製薬協・田中常務理事 MRに安全性重視の「適正使用推進説明会」実施求む 会社動かしてこそ舵切れる
公開日時 2022/03/28 04:50
製薬協の田中徳雄常務理事は3月25日のヘルスケア産業プラットフォーム主催のセミナーで講演し、安全性を重視した「適正使用推進説明会」の実施を改めてMRに求めた。MRが行う医局説明会では、有効性から始まって、安全性の説明に時間を割くことが少ないとの批判がある。田中常務理事は、「“有効性・安全性”がワンフレーズに使われている」と指摘した上で、MRは「安全性、有効性というべきだ」と強調。本社が用意するスライドの順番が変えられないという声があることに対しては、「会社を動かしてこそ初めて安全性に大きく舵を切れる」と述べ、医療現場の意向を本社に伝える意義をMRはもっと感じて欲しいと呼びかけた。
田中常務理事は講演で、「MRがやる説明会の大半は、有効性から始まって、最後の時間で安全性については同種同効の薬剤とあまり変わりませんという。こんなんで何が専門家かと思う」と指摘。一方で、「残念ながらスライドの順番が変えられないと言ってくる人がいる」と述べながら、「会社につたえるのは(MR)皆さんの仕事。医療現場の医師がもっと安全性の話しを聞きたいと言うならば、会社もスライドの順番を変えることができる。それをできない会社だったら、まだまだ皆さんの現場の声を伝える力が弱いのかもしれない。会社を動かしてこそ初めて安全性に大きく舵を切れる。製薬会社、MRが変わったといわれる」と強調した。
また、「ともすれば有効性・安全性とワンフレーズで言うことがある」と述べ、「安全性・有効性と言うべきだ。適正使用推進者の仕事とは、その責任者としての使命を果たすことにある。これがMRの責任感だ」と呼び掛けた。この日のセミナーでは、厚労省の中井清人医療安全対策課長が、アンメットメディカルニーズの高い薬剤について、条件付き承認制度や特例承認などの薬事承認制度が導入されることに伴い、市販後安全対策の重要性が高まると指摘している。一方で医療現場の意識も、市販後の安全対策への意識が向いているのも事実だ。バイオ医薬などの高分子、中分子製剤や、再生医療等製品などの新たな製品が台頭する時代にあって、今後のMR活動にとって、より重要視されるのが「市販後の安全対策」となる。
◎企業主催の説明会 医師のスライドチェック「丁寧に理解求める」
田中常務理事はまた、企業主催の講演会における演者(医師等)のスライドチェック(未承認・適応外)の課題に触れた。田中常務理事は、「講演依頼する際は、講演料は自社のHP上で透明性GLに基づき公開するという応諾書をもらうのと同時に、本日の講演会は適正使用推進のための講演会であることを丁寧に説明することが求められる」と強調。ただ、「科学的根拠をもって様々な研究を行っている先生方に、俺のスライドを全部チェックするのかと言われるとなかなか返す言葉がないというのが正直なところ」と、悩ましさも滲ませた。
◎MR認定センター・近澤事務局長 MRは薬物療法におけるエンジニア
MR認定センターの近澤洋平事務局長は、「MRは薬物療法におけるエンジニアだと思う。専門性に基づき相手に対し問題解決を提案できる職種だ」と強調した。その上でセンターとして取り組むMR認定試験の制度改革について、「これまで企業が責任をもってゼロから教育してきたが、これだけ専門性を必要とされる職種なら、MRの門戸を叩く前に、しっかりとした基礎的な知識を身につけてから就職してもらいたい」と述べた。一方で企業側に対しては、「(学生時代にMR認定試験をパスするような)覚悟をもった優秀な学生を募り、企業の中では実践的な教育で信頼されるパートナーづくりの教育に集中投資して欲しい」と強調した。