国際医療研究センター・大杉情報センター長 「糖尿病や生活習慣病はオンライン診療と親和性が高い」
公開日時 2022/10/26 04:50
国立国際医療研究センター糖尿病研究センターの大杉満糖尿病情報センター長兼糖尿病内分泌代謝科第三糖尿病科医長は10月25日、アボットジャパン・MICIN主催のメディアセミナーで講演し、「糖尿病や生活習慣病は今後進むと考えられるオンライン診療と非常に親和性が高い部分がある」と強調した。その理由として、2000年以降に生まれた世代のスマホ利用率が高いことをあげた。また、コロナ禍を経た2022年度診療報酬改定で基本診療料が対面に近づいたことから、「これが使えるようになったということが大きい」との認識を示した。
◎ビデオ会話に抵抗のない2000年以降に生まれた20代が全世代をリード
講演で大杉情報センター長は、オンライン診療を取り巻く環境とこれからの糖尿病治療について触れた。同氏は、新型コロナ感染症の第1回緊急事態宣言が発令された2020年4月以降、テレビ電話(ビデオ通話)の利用率が全世代で一気に増加し、その後も上昇していると説明。スマホを使ってビデオ会話するのに抵抗のない2000年以降生まれの20代が全世代を引っ張っていることから、オンライン診療が受入れられやすい状況にあると指摘した。
◎完全オンライン化「まだまだ課題が多い」として否定
医療のオンライン化の普及がもたらす今後の糖尿病治療については、「我々が(1回の受診で)糖尿病の患者さんと対話するのは5~15分ぐらい。他に看護師さんと話す時間を含めても30分ぐらいだ。そうすると1か月に1回の受診では99%以上の時間は自分で自分の血糖を管理していることになる」と指摘。いつでも、どんな時でも「見える」血糖管理で安心を提供するためには、「オンライン診療というものが糖尿病などの診療と親和性が高いんじゃないかというふうに考えている」と強調。患者との対話を守りながら、通院の負担を軽減し、治療をサポートすることで糖尿病がない人と同じ健康寿命を保つとの見解を示した。ただ一方で、完全にオンライン化することについては「まだまだ課題がある」として否定した。
◎患者個々のライフログ取得が診療を変えるかも
一方でデジタルツールを活用した糖尿病の血糖管理については、スマホの機能などで患者自身がライフログ(歩数、睡眠時間等)を集積することが可能になったと述べ、「今まで我々の職業上の様々な経験から、この人はこんな生活をしているんじゃないかと想像していたものが、今後は実際にこの人はこういう生活をしているということがわかる時代が来る」と指摘。「こんな時に体重が増えやすい、血糖値が上がりやすい、ということがある程度把握できるようになると、私の専門分野で言えば糖尿病の診療というものはかなり変わる」と強調した。