老いて規律が緩んだ体内では不法者がのさばり出す、それががんだ
公開日時 2022/01/24 00:00
情熱的読書人間榎戸誠【驚くべき書】『ヒトはなぜ「がん」になるのか――進化が生んだ怪物』(キャット・アーニー著、矢野真千子訳、河出書房新社)には、驚くべきことが書かれている。語り口は柔らかいが、がんについて重要なことが記されているので、医療関係者のみならず、がん患者とその家族、そして、幸いにして未だがん宣告を受けていない人にも広く読まれるべき一冊だ。【生物進化の随伴者】驚くべきことの第1は、がんはヒトを始めとする生物の進化の随伴者であるという巨視的な認識である。「がんは人間だけがなる現代病ではなく、生物の基本システムに最初から組みこまれたバグである・・・がんのルーツをたどると地球上に初めて多細胞生物が誕生した時点に行きつくこと、その多細胞生物の共同社会ががん細胞を生む土壌となっている」。【体内...