補助金を措置する」と述べ、施策の前倒し実施に意欲を示した。今臨時国会の会期中に補正予算案を提出する考えだ。

◎社会保障の「給付と負担」で国民的議論を　野党にも議論参画を呼び掛け

高市首相は演説で、「健康医療安全保障」を重点施策の一つに掲げた。その上で、「人口減少・少子高齢化を乗り切るためには、社会保障制度における給付と負担の在り方について、国民的議論が必要」と強調。社会保障の一体改革を国民的議論とするための会議体を発足させる考えを示し、「野党の皆様にも参加いただき、共に議論を進めてまいりましょう」と呼び掛けた。

政権与党の新たな枠組みである自民・維新の連立合意書については、「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや、電子カルテを含む医療機関の電子化、データヘルス等を通じた効率的で質の高い医療の実現等について迅速に検討を進める」と決意を示した。一方で、地域医療の問題にも言及し、「入院だけでなく、外来・在宅医療や介護との連携を含む新しい地域医療構想を策定する」と述べ、地域ごとの協議を促すほか、「医師の偏在是正に向けた総合的な対策を講じ、あわせて新たな地域医療構想に向けた病床の適正化を進める」と明言した。

◎経営悪化が深刻化する医療機関や介護施設の問題は「急を要する」　補正予算案提出へ

高市首相は、最優先で取り組む重要施策に物価高対策をあげ、特に、経営悪化が深刻化する医療機関や介護施設の問題については、「急を要する」と強調。すでに経済対策の策定に着手するよう政府部内に指示を出したことを明らかにしながら、「野党との真摯な対話と合意を積み重ねながら、速やかに対策を取りまとめ、必要な補正予算を国会に提出する」と述べた。また年末の2026年度予算編成で焦点となる診療報酬改定についても触れ、「賃上げ・物価高を適切に反映させていくが、報酬改定の時期を待たず、経営の改善および従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒しする」と約束した。

◎積極投資分野に「バイオ」　人材育成、スタートアップ振興、研究開発など多角的に支援

このほか、日本経済の強い成長の実現を目指すために、「日本成長戦略会議」の設置を表明した。また、経済成長を牽引する分野にバイオやＡＩ・半導体などをあげ、大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、スタートアップ振興、研究開発、産学連携、国際標準化といった多角的な観点からの総合支援策を講ずることで、官民の積極投資を引き出す考えも披露した。

◎「女性の健康総合センター」司令塔に性差由来の健康課題に取り組む

このほか、「攻めの予防医療」の徹底を掲げ、特に性差に由来した健康課題に取り組む姿勢を強調。2024年に国立成育医療研究センターに設立した「女性の健康総合センター」を司令塔に、「女性特有の疾患について、診療拠点の整備や研究、人材育成等に取り組むなど、その成果を全国に広げていく」と意気込んだ。