住友ファーマ パーキンソン病に対するiPS細胞由来製品・ラグネプロセルを承認申請 25年度中の承認目指す
公開日時 2025/08/06 04:50
住友ファーマとRACTHERAは8月5日、パーキンソン病を対象疾患とする非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞・ラグネプロセル(国際一般名、開発コード:CT1-DAP001/DSP-1083)を日本で承認申請したと発表した。申請者は住友ファーマ。同製品は厚労省から先駆け審査制度の指定を受けており、優先審査される。住友ファーマは25年度中の承認取得を目指している。
今回の申請は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が京都大学医学部附属病院と連携して実施した医師主導治験のデータに基づく。
CiRAの25年4月の発表によると、同治験では、50~69歳の7人のパーキンソン病患者を対象に、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を脳内の被殻に両側移植した。主要評価項目は安全性および有害事象の発生で、副次評価項目として運動症状の変化およびドパミン産生を24カ月間にわたり観察した。
その結果、重篤な有害事象は発生せず、MRIによる評価では移植組織の異常増殖は認められなかった。
有効性評価の対象となった6人の患者のうち4人が「国際パーキンソン病・運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)パートIII」のOFFスコアにおいて改善を示した。さらに、18F-DOPA PET(ポジトロン断層法)では、被殻のドパミン神経の活動が増加していた。これらの結果からCiRAは、「iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞が生着し、ドパミンを産生し、腫瘍形成を引き起こさなかったことが示された。これにより、パーキンソン病に対する安全性と臨床的有益性が示唆された」としている。
◎製造はS-RACMO、販売は住友ファーマの予定
パーキンソン病では、中脳黒質のドパミン神経細胞が減少し、それによって動作緩慢、筋強剛、安静時振戦を特徴とする運動症候群を発症する。
ドパミンは神経伝達物質のひとつで、ドパミン神経細胞の中で作られる。ドパミン神経前駆細胞はドパミン神経細胞に分化する手前の細胞。同製品は、非自己iPS細胞から分化誘導させ製造した、非凍結状態のドパミン神経前駆細胞。
同製品は、京都大学iPS細胞研究財団が提供しているiPS細胞ストックを原材料として、京都大学等が保有するiPS細胞からの分化誘導及び製造技術を用いている。製造工程の一部には、カン研究所(現エーザイ神戸研究所)で発見されたエーザイが保有する細胞純化技術を活用している。
なお、同製品の製造は住友化学と住友ファーマによる再生・細胞医薬分野のCDMO事業を行う合弁会社S-RACMO(エスラクモ)が担い、販売は住友ファーマが行う予定。RACTHERA(ラクセラ)も住友化学と住友ファーマの合弁会社で、住友ファーマから再生・細胞医薬分野の知的財産等を承継した。