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デジタルがもたらす製薬ビジネスの未来

~“患者中心”へのシフトとRWD~

公開日時 2023/10/23 10:00
提供:株式会社NTTデータ


デジタル技術の進展を背景とした患者中心の医療への流れは抗えない。 製薬業界においてもビジネス環境が激変する中、製薬企業のマーケットアクセスや創薬・育薬戦略はさらなる精緻化が求められ、治療のみならず医薬品の社会的価値を高めていく活動が求められている。 国内最大級のIT企業としてNDBなどの医療ビッグデータを扱い、また製薬業界向けのソリューションを数多く提供してきたNTTデータは製薬ビジネスの未来像としてDXによる患者体験(MX:Medical Experience)の変革を提唱。その実現に向けて、リアルワールドデータ利活用推進などの医療DXに取り組んでいく考えだ。
同社の関根志光氏および西田陽介氏と、本誌編集長の沼田佳之氏の対談により、これらの事業の課題や展望などを浮き彫りにする。

(左)沼田 佳之 氏 (Monthlyミクス編集長)
(中)関根 志光 氏 (株式会社NTTデータ 第二インダストリ統括事業本部
         製薬・化学事業部 第1ビジネス統括部 ビジネス担当 部長)
(右)西田 陽介 氏 (株式会社NTTデータ 第二インダストリ統括事業本部
         製薬・化学事業部 第1ビジネス統括部 ビジネス担当 テクニカル・グレード

医薬品開発の迅速化と
新たなサービス創出で貢献
沼田 最初にNTTデータが目指しているMXの概要や製薬企業の将来像についてお話いただきたい。

関根 昨今の医療を取り巻く構造変化やデジタル技術の進化を踏まえて、患者を中心とした医療体験の革新が必要だ。この社会トレンドを当社ではMXと標榜し、製薬業界にも新しい患者体験をともに発信していこうと呼び掛けている。具体的には製薬企業の一丁目一番地である新薬の開発と価値の提供基盤でデジタル化を進め、その上でデータの収集・分析に基づいて企業経営に還元していくというデータドリブンなマネジメントサイクルをつくっていきたい。もう一つは、治療だけでなく予防から予後といった領域への参入だ。MXの変革を通して医薬品開発のスピード向上に加え、製薬企業によるヘルスケア領域での新サービス創出という領域拡大を同時に実現していきたいと考えている。

 
沼田 政府は2030年までの医療DXの推進表をつくり、医療現場のデジタル化を進めている。少子高齢化という人口構造の変化で医療費削減も重要視され、10兆円を占める薬剤費を今後伸ばしていくことは難しく、製薬産業自体もビジネスモデルの転換が大きな課題になっている。NTTデータではMXを実現していくための具体的な取り組みとして、①リアルワールドデータドリブンな製薬バリューチェーン変革、②デジタルネイティブな創薬研究の実現、③予防~予後を包括したヘルスケアサービスの創出──の3つを掲げている。まず①について具体的な取り組みを紹介いただきたい。

関根 昨今の電子カルテの普及に加え、次世代医療基盤法の改正もあり、製薬企業が日常でリアルに使われている診療データにアクセスできる環境が整えられつつある。当社はリアルワールドデータ(RWD)の利活用に関するビジネスに着手しており、例えばアウトカムや費用対効果の分析などを通したアンメットニーズの探索、バリューチェーンの変革などの支援を行っている。

沼田 NTTドコモがインテージホールディングスを完全子会社するなど、ビジネスの世界の一つの潮流としてヘルスケアデータを持つことへの価値が非常に高まっている。NTTデータとしての優位性はどこにあるのか。

関根 当社は電子カルテやレセプトの電子システム、パーソナルヘルスレコード(PHR)領域の健診データなどを20年以上に渡って運用するなど長年、医療や健康に関するデータを扱ってきた実績がある。また、次世代医療基盤法の認定第1号事業者として医療情報の蓄積、加工、活用に向けた提供を行う「千年カルテ」事業を推進しており、電子カルテのアウトカムデータの使い方など一定の知見を有している。

