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国がん びまん型胃がん発症で飲酒に関連するゲノム異常の関与を特定 新たな予防法開発へ

公開日時 2023/03/15 04:51
国立がん研究センターは3月14日、オンライン会見を開き、世界最大の胃がんゲノム解析を通じ、びまん型胃がんの発症に飲酒に関連するゲノム異常が関与することを特定したと発表した。日本人胃がん697例を含む1457例の胃がんゲノム解析を行ったもの。解析の結果、びまん型胃がんからSBS16という変異シグネチャーの誘発を確認する一方で、飲酒量やアルコール分解能の弱いゲノム多型(ADH1B/ALDH2)と有意な相関を示した。胃がん発症と飲酒の関係はこれまでも各種コホート研究を通じて指摘されてきたが、今回のゲノム解析から、この仮説が初めて立証されたことで、新たな予防法の開発への期待感がより高まりそうだ。

◎米国・アジア地域を含む胃がん 世界最大の1457例をゲノム解析

今回のゲノム解析は、国立がん研究センターを中心に、米国・アジア地域を含む国際がんゲノムコンソーシアムにおける国際共同研究として行われた。解析した胃がん症例数は、日本人コホート(国がん研究センター、東京大学、横浜市立大学)697例、米国TCGAコホート442例、中国コホート217例、韓国コホート52例、シンガポールコホート49例の合計1457例。解析方法は全エクソン解析1271例、全ゲノム解析172例、RNAシークエンス解析895例だった。

◎ドライバー遺伝子であるRHOA遺伝子の変異がSBS16を誘発

ゲノム解析を行ったところ、14種類の変異シグネチャーが同定され、このうちSBS16という変異シグネチャーが、日本を含む東アジア人のびまん型胃がんに多く、アルコール分解能が弱いゲノム多型と有意な相関を示すことを明らかにした。さらに、びまん型胃がんの発症のカギとなるドライバー遺伝子であるRHOA遺伝子の変異がSBS16を誘発していることも突き止めた。国立がん研究センターの柴田龍弘がんゲノミクス研究分野長は、「飲酒に関連したゲノム異常がRHOA遺伝子を誘発させ、びまん型胃がんを発症させることをゲノム解析により初めて立証した」と強調。「びまん型胃がんの発症要因はこれまで未解明だった。今回のゲノム解析により、予防に向けた原因解明が強く期待できる」との見解を示した。

◎75個のドライバー遺伝子 16個のバイオマーカーを同定 「治療法開発や予後改善に期待」

このほか、今回のゲノム解析では、新規を含めて75個の胃がんにおけるドライバー遺伝子を同定した。これまでの最高は米国TCGAが同定した25個だったが、これを大きく上回っている。さらに、胃がんに対する免疫治療における新たなバイオマーカーも16個同定した。胃がん患者のうちドライバー遺伝子を一つ以上もつ症例は全体の24.6%あり、うち臨床で使用可能な治療薬のある症例は全体の9.6%に止まる。

柴田分野長は会見で、「びまん型胃がんを含めて、日本人の胃がんにおける治療標的となるドライバー遺伝子や免疫療法の予測因子となるゲノムバイオマーカーの全体像を解明することができた」と指摘。「今後は日本人における胃がん治療法の開発や予後改善に貢献することが期待される」と述べた。なお、研究成果は米国科学雑誌「Nature Genetics」に掲載された。
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