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国がん がん遺伝子パネル検査の登録患者が10万例到達 実際の治療に結びつくのは1割程度

公開日時 2025/05/19 04:49
国立がん研究センターは5月8日、保険診療でのがん遺伝子パネル検査の登録患者数が2025年3月末で10万例に到達したと発表した。治療選択やデータ利活用の面で貢献する一方で、検査結果が実際の治療に結びつく割合は1割程度にとどまるという課題もある。がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の河野隆志センター長はその背景として、病状の進行や病院へのアクセスなどの課題に加え、治験の数が限られている実情を挙げ「様々な治験を日本に呼び込んで、国内での治験の数が増えれば、患者さんに薬を届けていくことにつながる」と述べた。

がん遺伝子パネル検査は19年6月に保険適用を受け、現在は6種類が保険収載され、がんゲノム医療中核拠点病院などの医療機関280施設で実施されている。C-CATでは、検査結果に対して遺伝子変異の意義や臨床試験情報を記載した「C-CAT調査結果」を作成して、医療機関に提供。病院でのエキスパートパネルでの議論などに活用され、治療方針の決定に役立てられている。また、C-CATでは患者の同意を得た上で、遺伝子変異の情報や臨床情報を収集。製薬企業やアカデミアに共有されることで学術研究や医薬品開発にも活用されている。C-CAT登録総数における二次利用の同意割合は99.6%に上るという。河野センター長は「がんゲノム医療の体制は世界的にも珍しいもの。国民皆保険の中で将来を見据えてデータを集積し、治験を紹介するシステムは非常に着目すべき取り組みだ」と意義を強調する。

一方で、がん遺伝子パネル検査によって推奨される治療薬が見つかる割合は約半数で、このうち実際に治療に至る割合は約10%にとどまる。なお、実際の治療に至った場合の内訳では、保険診療が4534例(71.1%)▽企業治験839例(13.2%)▽医師主導治験268例(4.2%)▽先進治療19例(0.3%)▽適用外使用などの患者申出療養473例(7.4%)▽その他210例(3.3%)―としている。

◎登録例 膵臓がんで男女ともに高い傾向 希少がんでも1000例超

登録された10万例をがん種別でみると、膵臓がんが男性8698例/女性6997例とほかのがん種に比べて高い傾向だった。河野センター長は「膵臓がんは発生率で考えると、決して多くはない。ただ、非常に難治性が高く、病状が進行しやすいことからがん遺伝子パネル検査を受ける方が多いと思われ、進行がんのリアルな姿が表れている」と説明した。また、頭頸部(男性2065例/女性1105例)や中枢神経・脳(男性1665例/1493例)、筋肉や脂肪などの軟部組織(男性2110例/女性1792例)といった希少がんでも1000例超のデータが得られているという。

◎遺伝子変異データに加え臨床情報の収集も特徴 承認申請への活用例も


データベースは、がん遺伝子パネル検査で検出した遺伝子変異の情報だけでなく、治療に使われた薬剤や治療効果、有害事象などの臨床情報も収集している点が特徴だ。データは製薬企業16社など70施設124プロジェクトで研究開発に用いられており、承認申請にも活用され、希少がんの適応拡大につながった事例もある。河野センター長は「データの共有により、日本のアンメットニーズが理解され、臨床試験の活性化につながり、患者さんの選択肢が増えることにつながる。エコシステムとして少しずつ動き出している」と期待感を示した。
 
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