西田 我々が目指す電子カルテのアウトカムデータの使い方の一例を示せば、医療技術評価(HTA)領域への活用期待だ。昨今の製薬業界における関心事項である薬価評価に貢献できると考えている。日本でも指定された品目の費用対効果分析による価格調整が運用されているが、特にH3指定品目(著しく保険償還価格が高いもの)でのRWD活用可能性に注目している。NTTデータが提供する2つのRWD解析サービスを用いて、コストはNDB分析、アウトカムは千年カルテのアウトカムリサーチを用いることにより製薬企業側でも精緻な費用対効果分析が可能になり薬価評価に応用できると考える。HTA領域への活用に向け、産学連携コンソーシアムで科研費事業として進めている事例もある。次世代医療基盤法の改正でもNDB連結解析の方針が示されたので、今後の実現可能性も高いと感じている。限られた医療財源の中で、本来あるべき再評価制度の在り方にも切り込めるであろう。長期収載品の課題に上記のアプローチを用いることで医療財源最適化に寄与することができるのではないかと考える。

関根 優れた新薬もその社会的、経済的な価値をさまざまなステークホルダーに理解・浸透させなければ、これからの時代は必ずしも選ばれる新薬にはならない可能性がある。費用対効果を意識した医薬品の在り方など、次世代医療基盤法の改正をうけてより深く議論できる土台ができていくのではないかと期待している。
DCTへのハードルはまだ高い
まずは国内での実績づくりから
沼田 2つ目の創薬に関しては、ドラッグラグやドラッグロスの問題も含めて治験環境が十分に整っているとは言い難い。NTTデータの目指す治験・創薬環境はどのようなもので、それらをどのようにつくっていくのか。

関根 AIによるシーズ抽出やラボのオートメーション化など創薬イノベーションにはデジタルの力が欠かせない。研究シーズを見つけていく創薬フェーズと、そのシーズをしっかり製品として開発していく治験フェーズの大きく2つあると理解している。前者ではヒューマンベースの匠の作業をデジタルの力で再現性の高い実験環境をつくったり、AIで迅速にデータを処理したりするなどテクノロジーの活用を加速させていきたい。

沼田 データの処理や照合などにおいてどのような新技術があるのか。

関根 例えば、当社でChatGPT以前から保有している大規模言語モデルを活用した文書読解AI「LITRON」と、昨今の生成AI技術を掛け合わせることで、最適な論文を自動で抽出したり、さらに適切なサジェストを行ったりするなど研究者の発想を支援するソリューションを開発中だ。また、治験フェーズでのSDV(データの照合作業)に関しては、製薬企業と医療機関をつなぐ治験プラットフォームとして当社が提供している「PhambieLINQ」に、電子カルテデータと治験データを収集・管理する製薬企業のEDCシステムをつなぐ機能があり、電子カルテにデータを入力するとEDCに転記されるので理論上転記ミスは起きないソリューションを開発している。

沼田 DCT(分散型臨床試験)にもつながる話だと思う。デジタルを使って医療機関に依存しない治験環境が整いつつあるが、国際共同治験もDCTで行われるようになる中、日本は少し乗り遅れている。

関根 「PhambieLINQ」は国内の治験だけでなく、グローバル規格にも準拠できる仕様となっている。今はまだ日本国内の病院内に閉じているが、リモート下でも安心して治験を行えるという環境が整えば、医療機関の理解を得て、今後はグローバルレベルでデータを共有できるようにしていきたい。
 

DTxの基盤構築を牽引
沼田 新たなヘルスケアサービスの創出という3つ目のテーマに入りたい。治療継続という観点からは、患者のモチベーション、あるいは治療後の不安を解消していくような取り組みが非常に重要だ。MXを実現していく上では医療者と患者の関係性の構築、患者の満足度向上なども求められる。

関根 PHRなどのデータを基に病気を予防する、あるいは治療の予後をきちんとトレースしてフォローアップすることに製薬企業が参入し、企業としての価値提供領域の拡大を図っていく動きが活発化していくと考える。また、治療の継続という切り口から見ると、デジタルアプリで服薬を管理したことにより、期間中の生活の質的改善や治療効果が高まったという報告が出始めている。一人一人に個別化された予後サービスへのニーズはより高くなっていくだろう。

沼田 PHRについては事業者団体(PHRサービス事業協会)が2023年7月に立ち上がり、8月末時点で121事業者が加入している。まさにPHRがこれから利活用される時代に突入しようとしている。

