物部真一郎高知大学医学部病院経営学プログラム特任准教授／精神科医最近、臨床において患者とのやりとりにむつかしさを感じる時があり、医療者として反省している。そこで今月は、医療における“情報の非対称性”について考えてみたいと思う。皆さんは“情報の非対称性”という言葉を聞いたことはあるだろうか。情報の非対称性とは、製品やサービスの売り手と買い手の間などでの情報量の格差を指す言葉である。言い換えると、双方で情報と知識の共有ができていない状態ということになる。ほとんどの場合では、売り手には正しい情報が多く、買い手には不確かな情報が少量という状況に陥る。このような状態下では、売り手が製品に関する情報を偽って宣伝したとしても、買い手はそれに気がつくことができ...