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愛知県がんセンター 希少がん対象の医師主導リモート治験に4症例登録 がんゲノム医療の未来への布石

公開日時 2023/02/15 04:53
愛知県がんセンターは2月14日、希少がんを対象とした医師主導のリモート治験を通じて4症例が登録されたことを報告した。愛知県がんセンターの進めるリモート治験は、オンライン診療を活用し、パートナー医療機関のかかりつけ医との緊密な関係で患者をサポートする、いわゆる“D to P withD”モデルで、全国の患者が一度も来院することなく、治験に参加できる仕組みだ。リモート治験を開始して1年が経過し、愛知県がんセンター薬物療法部の谷口浩也医長(写真)は、「登録は非常に順調。この枠組みあってこその登録ペース」と述べ、全国から必要な患者が効率的に治療にアクセスできるとの見方を示す。「治験のような高度先進医療の提供、特に専門医の少ない希少がん診療に役立つのではないか。治験だけにとどまらず、一般的な診療の場面にどんどんどんどん広げていきたい」と意欲もみせた。

リモート治験を実施しているのは、西日本がん研究機構(WJOG)の支援する医師主導治験「WJOG15221M(ALLBREAK)」試験。非小細胞肺がん(NSCLC)を除くALK融合遺伝子陽性の進行・再発固形腫瘍を対象に、ブリグチニブの薬事承認を目的に有効性・安全性を検証する多施設共同第2相バスケット試験だ。2022年5月から症例登録を開始し、30か月で14例を組み入れる計画としている。

◎谷口医長「無謀かなと私も最初思っていた」 C-CAT調査結果通じ情報提供

対象である、非小細胞肺がん(NSCLC)を除くALK融合遺伝子陽性割合は0.2%で、谷口医長が、「この対象に治験を行うということ自体がかなり無謀かなと私も最初思っていた」というほどの希少がん。愛知県がんセンターを含む全国10施設で治験を実施するが、「非常に限られた患者さんを対象にした治験ということで何とか患者さんにうまく参加いただけるように」(谷口医長)リモート治験の枠組みを導入した。

希少疾患では、患者登録が大きなハードルとなることが一般的に知られているが、被験者登録の促進に向けて工夫も凝らした。2019年にがん遺伝子パネル検査が保険適用され、全国に広がりを見せている。検査後には、C-CAT調査結果などに基づき、エキスパートパネルを開き、適切な薬物選択など、治療方針等が議論されている。このC-CAT調査結果を通じ、各医療機関にALK異常が同定された場合の治験として情報提供してもらうことで、「いまは、パネルで患者が同定された場合、当院にほとんど100%連絡があるような状況になっている」と谷口医師。「日本全国を見ても、毎月患者さんが出ないような治験だが、毎月1人か2人、当院に連絡があるような形になっている」と話す。結果として、登録された全6例中4例がリモート治験の症例という。

◎患者さんと「よく相談してベストの方法で治験に参加いただいている」 谷口医長

「患者さんが居住地の近くに治験施設がない場合には、当院でのリモート治験を考慮するということで、どんな患者さんでもリモートに絶対入れようという気持ちでは決してない。その患者さんにとって、安全性も含めてリモートで治験に参加する方がいいのか、来院したほうがいいのかよく相談してベストの方法で治験に参加いただいている」とも強調。「パネル検査実施病院で患者が出たときに、全国に散りばめられている患者さんが効率的に治験に入っていただけるのではないか」と力を込める。

◎通院先の医療機関やがん遺伝子パネル検査を受けた医療機関を“かかりつけ病院”に

リモート治験は、患者が通院している医療機関やがん遺伝子パネル検査を受けた医療機関が“かかりつけ病院”として、愛知県がんセンターとタッグを組み、患者をサポートするのが大きな特徴となっている。パートナー医療機関は、身長・体重、バイタルサインや血液検査、CT検査などの情報を収集。この情報を参考に、治験実施医療機関である愛知県がんセンターの医師がオンライン診療を行い、治験での有効性・安全性の評価や投与継続の判断などを行う形だ。「今回この治験で行われる検査が、ありふれた血液検査やCT検査ということで日常診療でも行われる行為であるというところも我々の枠組みがうまくいっているポイントではないか」と谷口医長。

運用にかかわる、パートナー医療機関の手間も軽減した。実施に際し、施設間で結ぶ業務委託契約も、事前契約は不要とし、候補となる患者が出て初めて結ぶような運用とした。「1か月以内に患者さんが治験に登録できている。事前に契約する必要はなく、患者さんが目の前に出た段階で契約を結ぶことでも、十分対応できる」と話す。オンライン診療に活用するのも、アプリが入ったタブレット端末を患者が持参することで、パートナー医療機関に特別な準備を行う必要をなくしたほか、治験開始時の治験説明・同意に際しては紙媒体で行うようにした。「どんな病院も、他の病院に患者さんを紹介したり、情報提供したりする場面があり、同じようなやり方をしているので、これが一番やはりハードルが少ないと思っている」とこの運用を選択した理由を説明する。

◎パートナー医療機関の医師とタイムリーに意見交換 患者さんの安心感にも一役

「かかりつけ医と患者さんのつながりが非常に重要だ。両者の関係が基本にあるなかで、我々がオンライン診療をやるということでないと関係性がうまくいかないと思っている」と谷口医長。「パートナー医療機関の医師とタイムリーに意見交換もでき、実際その場面に患者さんがいるということで患者さんの安心感にもつながる。オンライン診療自体は、患者さんの自宅ででもできるが、実際のかかりつけの先生と一緒にいることでのメリットということが上回るといまは実感している」と強調する。実際、患者からも、「安心感が得られる」、「補足説明が受けられる」、「自分では伝えにくい状況をかかりつけ医が説明してくれる」などの声が寄せられたという。

◎Web3.0時代 「医師一人ひとりが主役だと自覚し、自主的に動くことが患者さんのためになる」

Web3.0時代となるなかで、「医療機関が場面により、治験実施機関になったり、パートナー医療機関になったりするということになっていく。そういう時代になっていくのではないか。その時に各医療機関の医療者の役割が高まっていくだろう」と谷口医師。「上からの命令を待っているようではやはりダメで、医師一人ひとりが主役だと自覚して、自主的に動くことが患者さんのためになるのではないか」と熱く語った。「患者さんが1人残らず安心してがんゲノム医療を受けられる社会、これが未来の理想的ながんゲノム医療」と述べ、こうした実現に向けて歩みを進める決意もみせた。


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