関根 PHRに関して当社もHealth Data Bankという企業の健診データの蓄積・管理サービスを2002年から20年以上運用しており、健康に関するデータも長年扱ってきた実績がある。

西田 柏の葉スマートシティのPHRサービスとしてHealth Data Bankが導入されており、国立がん研究センター東病院及びその敷地内に開業した「三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド」における取り組みに当社が協力し、ホテルに宿泊するがん患者さん向けの健康データ管理サービスを提供している。また、PHRのみならず、医療機器としてのデジタルヘルスも見据えており、当社はDTx(デジタル治療)の利活用を推進する「日本デジタルヘルス・アライアンス(略称:JaDHA)」の会員企業として、DTxの基盤構築の議論に参加している。

関根 製薬企業が新たなサービスを展開する上では、様々なプレイヤーとの連携が重要になる。当社はITを用いる可能性のあるほぼ全ての業界業種とのビジネス基盤を有しており、顧客基盤やネットワークも新サービス展開のアセットとして貢献できる可能性もあると考えている。
 

エビデンスだけでは
患者中心医療を実現できない
沼田 今後、NTTデータとしてどういう領域までアプローチしていくのか将来的なお考えをお聞きしたい。

関根 様々なデジタルテクノロジーの進化により、健康や医療の世界においても、日常で意識することなくひとり一人のデータを取得することが可能な時代になっていく。それらデータが蓄積され、適切に管理されたビッグデータを基に行動変容のサジェスチョンや医療やケアの提案を行うなど一人一人にカスタマイズされたサービスがより進んでいくであろう。当社は、そういった世界を築くためのプラットフォームを提供していきたい。

沼田 製薬企業の多くは、治療以外の領域に関わる重要性を感じていながらも、まだ横への展開をパッと想起できていない。そもそも今の組織は薬を売るための組織であり、デジタルで患者のインサイトや行動を把握するとなると少し違う切り口が要る。やはり縦割を廃するなどペイシェントセントリシティを実現していく組織に変えていかなければならない。

西田 MXを推進していくにあたり、製薬企業が何らかの事情で患者への直接的なアクセスが難しいということであれば、例えば当社が製薬企業と患者団体とのハブ機能を担うことを期待されているのかもしれない。

関根 そのような側面では、 NTTデータはアジアで唯一、X(旧Twitter)の全量日本語Post(ツイート)をリアルタイムで受信/蓄積し、これらを共創パートナー各社が分析活用可能なインフラを構築している。実際に企業様からは、自社製品の声を集めてほしいとの依頼もあった。

西田 そういったSNSのつぶやきも定量データではないが、表現系のRWDではないか。例えば原疾患の随伴症状や前駆症状、または副作用をSNSのテキストレベルでキャッチするなども新たなMXの一手になると思う。オノマトペが含まれた患者主訴表現も病態解析での有益なRWDであろう。

沼田 大事な視点だ。PRO(Patient Reported Outcome)は患者が自発的に書き留めたものだから、臨床試験で主要評価項目になることはないが、厳密なエビデンスがないから現場で使えないかというとそんなことはない。米国臨床腫瘍学会ASCOでもPROのデータが注目を集めている。患者が思う医療、つまりナラティブベースドを評価する軸を確立していくことが大事だ。さらに冒頭の話に出た費用対効果分析はバリューベースドにつながる。費用対効果を評価し、より多くの人たちの病気を治して労働生産性を上げるといった社会的な価値の創出が問われている。医療は必ずしもエビデンスだけで構築されているわけではないということだ。

関根 まさにバリューベースドの社会、医療をつくっていかなければならない。ただ現状は、その議論や実行評価のためのデータが散在していることから、いろいろなタイプのデータを患者一人一人のデータとして紐づけていくことで、製薬企業のデジタル化を支援しつつバリューベースドの世界の創出にも貢献していきたい。

沼田 医療は玄人な世界に見られるが、これからは健康を扱う人という意味でプレイヤーが増える。製薬業界を取材していると自前主義脱却、デジタルパートナーとの連携を考え始めている動きも見られる。次のステージに近づいている。楽しみである。NTTデータへの期待は大きい。



NTTデータの考える製薬ビジネスの未来についてのレポートはこちら


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